第3話 道央ドラゴンズバトル
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『苫小牧FHQより各部隊へ。ドラゴンの数は二六○。繰り返す。ドラゴンの数は二六○。魔力反応からこれまで出現したドラゴンと同タイプと思われる。苫小牧・千歳空域到達まであと四五○。高度一五○○を維持している。迎撃部隊はこれを撃滅せよ』
「ウェストウィザード了解。――ウェストウィザードより西特各隊へ。
『了解!』
『了解しました!』
「FHQから迎撃ラインの担当割が送られました。さぁ、行きますよ!」
『はっ!!』
今川達『西特大』の隊員達やドラゴン迎撃の任に耐えうるフェアル部隊約七五○人と戦闘機三個飛行中隊は、FHQが指定した防衛ラインへ向かう。
彼等は仙台のドラゴン大群奇襲と比べてあまり気負っていなかった。あの時とは数が段違いということもあるが、後背には多くの友軍がいるからである。
ただ気迫はあの時より強かった。この一戦で世界の荒廃が決まるからである。
『FHQより迎撃各隊へ。ドラゴンは高度一五○○を維持したままやや分散。速度七五○へ増速。まもなく空対空ミサイルの射程圏内』
戦闘機の機動力はドラゴンのそれと比して分が悪い。ここでの彼等の役目はアウトレンジからどれだけ数を減らせるかと、自身の速力優位をもって一撃離脱戦法であった。
『FHQより戦闘機各隊。長射程空対空ミサイル射程圏内』
FHQの通信を合図にFー3・Fー35戦闘機三個中隊から長射程の空対空ミサイルが空へ解き放たれる。
『FHQより各隊。ミサイル攻撃によりドラゴンの数は二二五まで減少。ドラゴンさらに増速。エンゲージまで約一五○』
「ウェストウィザードより西特各隊。高度二三○○まで上昇。酸素供給術式を強化し、小隊統制法撃を用意。射程延伸型風属性貫通切断系術式。距離約九○○○で発射」
『了解!』
『了解です!』
『サー、イエッサー!』
西特大の面々だけでなく、迎撃にあがった他のフェアル部隊も高度を上げ統制法撃の準備体制に入る。
彼我の距離は一五〇〇〇、一二〇〇〇とあっという間に縮まっていく。
そして、九〇〇〇。
「小隊統制法撃、…………撃て!!」
「第一中隊、第三中隊突撃! 我々本部中隊と第二中隊は第一、第三の援護!」
『第一了解!! さぁ、鉄火場に突っ込むぞ!!』
『第三了解しました!! 総員突撃体制!!』
対処方法が確立したドラゴン相手に、弾薬補給の心配をせずに戦える空を翔ける猛者達は圧巻の活躍をみせた。
ドラゴンはまだ二〇〇以上残っていたにも関わらず第一撃で数十を撃滅し、ドッグファイトに持ち込んでからは圧倒的な力を見せつける。
第一波、二〇分で殲滅。北海道の戦線へ優秀な能力者達が多数投入されていた証拠ともいえる記録だった。
しかし、数で勝る神聖帝国軍が一波だけで終わるわけがなかった。
『苫小牧FHQより迎撃部隊へ!! ドラゴンの第二波をキャッチ!! 北部及び北東部から接近!! 数は北部から二〇〇、北東部から一〇〇!! 速度と高度は七〇〇の二三〇〇。距離一五五〇〇!!』
「ウェストウィザードより苫小牧FHQ。第二波了解。想定の範囲内です。第二波で一部の部隊が補給を要します。地上の方で準備をお願いしたく」
『了解しました。補給ポイントをマップにマークします』
「マップを確認しました。火吐きトカゲを落としてきます」
『頼みます。グッドラック、ウェストウィザード』
「ありがとうございます。通信終わり」
ドラゴン第二波、その数は三〇〇。
これも迎撃部隊は難なく撃破していく。海軍艦艇からのミサイル攻撃支援だけでなく、中部方面隊から多数の長射程地対空ミサイルが飛来したからだ。これは今川達にとって大変ありがたかった。
ただし計約六〇〇のドラゴンを撃墜しているだけあって、各部隊の弾薬や魔力は相応に消耗していた。第二波の撃滅がほぼ確定した時点で弾薬消費量と魔力消耗が大きい隊員を優先して地上の補給ポイントに向かわせたくらいである。比較的余裕のある今川達も、第二波の撃滅確認後には地上の補給ポイントへ着陸していた。
午後四時半過ぎ。
今川達の西特大のおおよそが補給を終えた頃には地上の戦況も変化していた。千歳市周辺は制圧し、次の目標は由仁・長沼・北広島のラインだった。
日本軍としては、出来ればこのまま本命の作戦開始までに少しでも北へ北へ制圧地域を伸ばし多くの神聖帝国軍を引き付けたかった。
その願いは半分叶うが、もう半分は願いとは別で出来れば出てきてほしくない存在だった。
『苫小牧FHQより各部隊へ緊急通報!!
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