第3話 姫の優しい嘘

椅子に座ったヴァルケンは「少しは気が利くな若造、しかし…いつまでも姫様1人に私を支えさせ続け、更に貴様では無く横に居たユキに手伝わせた、というのはどうだ?情けない男だな?貴様のその肉体は見せかけだけか?」と鋭い目付きで私を睨みつけてきたので「…ふっ…従者の分際で主に支えられていた割に厳しい評価ではないか」と鼻で笑いながら言うと彼は「…貴様もう一度言ってみろ、その喉元噛みちぎるぞ」とわなわなと怒りで震えながら先程よりも眼光が鋭くなり、言葉自体も執事が発しているのではなく、そう戦いを生業にしている者が発するものに近くなっていた。そのため私は「いいのか?いくら貴様が狼の獣人であろうが片足が…」まで行ったところで再びユキが私の頭をトレイで叩いた為、私は言葉を中断せざるを得なかった。

ユキは「ごめんなさいね、この人ほんとうに人を馬鹿にしないと生きていけないのか?というレベルだけど…どうにかしますから」と言うとサクラは「いえいえ…ヴァルケンも口が過ぎました、申し訳ないです」と言うとユキとサクラは顔を見合せ笑い始めた、どうにかサクラにも笑顔が戻ったようだ。

「さて、では何を食べたいのかね?わざわざ自分の国と王宮を抜け出してきたのだからなにか特別な注文なのだろ?」と私が言うとサクラは「そうですね…紅茶と…それに合う軽めの甘い食べ物をお願いします、ヴァルケンもそれでいいですよね?」と聞かれると「私は執事兼護衛ですし、姫様がこのおふたりとお会いになりたい、と仰られたので私の能力でお連れさせていただいただけですので私の分は結構です、姫様だけでお楽しみください」と返されたサクラの顔は再び悲しそうな物になった。ユキはその顔を見、そしてサクラの言葉を聞いてなにか閃いたのか私の足を踏んで耳打ちして来た、内容はこうだった「…たまには付き合って茶位飲んだらどうだ?サクラ姫のおかげで貴様は片足が無くなっても今の執事兼護衛が出来ているのだろう?」と私が言うとユキが「そうですよヴァルケンさん、おふたりの国でだったらどれだけサクラちゃんが気を使ってもあくまでも2人は姫とその従者、だから本当の意味で落ち着いて2人でお茶も飲めない、だからこそヴァルケンさんに連れてきてもらったんだよね?」と問うとサクラはこくりと頷き、「ヴァルケンからしたら当たり前、かもしれませんよ?ですけど私…あの状況をどうにかしようと傷だらけになり、片足を失ってでも打開しようとしてくれた貴方に感謝しています…そして…謝罪しても許されないとも思っています」と言うとヴァルケンは目を白黒させ「護衛の私が姫様のために傷を作るのは当たり前のことです、感謝していただくのは光栄ですが…なぜ姫様が私に謝られるのです?」と聞かれるとユキは「…だってあれだけ毛並みの美しい狼になれたのに…もう…なっても1人で歩けないでしょう?」と続けた。私はその様子を見るに見兼ね、「…つまり美しい姿を忘れず、そして感謝しつつ謝罪をしたい、ということで間違いないかね?」と言うとサクラはまたもやこくりと頷いた為「了解した、では少し時間がかかるのでな、ユキ話し相手になっていてくれ」

と言うと3人分のティーカップと店に置いてある大きめのティーポットに紅茶を入れ、カウンターに置いた

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