魔王討伐
ラクリエード
フロローグ
宣言、魔王討伐
全身を揺さぶる不意の衝撃に、目が覚めた。
「君たちで、第百八十七回目の隊となる」
じわりと、全身の神経に血が通うような感覚と共に、静かな威厳のある言葉が耳に入ってくる。
「それだけ、魔王との戦いが起き、多くの者が散ったということである」
背後に立つ仲間に感謝しながら、改めて面を上げる。
ずらりと整列する仲間の背中よりも、少し上。強い光を背に、胸を張り堂々と立っている国王がいる。その背後には玉座、前には少し高い机。
「もちろん、その中には君たちの、そして私たちの同胞や、盟友がいたことだろう」
白くなった髭に隠れている口から放たれる力強い一言一言を、一心に聞き入る。
「そして、晴れて、百八四次討伐隊の手により、魔王は、討たれた」
そう。魔王は、倒された。
「だが、彼奴はまた、魔界から舞い戻った」
一段とトーンを低くし、両の手が握られる。
「そして以前、派遣した百八十五次を壊滅に追いやり、やつは、城から逃げ出したのだ!」
ドシン。不意に、左手の拳を机にたたきつけた王は天井を仰ぐ。
ふぅと一息。再び俺たちに向けられた視線は、まだ足りないと言わんばかりに燃え上がっている。
「改めて、言おう」
俺を含めた仲間を見渡す。
「よいか、新世代の戦士たち。魔王が逃げ出し、行方をくらませた」
ちらほらと小さく頷く仲間たちが見えた。俺も、もちろん、魔王を倒すためにここにいるのだ。冠もいただかないが、気品の感じる服装の老体は、希望と憤怒のうずまくを目に宿しながら、両手で机を、叩く。ドシンと足元まで届きそうな響きに、ざわめきが流された。
「追うのだ。そして、倒すのだ」
魔王を、と続きを言い終わるか否か。仲間も、そして俺も、腕を振り上げる。それとほぼ同時に、乾きかけていた喉を震わせる。一種の不協和音が、自らを奮わせるとともに、天井を、城を揺らす。
そう、魔王を倒す。いや、絶対に殺す。
人々から奪い、愉悦にひたることを喜びとする魔王は、この世界に要らない。
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