第8章 CT大群決戦編
第1話 決戦はすぐそこに
・・1・・
『立川HQより埼玉南西部展開各戦線へ!! CTの行動活発化を確認!! 埼玉方面の数はやや少ないが数は約一一〇〇〇〇!! 到達予想時刻は敵先遣が五時間半後の
『続けて立川HQより、東京・神奈川方面各部隊へ! そちらの方面は埼玉南西部方面より厳しくなる! 東京二三区部より埼玉南東部及び千葉西部方面からCTが接近中! 数は約四〇〇〇〇〇! 足立区・浦安方面からの到達予想時刻は一一時間後の
『白子HQより九十九里及び千葉方面に進出の各部隊へ。敵策源地銚子方面及び成田方面よりCTが侵攻中。数は約三二〇〇〇〇。銚子方面からの到達予想時刻、
『第一機動艦隊司令部より各艦艇へ。敵CTによる大攻勢が始まる。
『空軍横田HQより各隊へ。敵CTの大攻勢が確定。既に各方面に向けて進軍を開始した。よって本時刻を持って我々空軍は全戦力を投入して陸上部隊の支援ならびに上空からの制圧爆撃を開始する。横田基地の各部隊は即時行動を開始せよ。近傍にCTが迫っているが陸上部隊が守ってくれる。心置き無くバケモノ共にプレゼントをばらまけ。静岡・松本・浜松の友軍部隊は行動を開始している。小松・岐阜各務原各基地からの支援を要請中。西部航空方面軍にも支援を要請中だ。ここで東京方面が再び落ちれば我々日本軍の努力は水の泡と化す。全部隊の健闘を祈る』
ようやく東京奪還作戦の終わりが見えた頃に入った急報は展開していた部隊に衝撃を与えた。東京方面・九十九里方面に展開していた陸上兵力は戦線離脱者を除いて一〇四〇〇〇。
対して、迫るCTは約八三〇〇〇〇。彼我の戦力差は一対八。数字だけ見れば圧倒的な戦力差である。
数差だけではない。東京方面に展開している部隊と九十九里方面に展開している部隊は共に連日の戦闘が落ち着いたばかり。消耗した砲弾薬の補給もせねばならなかったし、休息も取りたいところであった。魔法兵はその最たる例で、次の戦いに備えて消費した魔力を回復するつもりでいたのだ。
ところがCTの大攻勢によって計画は全て狂う。北関東北部方面を除いてレーダーは回復し目を取り戻したものの、それは敵戦力が可視化されただけで、解決にはならない。
それでも、東京を取り戻し次は千葉を、埼玉を、茨城を取り戻すと意気込んでいた将兵達は決して諦めなかった。
備えは万全で無かろうと、まだ消耗から回復していなかろうと立ち上がる。
各戦線は緊急で迎撃態勢を整えていた。
・・Φ・・
12月6日
午前3時半過ぎ
東京都新小岩駅周辺
千葉西部方面迎撃新小岩急造防衛ブロック
九十九里方面や埼玉南西部方面では既に交戦が始まり、東京方面でも空軍による爆撃や長射程の重砲による砲撃が繰り返し行われている中で、孝弘達は新小岩方面に急造された防衛ブロックにいた。
「魔力回復、とりあえずは完了か……」
眠らずにはいたが休息していた孝弘が目をパチリと開けると、賢者の瞳で残存魔力を確認する。魔力回復薬を飲用していたが、魔力は残り八六パーセントと完全回復には遠かった。
「三人とも、起きたか」
「ええ。起きたわ。残存魔力七九パーセント。昼まで戦っていたのだから仕方ないわね」
「俺もだ。残存魔力八二パーセント。ま、こんなもんだろ」
「私の残存魔力は七八パーセント。もうちょっと回復したかったけど、これだけ戻ればまだいい方、かな」
四人で固まっていた彼等は互いに残存魔力を確認していく。周辺では陸軍部隊や海兵隊が急造防衛ブロックを構築し敵の襲来に備えていたが、魔法兵に関しては後方部隊を除いて戦闘二時間前までの休息が厳命されていた。魔法兵科にとって魔力とは砲弾薬と同じである。それらが不足したままでは十分に戦えないことから歴戦の第一特務連隊や西方特殊作戦大隊であっても例外無しとして休まねば厳罰と命じられていたのである。無論緊急事態はその限りでは無いが、幸い周りは嵐の前の静けさが如く平穏だった。
「とりあえず全員が八割か八割近くまで魔力が回復して良かった。武器も揃っているし、継戦中の魔力回復薬も優先で貰えてる。味方も多いし、あっち《アルストルム》のいくつかの戦いよりはマシと思おう」
「ええ」
「ああ」
「うん、そうだね」
「よっす。四人とも起きたみたいっすね」
四人が話していると、休憩所にしていた建物に第一特務第三大隊の大隊長、長浜が入ってきた。
「長浜少佐。第三大隊の人達も起きて最終準備ですか」
「うん、そんなとこ。あたしとしては君達四人がいてくれて心強いからあんま心配はしてないけどね」
「ここ新小岩にせよ、葛西にせよ、北千住にせよ、抜かれたら縦深が全く足りてませんからね。第一と西特大のあの配置も納得です」
「米原少佐に同意っすね。本当は江戸川西岸まで欲しかったけど、しゃあないしゃあない」
長浜が苦笑いすると、孝弘は首を竦めて同じ意見だと暗に示していた。
彼等が言う配置とは、CTの大群襲来に備えた配置のことだ。荒川東岸に限った部隊配置は以下のようになっている。
【魔法軍特殊部隊配置部分図(東京二三区東部)】
◾︎綾瀬・小菅周辺防衛ブロック
・第一特務連隊
本部中隊、第一大隊、第二大隊二個中隊
◾︎新小岩周辺防衛ブロック
・第一特務連隊
第三大隊、第二大隊二個中隊、孝弘達特務班
◾︎葛西・船堀周辺防衛ブロック
・西方特殊作戦大隊全部隊
※各防衛ブロックには魔法軍が二個大隊ずつ配備。また陸軍や海兵隊も合計すると各ブロックには一個連隊がそれぞれ配備されている。さらに設定区域に比して破格の、各防衛ブロックに一個戦車大隊がそれぞれ配備されている。
※北区〜葛西臨海公園防衛ラインに陸軍・海兵隊等は二個師団・一個旅団が展開。二三区東部の二次防衛ラインは上野周辺〜隅田川ライン。絶対防衛ラインは山手線西部沿線ライン。
「だとしても後方地はあって無いようなものですね……。抜かれれば奪ったばかりの東京都心部が再びCTの手に……。それだけは避けねばなりません」
「ほんとね。だからこそあたし達突出部に設定した防衛ブロックが肝心になるってわけ。ま、死守命令みたいなもんっすね」
「死守してみせます。そのためにあらゆる武器の優先手配もしてもらいましたし」
「そこはあたし達特殊部隊の強みっすねえ。その分きついっすけど、終わってから皆の笑顔を見るためっす。――ああ、そうだ。本題っす。七条大佐から呼集かかったんで行きましょう。最終確認を終えたら配置につくっすよー」
「はっ。了解しました」
孝弘達は長浜と共に防衛ブロック指揮所に向かう。
彼等が到着後、七条大佐による作戦最終説明が始まった。それらは速やかに終わり、最後に訓示が行われる。
『本作戦はぶっちゃけると、急場で組まれたようなものだ。次の作戦計画が元々あったから良かったけど、計画は狂わされている。それでも、我々はやらねばならない。何故ならば、取り戻したばかりの東京都心部が奪われるなど、あってはならないからだ。我々は東京を死守せねばならない。そして、バケモノ共を滅ぼさなければならない。既に空軍がありったけの対地爆弾やミサイルで少しでも数を減らしてくれている。さらに、上は大威力の対地爆弾も投入してくれるらしい。空からの支援は頼もしいわねだ。故に、私達は彼等の努力に報いなければならない』
ホログラム画面から見える璃佳は一度言い切ると息継ぎをし、再び口を開く。
『私の基本方針からすると大変遺憾だけれども、今回は死守命令を出す。突出部の防衛ブロックは戦況によっては最悪捨てても構わない。だが、再び山手線環内にCTが跳梁跋扈することは許されない。まして、山手線西部沿線ラインから先に進まれるなどあってはならない。一匹足りとも、バケモノを通すな。全てぶっ殺せ。しかし、死に急ぐな。自決は許さない。必ず生き残って、全員揃うこと! 第一特務連隊連隊訓唱和、始め!』
『戦友と共に戦い、戦友と共に生き抜き、戦友と共に勝利の声を上げよ!! 決して命を捨てず、なれども決して戦友を見捨てるな!!』
『よしっ!! 連隊総員、最終準備を開始せよ!!』
『はっ!!!!』
孝弘達も大きく声を上げ答礼する。
ホログラムに移る璃佳の姿が消えると、その場にいた者達は持ち場へ移動を始めた。
「米原少佐、高崎少佐、川島少佐、関少佐。任せたっすよ」
「お任せ下さい。長浜少佐も、健闘を祈ります」
「もっちろん!」
孝弘の言葉に長浜は笑顔で敬礼すると、孝弘達も答礼する。
決戦はもう間もなくに迫っている。
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