第16話 認識阻害の先にあるのは
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攻撃の小隊は敵の小隊統制法撃だった。ただし威力は高く一般的な能力者小隊の三倍から四倍程度、第一特務連隊の八割弱程度の威力があった。普通の防御魔法なら一撃で破壊される威力。
だが防御魔法を発動したのは大輝だ。四人の中で最も防御魔法に長け、魔法障壁密度は璃佳をも上回る。
その彼が展開した上級防御魔法『守護者の大盾』は確かに役目を果たしていた。
『法撃被命中。防御魔法障壁損傷率三五パーセント』
「『守護者の大盾』が一撃で三割以上やられるたぁ、展開しておいて正解だったな……」
「本当にね。いい判断してくれたよ、川島少佐。よくやってくれた」
「うす。ありがとうございます」
「大輝が防御魔法を発動していなかったら、各々の魔法障壁と緊急回避行動でなんとかするしか無かった。助かった」
「どういたしましてっ、と。法撃は爆発系だ。そろそろ煙が晴れると思うぜ」
大輝が言った通り、煙は晴れた。
孝弘達の先にいた敵は小隊統制法撃なら少なくとも魔法障壁は破壊出来ると思っていたのだろう。ところが実際には魔法障壁はおろか防御魔法すら破壊出来ていない。驚愕の表情をしていた。
それを見逃す彼等では無い。
煙が晴れた時点で、水帆は詠唱を半分終えていた。
「――眼前で爆ぜよ。全てを燃やし、塵と化せ。『
水帆が呪文を唱え終えると、魔法陣は水帆の頭上や前ではなく、敵の目の前に出現する。
魔法陣の出現と起動はほぼ同時だった。こうなると防ぎようは無い。
敵は防御魔法の発動や魔法障壁の多重展開をさせる暇もなく、魔法障壁一枚のみの状態でまともに浴びることとなった。
水帆が放った火属性魔法は一個小隊の半数を焼き殺し、残り半数も無事ではなかった。
「風のギロチンは罪人に裁定を下す、『
間髪入れず水帆は短縮詠唱で風魔法を発動。生き残った敵も風の断頭台で刑を執行された。
まずは一個小隊を撃滅。孝弘達は甲府城跡に突入。広場に入る。
この時も城跡の周辺からCTが現れていたが、大輝のゴーレムや選抜された隊員達だけでなく上空支援を行う第二大隊の隊員達が寄せ付けなくしていた。さらに、前進を開始した部隊も攻撃を逐次行っているため、城跡付近に近付くCTは少しずつ減っていた。
城跡に入ると、すぐに敵が現れる。今度も一個小隊。捕虜にした人物と同じ色の軍服を着ていた。
「させるかっての」
「法撃合わせます」
次は璃佳と熊川の法撃。
一個小隊は統制法撃を諦め各位法撃に移ろうとしていたが、
「遅い」
「全くです」
「闇よ、果てまで追いなさい。『
「水は切り裂き、命を刈る。『
璃佳の闇属性魔法は初級ながらも現れたのは二〇。魔法障壁を飲み込んだ上で命中した部位すらも飲み込み爆ぜる。璃佳の法撃を運良く逃れても待ち受けるのは熊川の水属性魔法。鋭利な刃物と化したソレは、魔法を発動させる前に敵を切り裂き敵第二波も一人残らず地面から二度と起き上がらなかった。
『FSRHQ(第一特務連隊司令部)より、セブンス《七条大佐》へ。そこから先はマジックジャミングの圏内です。甲府にあるタイプは東京より弱化したものと思われますが、範囲を狭くしたことでかなり強力になっています。ここから先、賢者の瞳の機能はかなり制限されます。通信も一時遮断されるかと。捕虜によれば城跡上部付近は土系統だと思いますが魔法で地形改造さており、簡易的ながら地下化されているとのこと。お気をつけて』
「了解。報告ありがと」
連絡を送ってきたのは戦術分析官の佐渡少佐だ。マジックジャミングによる通信阻害の前に、彼女は突入部隊の各員に捕虜から得たデータを反映させる。僅かな情報だが、簡易地下化されている場所も表示されていた。
璃佳は一言礼を済ませると、
「恐らく土属性で補強した簡易地下化だろうね。甲府が占領されてから日が浅いから、そう大したことはないはず。捕虜が言ってた人数的にもね」
「二個小隊を潰してから城跡からの反撃が止まりましたからね。周辺は相変わらずですが」
孝弘が言うと、
「周辺もそのうち攻勢は弱まるでしょ。友軍は順調に向かってきてる。本拠を叩いてCTが集中してるのもあるんだろうね。さて、こっからは二手に分けよう。川崎少佐、熊川少佐と組んで外は任せたよ」
「了解。大佐はどうされるので?」
「私は茜、閉所でも戦いやすい米原少佐と探知に優れる関少佐を連れて内部に入る。簡易地下化された施設だと五名以上は多いからね。川島少佐は防御役を。ゴーレムもいるし。高崎少佐は魔法固定砲台役として遊撃してもらう。二人ともオーケー?」
『了解』
「んじゃ、米原少佐、関少佐付いてきて」
「はっ」
「はい!」
孝弘と知花は、それぞれ水帆と大輝と短く言葉を交わし合ってから二手に分かれた。
上部に近付くにつれてマジックジャミングが酷くなり、通信は出来なくなった。探知機能もほぼ使い物にならなくなったといってもいい状態になる。
「魔力探知、七条大佐と米原くんに共有します」
「お、さんきゅー。これなら普段と変わらないくらい使えるね」
「ありがとう」
「いえ。ここからは相当ジャミングが酷くなります。私の個人魔力探知もいつ使い物にならなくなるか分からないので、その時は皆さんの勘に任せます」
孝弘と璃佳は頷き、茜が「勘と臭いなら任せい」と頼もしい表情で言うと、周囲を警戒しながら四人は見晴らしの良い城跡上部の入口に辿り着く。目の前にあるのは平時ならば観光客がいたであろう城跡の空間。しかし四人共違和感を抱いた。
「認識阻害じゃな」
「だね。明らかにおかしい」
「かなり強力ですね。これだと監視衛星に正しく映らないわけです。私達の視覚も誤魔化してますから」
「となると認識阻害魔法の使い手が手練か、装置が高等かのいづれかですね。でも関、解除は簡単だろ?」
「うん。これくらいなら。――惑わし姿を真の姿に戻したまえ。我は真実を見抜く者。幻惑よ、元に戻れ」
知花が呪文を唱えると、本当の姿が現れる。
四人の前に現れたのは元々あった広場ではなく、小山のように盛土がされ中央部には地下壕の出入口であろう穴であった。
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