空は青く水は透ける

一条 遼

第1話

「やっぱり間違いないね」


「ね、ほんと 間違いようがないもん」


「やっぱこれしかないね…」


「うみゃー……うみゃーですわぁ……」


ジュージュー ぱちぱちと

音を奏でる鉄板を挟み2人の男が悦に浸っていた

熱々と擬音が聞こえてきそうなほどに

火の入ったソレを2人は同時に口へ運ぶ


3日ぶりに口にした食事のように

舌で転がし噛み締め幸せそうな顔を…


「あっっっだだ…あぢぃッ」


する前に顔が歪んだ


口の中で張り付き ハフハフしても

モゴモゴしても取れなくなった


「あふっ、あふふっあ、あっこっつぢだっ!?」


もはや言葉にすらならない だって熱いもの。


「あははははっ、ばかじゃん、わはははは!」

熱さで苦しむ俺を見て

山野井 悟(やまのい さとる)は豪快に笑う


「いや、まび…これあっづぉぉあ、

み、みふっ、みふをとっふ!」


口の中がえらいこっちゃの灼熱地獄

水を飲まなきゃ死ぬ という勢いで

水を欲しがる 俺 山佐日 航真(やまさひ こうま)


「わはははは!うほほほほほほほ!

アヒャヒャヒャビャ!あっはっはっ!

ふー、ふー、ふふっ…ふぅ、、

いや熱いの分かってたじゃん

目に見えて熱いってわかるじゃん、

冷まさないとかもうアホ丸出しで…ぷくくっ……」


「いやほんと口の中に熱いもん引っ付くって

えらいこっちゃだから、本当に死を覚悟私。」


「一人称変わるほど焦るくらいなら

今度からちゃーんと冷ましましょうねぇー」


「はーい!僕がんばう!」


「はいキモイでーす喋んないでくださーい」


「こいつァひでぇ…」


「はぁ……」


「お、どうした悟ため息なんていて

考え事はお前には似合わないぞ?」


「心配してるようであんましてないの

ムカつくよね」


「あ、バレた?ま、実際似合わないし

いいってことよ!」


「お前が宣言してどうすんアホか?」


「まあまあまあ、で?何をそんなに落ち込むかね

ほれ、悟の好きなもんじゃ焼きだぞ〜

あーーん」


「そういうのも含めてさぁ…

彼女と飯食ってそういう事してぇなぁ……」


「あー、分からんでもない

全く何が悲しくて男2人でもんじゃを

つついてんだろうなぁ…」


「しかもあれだな、俺ら高校生なのに

周り酒飲みばっかだしな、なんか場違い感すごい」


「ね、それは思う、

今休日の昼間なんだけどなぁ…」


「ま、いいじゃないか せっかく来たんだ

楽しんで帰るとしようじゃないか!」


「で、これどうすんの?航真、お前全部飲む?」


悟が指を指した先にあったのは

小さい金魚を飼えるのでは?と言うくらいの

大きさを備えたグラスに並々と注がれたコーラ

ストローは2つ、そしてバニラのアイスが2つ

この店名物の

『最後まで水分たっぷり!

ドキドキメガコーラフロート』という

あからさまにカップルが頼むだろう物を

この男2人は珍しさとノリで頼んでいた


「ノリで頼んだとはいえ…

何が悲しくて男とこれを飲まにゃいかんのよ…」


「まーまー、そういうなって悟ちゃん

俺がガブッと飲んでやるよ(イケヴォ)」


「ヤベぇきめぇ…ちょっとトイレ行こうかな……」


「お、いてらー、汚すなよ?」


「いやごめん無理、汚しそう」


「oh no!!なんてこったい!」


「まぁ飲むけどもな?

あ、航真他になんか頼む?もんじゃ終わったけど」


「あー、次かーさっき焼きそば頼んでおいたし

次…はお好み焼きかな!」


「確かに、お好み焼きはありだな

じゃ、スタミナ天頼んどいてー」


「へい、任せとけぇ!

カートンプッシュ!」


と、謎の言葉を発し航真は

店員お呼びますボタンをプッシュ

「はーい!ただいま参ります!」と声が聞こえてすぐ

「お待たせです、ご注文は?」と尋ねてくる


「えーと、スタミナ天を1つお願いします」


「スタミナ天ですね〜ありがとうございます!

ヘイ!スタミナ天いっちょういただきました!」


と元気よく注文を中にいる人に伝え

空いたお皿を下げ席を去っていった


「しかしあれだな悟よ彼女が〜とかもいいけども

進路どうすんの?」


「うわぁ…痛い痛い痛いとこをつつくなお前

まぁたしかに…いやマジじゃん!

優雅にもんじゃ続いてる場合じゃねぇな」


「ま、今は焼きそばだけどね

味どうする?塩?ソース?マヨネーズ?

そのまま?それとも全部のせ?」


「塩とソース半々にしようか

味変できると口の中も楽しいし」


「おっとおっと悟くんせっかくボケたのし

全て無視ときたか、いいねぇ嫌いじゃないよ」


「航真きもーい」


「なにゆえっ?!ま、冗談は置いといて半々ね

任せときんしゃい!」


「もうだんだんと航真の

キャラが分からなくなってきたな」


「まぁね、こんなテンションみんなの前じゃ

見せな……

今の俺はお前だけの特別仕様だぜッ?!あっぢち」


「あ、ごめん豚バラの油飛ぶから気を付けてな」


「それは…先に行って欲しかった」


「進路かぁ…いやーどうしよう…

俺らもう高3だからなぁー

そして俺の青春は一体どこへ………」


「お前…青春についてちょっと

引きずり過ぎじゃなイカね?」


「おま、こんばっかチンが!

お前二度とない高校生だぞ!お前!」


「悟…悟…落ち着くのです、ていうかもう悟れ

お前の名前にある通りに悟れ、

な?ん?ね?高校のうちの青春なんて

俺らには高望みだったんだ」


「見損なったぞ航真!

俺らはあの日誓ったじゃないか!

『絶対に彼女をゲットして4人で遊びに行こう!』って!あの誓いは嘘だったのか?!

あの日の友情は嘘だったのか!?」


「いやー、重い重い友情にしてはずっしり来るね

こってりラーメン食べた後に

ステーキ食べるくらいに重いね」


軽く悟をあしらいズゾゾッと

焼きそばをすする

あっ、これは美味い。うみゃー…

うみゃーですわぁ………


幸せを噛み締め前を向くと悟も同じように

ズゾゾッと焼きそばをすすり

幸せに浸っていた

焼きそばってイイね!人を幸せにする


そんなこんなで

航真と悟の昼食は平和に進んで行った

















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