共同住宅における給排水管工事における合意形成について

新丸子の不動産屋です

第1話

 マンション管理士の仕事もしているので、ある管理組合から給排水工事を控えていて総会や理事会が紛糾していて、それを正常化するためにSOSが入った。

 建築関係が専門の仲間と現場に行って実情を調査、管理会社のフロントの人間と簡易組合の役員が数名そのマンションの集会室に行って話を聞いた。


 1974年築の11階建て160戸の大規模なマンション、場所も駅前の一等地で1-2Fには店舗や事務所も入る複合的なマンション。築40年を超えて、一部の世帯では漏水等もあって生活にも支障があるような状態で結構切羽詰まっている状況。大規模修繕委員会も理事会と別にあるのだが、理事会とこれもうまく行っていない。また区分所有者の中に専横する人がいて、理事会や修繕委員会を無視して臨時の会を開いて住民を集めていたり、マンション管理新聞に勝手に給排水工事の修繕業者の募集をしたりと、管理組合が機能不全に陥っていた。理事長も、前理事長の辞任に伴い代わりになったというだけの名前だけの理事長でリーダーシップも感じられない。そんな八方ふさがりの状態に大手の管理会社が窮余の策として、我々に白羽の矢が立ったというところだ。

 築年数は古いしまとまりは今一つだが、裕福というほど財政が豊ではないが給排水工事をする資金があったのが救いだった。いろいろと話していてだいぶ状況は飲み込めてきて、次回の総会に出席することとなった。

 

 160戸の世帯数だが集会室がある程度埋まるほど組合員の意識は高かった、築45年なので高齢者が占める割合が多いのは仕方のないことだろう。駅前のマンションなので若い組合員もちらほら見る程度だった。最初は我々は組合とは何も関係のない傍観者であったので発言は控えていたのだが、副理事長が実際には区分所有者の夫で区分所有者でないことを発言の度に中傷したり、なかなか前に進まない展開に、発言をすると今度は我々の傍観者としての位置を中傷する組合員も出てきて、サポートする管理会社のフロントも手を焼くのも当然と理解できた。ただどの組合員も現状は把握していて、工事すること自体の反対はなかった。排水工事の床下部分の配管部分は規約的に見ても専有部分で、本来は各戸の専有部分を管理組合が工事すること自体への是非、また修繕工事を済ませている世帯との金額の調整も議論されるところだが、どの住戸も現況をわきまえているようでそれらに関しては異論はでなかった。時間はかかったが修繕工事を行うことは無事可決された。方法は理事会が主導で、仕様書を管理会社が作成してそれに基づいて入札をして説明会を行ったうえで、組員の意見を聞いて、最終的に理事会で決定することになった。


 次の理事会で業者の募集開札について話し合われて、管理会社も工事の入札に参加したい意志の表明があったので、我々が比較表を作ったり、説明会の進行、工事業者の見積依頼、仕様のチェックを行うことになった。工事業者の募集は掲示板で組合員に呼びかけることとなった。

 工事業者の応募には三社応募があり、管理会社と修繕委員会のメンバーの推薦の工事会社Aと他の組合員が推薦した工事会社Bと三社が決定して、工事の仕様書質問書、また入札前の説明会の期日も合わせて連絡した。


 開札は我々と管理組合の理事長た立ち会って行われ、開札後の変更がないように表紙をコピーして、それぞれの比較表を作成するために原本は我々が一旦預かった。そのまま比較表を作ってもいいのだが、今こういう見積書は概ねエクセル等の表計算ソフトを使っているので、それをそのまま使ったほうが比較表は作りやすい。担当者のメールアドレスも皆書いてあるので、趣旨を述べてファイルでもらうように依頼した。ほどなくファイルをみて比較表の作成開始。 

 三社の仕様が同じなら比較するのはそう大変ではないと思っていたが、それぞれのソフトが違うのか計算が違うのかそう簡単には行かなかった。工事は給水工事と排水工事に分かれて見積もりが出ていたのだけれども、値引きの仕方が給水工事と排水工事それぞれについている会社と、総合計から値引きをしている会社もあり、比較する際はそれぞれを按分して比較表に記載した。表計算ソフト使っていれば考えにくいが計算ミスがあったり、仕様書では抜けている作業を追加する会しあもあってそのあたりも比較表には掲載した。見積書としての比較表はこれで完了だが。会社の所在地、創業、給排水工事の近隣の実績なども比較表に加えて、誰が見てもわかるようにいろいろ工夫した。

 工事会社Aと管理会社の見積は金額面では大きな差異は見られなかったが、工事会社Bは明らかに高かった、何かの事情であまり数字を練っていない感じがした。それとともに説明会の準備を始めたのだが、その後B社から見積辞退、説明会欠席の連絡が入る。書類をチェックしえちくと管理会社にも書類の不備が見つかって、組合員の推薦書が漏れており、工事担当の人間に確認したところその不備を認め結局辞退、理事会では工事管理を任されることが承認。説明会時に結局残る工事会社の信任を問うような形になってしまった。

 

 説明会に来たのは工事会社Aだけだが総勢8名の大所帯、担当の営業の方を初め現場の責任者に当たる人間とその事務担当、また実務の担当も来て工事の説明を行った。組合員はどういう形で工事をするか不安も多かったようだが、工事は立管ごとに何か所同時に行っていって1フロアーを一日で工事を終え、朝から夕方までは水を使えなかったり排水できないが、どんな場合でも夜には復旧するそういう話を聞いてかなり安心したようだ。本当はここで決を採って一社に絞り、最終的に理事会で決定する流れだったが工事会社の信任投票になった。工事会社の説明の後意見交換会が始まった、管理会社が今回降りたことにはかなり意見があって、どんなに高くても管理会社に工事をして欲しいという意見があり、正直驚いた。その後理事会が行われ、工事会社がAに決定してその後工事説明会を終えて我々の役目はここで終了。説明会は思ったより紛糾することもなく終了、問題のある組合員も欠席、大規模修繕委員の方も自分たちが推薦した業者ということもあってか大きな反対もなかった。

 その後工事が始まるまでには多少時間がかかったようだが、工事は無事順調に行われたようだ。

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