第27話 村人として加入させよう
皆の部屋割りが決まったところで、次の議題に移りたいと思う。大事な大事な、家具のチョイス――― も、非常にしたいのだが、まずはそれよりも早急に確認したい事があるのだ。
「三人の役職を決めたいと思う」
「「や、役職……!」」
ゴクリと喉を鳴らすリンとトマは緊張した面持ちだ。
「あー、そんなに緊張しないでくれ。役職とか大層な事のように聞こえたかもしれないけど、要はこの船での仕事をどうするか決めるだけだから。クリスなら料理を始めとした家事全般、俺は能力を使ってのダンジョンの運営とか、そういう感じだ」
仲間になったからには家族みたいなもんだが、ニートは許さない! それがこのダンジョンの方針だ。
「私は専ら戦闘員として働くから、お構いなく~」
「はい、そこの大食いは少し待ちな」
笑顔で部屋から出ようとする、アークの首根っこを掴んで引き止める。が、アークは止まらなかった。そのまま俺ごと引き摺って、部屋の扉にまで到達してしまう。
「ぐうっ!? この馬鹿力、まだ諦めてねぇっ……!」
「ほら、とっても戦闘員向きでしょ?」
「アークさん、それとこれとは話が別です。マスターの言う事を聞かないと、次の食事のランクを落としちゃいますよ!」
「なんっ、ですって……!?」
ギギギと顔をクリスに向け、ようやく足を止めるアーク。なるほど、こいつを止めるにはそのネタがよろしいのか。了解した。
「アークが席に戻ったところで話を戻すけどさ、できるだけそれぞれの長所を活かした仕事をしてもらいたいんだ。という事で、皆のステータスを教えてくれないか?」
言葉で説明されるよりも、ステータスを覗いた方が能力を把握しやすいし、スキルの確認にもなる。特にトマとリンは、この世界の標準値を知るのに良い指標になると思うんだ。
「あ、あの…… 私達、自分のステータスを見た事がなくって……」
「なぬっ!?」
と思っていたが、いきなり出鼻を挫かれてしまった。
「なぬっ、じゃないでしょうが。ステータスを確認するなんて、それ相応の場所で見せてもらうか、高価な確認ツールを使わないとできないものよ。そんな事も知らないの?」
「自慢じゃないが、俺の世間知らずっぷりを舐めてもらっちゃ困る」
「ウィル、自慢するところじゃないわよね?」
「はい……」
反省の後にアーク達から話を聞く。彼女らが言うに、ステータスとはたとえ自分のものだったとしても、貴族でない限り簡単には確認できるようなものではないらしい。多くの一般人は、年に一度ある成人の日に近場の教会に集められ、特殊な道具を使ってステータスを映し出してもらい、そこで初めて自分の能力を知るんだそうだ。奴隷も例外ではない。もちろん、抜きん出た才能があるとして勧誘され、それよりも早くに確認する場合もあるのだが、それは極一部の者の話。奴隷であったトマ達双子の年齢は14、この世界における成人は15だ。という訳で、能力を確認していないのも当然の話なのである。
「なるほどな。当然のようにクリスやゴブリン達のステータスを確認できていたから、そこまで頭が回らなかったよ。いやー、反省反省」
「でも、どうするのよ? ステータスを確認するツールって本当に高価だから、そのショップ機能? ってのを使っても、買えるかどうか分からないわよ?」
「しかもショップで買うと、通常よりも割り増し価格だもんな。うーん……」
どうしたもんかと悩む俺、困った顔をする獣人兄妹。するとクリスがパンと手を叩いて、何かを思い出したかのような仕草をとってみせた。
「マスター、ここで応用ステップですよ!」
「お、おお。久し振りだな、この流れ」
どうやらクリスがダンジョン創造スキル大マニュアルより、良さげな項目を発見したようだ。他三人には分からないだろうが、俺はこれまでの流れからか自然と勉強体勢へと移行してしまう。
「―――なるほど。外部の者を、ダンジョンの一員として加入させる方法か」
「はい。ダンジョン滞在中に発生するDPが二倍に、更にはダンジョン機能の一部利用や、ステータスの表示を自由に行えるようになります。配下モンスターの枠ではなく、ダンジョンに住まう村人枠になりますね。こちらの枠を空けるには初期費用としてDPが消費されますが、今ならその余裕も十分にあるかと」
「要は正式にこの船に雇用されるって事? 良いんじゃないかしら。私は賛成よ!」
「俺も!」
「わ、私も参加したいです」
と、これが雇用契約書代わりとなって、アーク、トマ、リンの三名は正式に俺のダンジョンへ迎え入れる事となった。ちなみに了承ボタンを押す為のメニュー画面は、その前の状態でも見えるようである。便利。
「はい、注目。ではでは、三人のステータスを開示したいと思います」
「わ~」
雰囲気作りは大切。俺がそう高らかに宣言して、クリスが拍手をする事で場を盛り上げる。
「私は見た事あるから、そこまで改まらなくても大丈夫なんだけどね」
「俺はワクワクしてるよ!」
「私はドキドキ……」
「皆の目の前に一気に表示するからな~。いざっ!」
表示設定を終えて、決定ボタンを颯爽と押す。でかでかと俺達の前に現れるステータスに、皆が注目する。
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アーク・クロル 19歳 女 人間 元剣闘士
HP :850/850
MP :0/0
筋力 :S(マイナス8⇒B++)
耐久 :S-(マイナス8⇒B+)
魔力 :F--
魔防 :D--
知力 :E-
敏捷 :A++(マイナス8⇒B-)
幸運 :A
スキル:全武器適性A
スキル:飢餓の力B
スキル:闘争本能B
装備 :衣服
邪詛の鉄球(筋力・耐久・敏捷マイナス2効果)
邪詛の鉄球(筋力・耐久・敏捷マイナス2効果)
邪詛の鉄球(筋力・耐久・敏捷マイナス2効果)
邪詛の鉄球(筋力・耐久・敏捷マイナス2効果)
=====================================
トマ 14歳 男 獣人 元奴隷
HP :60/60
MP :0/0
筋力 :D+
耐久 :D
魔力 :F
魔防 :F
知力 :E
敏捷 :C-
幸運 :E-
スキル:狙撃C
スキル:なし
スキル:なし
装備 :衣服
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リン 14歳 女 獣人 元奴隷
HP :20/20
MP :60/60
筋力 :E--
耐久 :F++
魔力 :C-
魔防 :D+
知力 :C--
敏捷 :E+
幸運 :E
スキル:水魔法D
スキル:なし
スキル:なし
装備 :衣服
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……約一名、明らかにおかしなステータス値な奴がいますね、はい。いや、ある程度は予想していたところもあるけど、実際にSの表記を見せ付けられると、何とも言えない気持ちになる。
「アークは地力が凄いけど、邪詛の鉄球ってので能力が大分減らされてるな」
「どうりで調子が悪かった訳ね! 力が出ないし、鉄球の重さ以上に体が動かないな~、って思っていたもの」
それでもB前後をキープして、俺らの中でもトップを張っているんですけどね。たぶん、アークの力はこの世界でも規格外なんだろう。そう信じたい。
「つか、装備できる数って五つまでじゃないのか? 現時点でアークの装備が五つ、さっきの首輪も合わせたら全部で六つになるぞ?」
「うん? 何の話よ?」
「あっ、マスター。それは配下モンスターのみの話です。ユニークモンスターとなった私やマスターも、装備数に制限はありませんよ」
「そうなのか? ちょっと勘違いしてたわ」
「えっと…… 私達のステータスは、どの程度のものなんでしょうか?」
「俺、『狙撃』ってスキルある!」
そうだそうだ、二人についても着目しないと。
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