神界リクリエイト〜神とか魔神とか巨大な組織の陰謀とか、私にはわかりませんがとりあえずこの少年勇者、【討伐ランクSSS】〜(仮)
@サブまる
第1話 謎の少年
あるところに、幼く、かわいげな、人一倍正義感の強い少年がいました。
それはそれは強い少年で、最果ての地に住むドラゴンでさえ「ニャオ」と、猫の真似をして存在を隠し、大国の王ですらその少年個人に対し危機感を持つほどに。
最初は友好的だった諸国の王達も、次第にその『本気を出せば1人で世界を転覆させかねない恐るべき力』に危険意識を強め、その少年を【討伐ランクSSS】に指定したのです。
そして、その少年に対して全世界が戦争を仕掛けたのでした。
「第一魔法部隊!! 一斉掃射! 地面ごと焼き払え!! クリエイト部隊!! サンドゴーレムの準備を!! 第二から第十魔法部隊まで、各自割り当てられた魔法の詠唱にはいれ!! 一気に畳み掛けろ!! 相手はあの【討伐ランクSSS】だ! 仕留めればこの場にいる全員に一生働かずに生きていける報奨金が出るぞ!! 気合を入れろ!」
そこは広い平野。
何やら紙に目を奪われている少年が、1人呟きながらそのど真ん中で立ち尽くしていました。
「『助けてください!! 明日の15時に広い平野で襲われています』んー。手紙の主はどこだろう……僕場所を間違えたかな……」
ツッコミどころ満載のSOS。
しかし、少年は人一倍正義感が強く、助けを求められるとそれを無下にはできません。
そして、どこから現れたのか、その少年を取り囲む何やら物々しい雰囲気の人たち。全員魔法使いです。
そう、肉弾戦では勝てないと踏んだ彼らは、魔法で少年を仕留めようと目論んでいたのです。手紙もこの方々の作戦のうち。
彼の特性を見抜いてのことなのか、はたまた彼らが馬鹿なだけなのか。
どちらにせよもっと良い文面があったはずですよね……。
間も無くして、魔法使いから放たれた恐ろしいまでの熱量を秘めた炎がその少年へと襲いかかりました。火が消える前にサンドゴーレムが二重三重とその少年を囲って逃走経路を完全に塞ぎ、それから第二波の魔法が次から次へと撃ち込まれていきます。
さて、砂塵もおさまった頃、軍の中央にいた少年はといえば……
「魔法……? は、もしかして手紙の主はこれを予想して……? だとしたら早く助けなけないと!」
盛大に勘違いしていました。
魔力を使い切り、仕留めたと思っていた少年が無傷でピンピンしているところを見た彼らは、もう心が折れ、あるものは
それはそうです。一発で巨大な湖を蒸発させると言う火の魔法、空に放てば1ヶ月は雪が降り続くと言う氷の魔法、樹齢千年の大木さえ根こそぎなぎ倒す風の魔法、その水圧で古代竜さえ力で押し返す水の魔法………etc。
それらを全くの無傷で耐えられたのですから、世界トップクラスの彼らにとっては自分の存在意義を見失ったに等しいでしょう。
その少年の動向を伺います。どうやら突然現れたゴーレムに困惑しているようで、所在なくその手をわななかせています。しばらく後、「ごめんなさい」と一言言い添えると両手をパンと打ち鳴らしました。
少年を中心として大気に波紋が広がっていきます。
次の瞬間、ゴーレムが大量の砂とともに地面に崩れました。
液状化現象をご存知でしょうか? 地震の時に起きちゃう厄介なあれですね。それを『音の波』で起こしてしまったのです。
これには、クリエイト部隊と呼ばれていた方々もびっくり。その
全員泡を拭いて倒れてしまいました。
次元を超えて神界へ。
「はぁ……聞いてよ!! また雑用任されたのよ!? あっちを整理したら次はこっち。私たち下っ端女神は毎回上位女神の雑用をさせられてさ……本当やになっちゃうわ」
「そう言わないの! 大神様に怒られるよ。私も勇者召喚して一緒に世界を救ったりしたいものだけど」
通路で大量の資料を抱え愚痴をこぼす下っ端女神のサテラ。
ノースリーブの衣装に身を包み、背中辺りまで伸びた桃色の髪を編み込んだ、ちょっとやんちゃそうな風貌の女神です。
それをたしなめているのは、同じく下っ端女神のティアナ。
同じような服装に茶髪のボブ、色気を纏う温和な風貌で、サテラとは同期です。
しばらくして、ティアナと別れたサテラは上位女神の部屋に到着しました。
恐る恐る内開きのドアをノックします。
「下位女神サテラです。失礼します。指示通り資料を整理して持ってまいりました」
「入れ」
艶やかかつ厳かな声を聞き届け、よどみない所作で中に入り、指示された場所に書類の束をおきます。
「お前もそろそろ下っ端としては充分働いたろう?」
唐突に、上位女神に話を持ちかけられ焦燥を隠しきれないサテラ。
「え、は、はい!」
「お前にこの仕事をやろう、心してやるんだぞ」
口数は少なくとも、その言葉に期待の念が含まれていることを悟ったサテラは、喜びに胸を膨らませて差し出された紙を受け取りました。
書かれている文字を一瞥したサテラは、嬉しさと驚きのあまり目をカッと見開きます。
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!!」
返事はありませんでしたが、その横顔からはほのかに期待と信頼を感じとったサテラは深々とお辞儀をした後、その部屋を後にして自室へと駆け出しました。
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