5. 赤錆色の天使
その一.女、キリリとかんざし光らせた
月と日を諸手に掲げひとり座しこころの巫女をいま曳いて産む
鏡には目の切れ上がる女居りつつしみもなく後れ毛を牽く
弓手には赤金いろの錆を巻き利き手手繰って白銅を挿す
今日飾るかんざし並べて手で手繰るこれは縁切りあれは恋文
こころ惹く象嵌細工のかんざしをレーダーにして風を聴こうよ
その二.Red Angel
南国の熱気集めた花落ちる翼の錆びた赤い天使が
ガラス踏む足裏赤くて痛くとも君には翼があるのだったね
どの花を?差し伸べる手を傷つけて紅い天使は私を振った
血まなこで地を這い回り血の指で描くは業だよ羽のねじれを
笑うかい地に張り付いて天見上げ美し温し腕を求めて
赤ひとつ豪奢、はためき誇る紅い旗羽音が耳を舐めていく
赤い花そんな季節に死んだ友十七のままパライソにいる
まだ今もあの赤い花探すかと問われて窮す薔薇窓の下
色あせたきもの肩揚げとれぬ頃にび
柘榴の木いちょう紅葉もありました小さき家に一人子遊んで
思い出よなぜ連れてくるこどもの日赤きおもひで血の色の帯
その三.ロマンチスト
ああ痒いおまえはロマンチストだね持ち歌で泣くアーティストだよ
赤糸の真横を走り羊腸の道震わせろロマンをこめて
金の石左手で探って道戻れロマンチストの幕引きの日は
指さして嗤ってみてた白い目の十字路に起てエゴイストども
鈍色の十字架ひとつ吊り下げてニケの翼を杭打たんとす
人の世の当たり前にゃあ泣けねえな鼻高々に天狗風吹く
「君の名は」たずねる恥を切って捨てロマンチストは地を這っていく
その四.秋の字に似ている
もどり来る臙脂のみちを長い手でくずれる肉を添えて支えて
秋立てば皮膚と空気が切り分かれおのれが形取り戻すひと
白檀を陶器の皿にたらたらり歌をひねれば紫煙たなびく
闇の手がうっとり撫でるだめだもう肩甲骨の間が裂ける
生きにくい部屋の壁紙白すぎていつかあれみな紅殻色に
神酒酌んで明けて暮れてを繰り返し赤目で見ればこの地で足りる
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