第1話 かき氷屋の店主

ドアを開けて入ってきたのは学生服を着た目つきの悪い少年だった

「…おいおいマスターさんよ…まさかこの店に入る客がいる度にそんなこと言ってるのか?」

と軽く呆れながら少年は言い、カウンター席に座った。彼が座ると直ぐに店員の双子の片割れがグラスに注がれたレモン水を出す

「…いつも、どの客にでも言っている訳では無いがね、朝一番の客、となると私の経験上あまり良いことが無かったんでな」

と答えると彼は既に私の回答には興味が無いようで水を飲み、メニューを見ていた

「…話を振っておきながら即興味を無くすのはどうかと思うぞ?さすがの私でも多少は傷つく」

と言うと彼は

「アンタの話に真面目に相槌してたら何時までもバカにされるだけだろ?」

と鼻で笑うと続けて

「今日のモーニングはなんだ?まためちゃくちゃ凝ってるメニューか?」

と聞いてきたので私は

「今日はシンプルにトーストに目玉焼きを乗せ、ウインナーソーセージを焼いたものとサラダを付けたモーニングだ」

と答える

彼は良いねぇとつぶやくとそれをひとつ、という意味で人差し指を立てる

「モーニングひとつだな、卵の焼き加減はどうする?半熟かね?それとも黄身も固くなるまで焼いた方がいいかね?」

と聞くと

「トーストに乗せるんだろ?だったら半熟で頼む」

と言われた為私はすぐに目玉焼きを焼きにかかった

「…あんたも仕事は出来るんだから軽口をやめたらどうだ?そうしたらもっとこの店に客が来るぜ?」

と彼に言われた為私は

「わたしから軽口をとる?だったら一体何が残るというのかね?」

と言うと彼は違いない、とケラケラ笑う

「けどよぉ?やっぱりあんたもひとつの店の店主なんだからもう少し接客に丁寧さがあった方がいいんじゃねーか?その方がもっと売上が上がるだろ?」

と彼は聞くが

「私にとっては私のタバコが買えて、そしてこの店が回せるだけの儲けがあればそれで構わんのだよ」

と答え、彼の前にモーニングセットを置く

「彼はお、ありがとな」と言うとサラダから食べ始め、「…ほんとあんたらしいな、何も変わらない、そこだけは本当に尊敬に値するよ」

と言ってきた為

「そういえば君こそ店を開けないでいいのかね?」と聞くと彼は「俺の店はかき氷屋だぜ?こんな朝イチに客が来るかよ来ても10時から夕方の5時までさ」

と答えるそれもそうだな、と笑うと頭に衝撃を感じ、店にはスパン、というなにか硬いものでものを叩いた様な音が響く

「…ユキ…私の頭は叩くためにあるのでは無いのだが?」

と問うと私の頭を叩いた犯人の少女は「お客様を小馬鹿にした貴方が悪い、違う?」と口を開く、そうすると私と彼女以外の店員4名皆うんうんと頷く。そうすると彼はトーストを食べながら「…相変わらずの夫婦漫才だな、塩コショウが効いてる目玉焼きのせトースト食ってるはずなのに甘々じゃねーか」

と言いながらいつの間にやらモーニングを食べ終わったようで立ち上がり「ごっそーさん、代金は置いておくぜ?」

と言い店を出る。

「夫婦漫才、では無いがね、また食事がしたくなったらいつでも来たまえ」

と言い彼を見送った

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