第416話 我の方がコメディーじゃと!?


 場所はちゃんこ鍋屋。

 テーブル席にエルリナ、ウィピ、シアン、クレア、カルレインの五人。


「それじゃ、遊んだだけだけど、かんぱーい!」

「「「「かんぱ~い!」」」」


 今日は朝から五人で遊んでいた。


「思い付きで提案したがどうじゃった?セレンディバイト巡り。モグモグ…」


 五人は午前『ハイ&ロード』でギャンブル。昼食はカフェでショーを見ながらサンドイッチ。午後はエステ店行ってオイルマッサージを受け、エネカの雑貨屋で買い物をし、ラストの今がちゃんこ鍋屋で夕飯である。


「ギャンブルは低レートだから物足りない感あるけど、分煙でタバコの匂いがほとんどしないのは良いな」

「ヨコヅナの会社のカフェだけあってサンドイッチ美味しいかったわ。やっぱりちょっと高いけど」

「エステも意外と本格的でしたね。男性客も多かったことに驚きでした」

「カルちゃんのお陰で特別製清髪剤買えたのー。早く試してみたいのー」

「モグモグ、ゴクンっ。それなりに楽しめたようでなによりじゃ」

「欲を言えば王覧試合の前に巡りたかったな」

「それね」ですね」なのー」じゃな」


 今セレンディバイト社の各店舗は連日繁盛中、ことあるごとに並ばないといけなくなるのだ。


「にしても、ついこの間裏闘でAランクトップ選手をぶっ倒したと思ったら、次は王覧試合で近衛騎士隊をぶっ潰すとか…。ほんと大将は怪物だな」

「エフから聞いたけど、ヨコヅナに会う為事務所にも客が絶えないらしいわね」

「社交界でもヨコヅナ殿の話が出ない日はないとか」

「王都新聞にあれだけ載れば、ヨコちゃんに注目集まるのは当然なのー」

「モグモグ、ゴクンっ、当然でも本人は自覚なかったがの。ヨコは昨日仕事休みで、市場に行ったら揉みくちゃの質問責めにあったと言っておった。こっちからすれば「そりゃそうじゃろ」としか言葉が出んかったのじゃ」


 因みに話はヨコヅナがハイネの屋敷に帰って夕食の時にしており、一緒に聞いていたハイネと爺やも「それはそうだろ」「それはそうですよ」とハモっていた。


「はははっ、バカだな大将。らしいっちゃらしいけど」

「ヨコヅナ殿の温和な雰囲気があってこそですよ。普通なら一般人は近衛騎士隊を潰した【不倒の怪物】に近づこうとは思わないでしょう」

「新聞の見出しみたいな顔すれば誰も近づかないでしょうね」

「あの絵は本当に怪物だったのー」

「モグモグ、ゴクンっ、そのギャップもまた人を集めるのに一役買っておるのじゃろうな」

「ギャップと言えば…皆はラビスさんから貰った小説【不倒の冒険】は読みましたか?」


 ラビスは登場してくれた相手(※手渡せる相手に限るが)には小説をプレゼントしている。


「おう、小説とか途中で飽たりすんだけであれは最後まで読めた」

「サクサク読めて、面白かったのー」

「あの小説をラビスが書いたのは確かにギャップを感じるわね」

「モグモグ、ゴクンっ、皆そう言うの。じゃがヨコの存在がコメディーみたいなところあるからの」

「カルちゃんもだと思うのー」


 冒険中なのにヨコヅナの肩に乗ってたり、光魔法で突っ込みを入れたり、大食い大会で優勝したりと、寧ろカルレインの方がコメディー要素が多い。


「いえ…作風にもギャップは感じましたが。私が言いたかったのは作中でヨコヅナ殿とラビスさんが二人っきりの時、ヨコヅナ殿の口調が変わるシーンがありましたよね」

「あったわね。いきなり別人にみたいになるから最初意味が分からなかったわ」

「モグモグ、ゴクンっ、あそこはフィクションだと言っておったぞ」

「あぁ~、冒頭に半分フィクションって書いてあったもんな。大将の訛りが実は演技なのか、とか考えちまった」

「事実じゃないならあんであんなシーン入れたの?」

「それはラビスに聞かねば分からぬが、ヨコは話そうと思えば訛りなく話せること自体は事実じゃ」


 国王との面会に向けて会話の練習に付き合ったことで、カルレインもヨコヅナが訛りなく話せることは知っている。


「ラビスは次回作を考えておるようじゃから伏線かもの」

「シリーズ物になるのですか…」

「あ、私も小説で気になった点あったの。カルはハーフリングだったの?」

「そこもフィクションじゃぞ。我は八大魔将が一人『死光帝カルレイン』じゃ」

「前もそんなこと言ってたな。持ちネタか?」

「信じる信じないは好きにするがよい、モグモグ…」


 カルレインが正体を名乗っても冗談としか思われない。これには一応理由があるのだが、それはまたいずれ。


「ゴクンっ…今さらじゃがアルはどうしたのじゃクレア?」

「ほんと今さらね。アルは靴屋のバイトよ、そもそも今日みんなと会う事伝えてないけど別にいらないでしょ」

「相変わらずクレアはアルに酷いですね」

「いらんのは同感じゃが、ゴブリン退治で会った三人組冒険者とアルが昨日一緒にいたとヨコが言っておったのでな」

「小説にあったな。王都の新人冒険者が大将達をベテラン冒険者と勘違いして雑用としてついて来たんだよな」

「時系列入れ替わってるけどあの章面白かったのー」

「トワーツ森林のゴブリンのボスがトロールだったのも本当なのですよね?」

「半分本当じゃ」


 小説ではリンの事は書かれていない。今後『ハイ&ロード』でショーをするのにゴブリン群の裏ボスだったと広めるのは評価を下げるとラビスは考えたからだ。


「そうだわ!そんな雑魚四人組の事なんてどうでもいいのよ。相談があるの!」

「雑魚四人組って」

「アルちゃんが混じっちゃってるのー」

「アルは一応クレアの正式パーティーだろ」


 『龍炎の騎士』のツッコミはスルーしてクレアのしたい相談は、



「みんなでトロール討伐行かない?」


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