第944話 蛇の当てこすり

「聖書はなぜ『蛇』の例え?」  

  「子供にもわかるからでしょ」

「なるほど、意味も知りたいな」

  「多分、『長い者』」

「あーそうか」

  「『長い者には巻かれろ』」

「そんな諺があるよね」


・・・

要するに「長者」とか「見識者」のような存在だろう。


楽園で、イブが騙された理由もそこにある。


そして後の時代の蛇は、地面に腹を擦り付ける姿が示すように、「地」と呼ばれる選民にとって親しく身近な存在だったのだろう。


ただ、「蛇の口から出るもの」には、結構な「当てこすり」が含まれている。




創世記3章

1さて主なる神が造られた野の生き物のうちで、へびが最も狡猾であった。へびは女に言った、「園にあるどの木からも取って食べるなと、ほんとうに神が言われたのですか」。

2 女はへびに言った、「わたしたちは園の木の実を食べることは許されていますが、

3 ただ園の中央にある木の実については、これを取って食べるな、これに触れるな、死んではいけないからと、神は言われました」。

4 へびは女に言った、「あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。

5 それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです」。

6 女がその木を見ると、それは食べるに良く、目には美しく、賢くなるには好ましいと思われたから、その実を取って食べ、また共にいた夫にも与えたので、彼も食べた。



5節の蛇は、確かに「創造主への当てこすり」を口に出している。


※ 当てこすり→ 遠回しの中傷


「良いものなのに、それを知っていて禁じている」という主張である。


「始めからの蛇」の場合、「当てこすり」が間違いへの誘導に繋がっていた。


「長者」だからこそ、イブは騙され、人類は奈落に落とされた。


但し、後からの蛇(イエス)の場合は「サンヘドリン」を相手の「当てこすり」であり、民衆には救いとなっていた。


イエス以後、始めからの蛇が、神の国まで追って来て「水」を吐いている。


それも「大量」に。


『女』の後ろから放つ「当てこすり」がどんな形だったかは読めないが、遠回しに創造主や御子を中傷していたに違いない。


言葉は丁寧で、貫禄もあったから多くの人々が騙されたのだろう。


「全面禁止は本当ですか?」

  「いえ全面じゃないんです」



こうして、イエスからの簡素で純粋な教えはかなりの毀損を受けてしまったのだろう。


強い調子で発する言葉は拒否されるが、ヤワヤワと道を曲げる態度だと人々は弱い。


こうして、日本でもエデンのトリックが駆使されたのではないだろうか・・・


「蛇の当てこすり」は実に巧妙な手法だと唸るばかりである。


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