第8話 『クソみたいな客』
「さて、どうしようか」
俺はとりあえず普段通りの用意をしながら考えていた。厨房の清掃、コップ磨き、そして料理の下ごしらえ。
「っと。いけねぇっ」
危うく普通に下ごしらえをするところだった。俺は出しかけていた調味料類を元の棚に戻して棚を閉じた。
「よし。とりあえず、これで用意はいいか。今日は料理は出せないって看板も出したし。てか、あのジジイなんの用意もせずに出ていくってマジかよ…」
時計を見ると9時。なんとか開店に間に合ったようだった。
「ふぅ。じゃあ開けに行くか」
カランカランと扉についたベルの小気味よい音が鳴り響いた。途端に、店の前で待っていたのだろうお客が流れ込んでくる。と言っても、いつもの客しか来ないんだが。なんか手紙通りでムカつくとかは別に思っていない。思っていない。
「お、今日は店長がいないのか。てことはいつものアレはお預けかな?料理はユナちゃんがするの?」
いきなり常連のおじさんが絡んできた。とても柄が悪そうな顔で、最初のうちはちょっと苦手だったのだが、別にそうでもないと分かってからは面倒くさいおじさんとして扱っている。
「料理は今日は出せないっす。俺の料理じゃ店は出せませんから」
「飲み物は仕方ないけど料理もないのか〜。なんか作ってよユナちゃ〜ん。おっちゃんいくらでも払うからさぁ?」
「20万ラフィアでサンドイッチ作ってあげましょうか?普通に買えば100個は買えるでしょうね。ほらヴァっさん、邪魔なんでとっ
とと席座って下さい」
「ふえぇ……ユナちゃんがつめたいよぉ…」
さらっと無視して注文を取りに行く。別に悪い人じゃないけど、なーんか苦手なんだよなぁ……
「ユナちゃーん。いつもの紅茶!3つね!」
「あいよ〜。ちょい待ちです」
うん。変なこと考えてる暇はないな。ゴリ爺がいないんだから、注文処理に勤しもう。
「アイスコーヒー2つ!パンケーキも!」
「料理はないんですよ〜。すみません」
「ブルーブラッド水割り!」
「今日紅茶とコーヒーだけで……いや何そのメニュー知らないんだが」
「ユナくん。グリフォンの翼3つ頼む」
「そんなヤバそうなメニューないです」
「アップルパイをアップル抜きで!」
「隣のパン屋で生地でも買ってろ」
「ユナたん。愛情たっぷりくだたい♪」
「黙れクソが変態ババア」
…………はぁぁぁぁぁ。なんだこの客どもは……
俺はしびれを切らし、叫んだ。
「今日は!料理はない!コーヒーと紅茶だけしかない!それ以外を頼む奴らは帰れクソ野郎どもがよ!!」
……その後もふざける客はあとを絶たなかった。なんか人間不信になりそう。
今日、何度叫んだか俺はもう覚えていない。
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