一方通行すぎる恋
藤堂棗
第1話 僕じゃない
「ねぇ、ごめん。明日から一緒に行けない」
「そっか......」
この日を境に、君と僕の朝の時間は君と彼の朝の時間に変わった。
毎朝インターホンを鳴らすことも、忘れ物の確認をすることも、低血圧の心配をすることも、もう僕の役目じゃない。
少し家を出る時間を間違えれば、君と彼の後ろ姿に出くわす。
横を通りすぎる僕に、君は笑って無邪気におはようと声をかける。
朝陽が染みるのか、君の笑顔が染みるのか、おはようと返す僕はどんな表情をしているのだろう。
君がとなりにいなくなって、君の大切さに気付いた。
そう、君と僕はただの幼なじみ。
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