第32話 貞操帯を外した乙女たち
セカイくんが初めて私に驚いてくれた。そして認めてくれたような気がした。
それが嬉しくて、うきうきして、だからそんな私を羨ましいと思ったのか、アネストちゃんもディーちゃんも……
「セカイ、お相手願います」
「言っておくけど、私たちの貞操帯を外させるんだから覚悟しなさい……って、え、エロスな意味じゃないわよ!?」
さっきまで私を止めていたはずの二人が、何かすごい好戦的に笑っている。
「「貞操帯解除!!」」
「は……はは……ははははははは! なんだそりゃ! 今の今まで隠しやがって……いいぜ! 見てやるよ、お前らの偽りない裸の姿をな! 吐かずに目ん玉あけてガン見してやるよ!」
おお……二人も外した……これ、バレたらお父さんたちに怒られちゃうよね……でもさ、でもさ、仕方ないよね!
素敵な男の子が褒めてくれたんだから、貞操体外して私も見てって気持ちになっちゃうよね!
「行きます、セカイッ!」
「こいよぉ!」
まず飛び出したのはアネストちゃん。久々に解放されたアネストちゃんはイキイキと……って、
「逃げなきゃ危ないよぉ、セカイくん!」
私はとんでもないことをうっかり忘れてた。アネストちゃんが封印されていたものを開放したき……
「はっ、知るか! 男が逃げるか! 貞操帯外した女を受け入れてこその男――――」
「ふぬらあああああ!」
「……あっ……ッッッ!!!???」
乙女に似つかわしくない雄叫びと共に、拳を大きく振りかぶって振り下ろすアネストちゃん。
正面から腕をクロスしてガードするセカイくんは……
「ぬごおおおおっ!? な、な、なにいっ!?」
両足が地面に埋まり……ううん、衝撃がセカイくんの周辺だけ大きく陥没して庭に大きな亀裂が走った。
「な、なにごとです!? ……んな……お、お嬢様ッ!!??」
執事さんたちが慌てて駆け寄った時には、今の一瞬でボロボロになった庭と、拳を振り下ろして頬がゆるゆるになっているアネストちゃんと、顔を青ざめさせているセカイくん。
「す、すごい……お父様たち以外で私のパンチを受け止めて下さった人は……ましてや同年代では初めてです! セカイ……あなたは……私を受け止めてくれたのですね!」
「は、はは……なんだこりゃ……」
自分の想いを受け止めてくれたと、もう蕩けまくっていて嬉しそうなアネストちゃん。
だよね、子供の頃からその細い体からは想像できない異常なパワーが制御できなくて、おじさんに封印されて……だから、小さい頃もクラスの子たちにイジメられた時だって反撃できなくて……それに……
「い、痛い!」
「え……あ?」
それに、反動も同じ。
今の一発でアネストちゃんは力が抜けて蹲っちゃった。
「お、おい……アネスト? 一体……」
「ふ、ふふ……これこそ私が未熟な証拠……自分の肉体が生み出すパワーに私の肉体、筋肉や骨がまったく耐え切れなくて……一回力を入れてパンチしただけでもう全身がしびれて動けなくなってしまうのです」
「……え?」
そう、そしてそれは私も同じ。超全速力で走ったら、すぐに体がボロボロになって倒れちゃう。
私たちの身体が壊れちゃう危険性もある。だから、お父さんたちは私たちのスキルを封印した。
でも……
「ばか、おまえ、なんで……」
「だって……見せたかったのです。今までビッチビッチと人を小ばかにしていたあなたが……シャイニを褒めたんです……私だって……」
そう、今までそういうのなかったもんね。
力を解放したら危険。
力を封印した私たちは落ちこぼれ。
それなのに、セカイくんは違ったから。
「で? ど、どうでした? 私の……その……貞操帯を外した私の魅力は……」
ちょっと拗ねたように唇尖らせて、セカイくんの袖口を掴むアネストちゃん……かわいくて抱きしめたい。
するとセカイくんはプルプル震える両手をアネストちゃんに見せて苦笑した。
「両腕がな……力入らなくて……上がらなくて……こんなん……初めてだよ。メチャクチャスゲーじゃねえかよ、お前……」
「セカイ……」
「……たしか、魔法騎士養成学校のパワーレベルの平均は35ぐらいだったか? 魔法騎士で90、エリートで100ってところだ……ちなみに、俺は140だ」
140!? わぉ、セカイくんってばスピードだけじゃなくてパワーまで……すんご……でも、たしかアネストちゃんは……
「私は……180です♡」
「ふぁ……………」
「ふふふ、実は私の方が力持ちなんです……あっ、でも、あなたの体……逞しい……」
おお、そして目が点になるセカイくん。
ふふふふふ、イイねイイねぇ~、その顔を見るとほんと嬉しい!
「お嬢様! い、一体、一体何を、なぜ、何を、何が? 何をおおおお!? き、貴様、お、お嬢様に何をおぉおおオ!?」
そして、いつもの紳士で落ち着いた様子がぶっ壊れて、慌てて走ってくる執事さん。
すると、アネストちゃんは顔を赤らめながらコテンと頭をセカイくんの胸に預けて寄り添いながら……
「貞操帯を外して……彼にキズモノにされてしまいました♡」
「fjくぃわ;えklgwくぇ@ごp!?」
「いや……おま、言い方……」
アネストちゃんってば、やるねぇ! もう、完全に惚れ惚れだね♪
そして……
「ちょっと~、何をイチャイチャしてんのよ、セカイ! こっちはとっくにスタンバイできてるんだからね?」
「ぬっ!? ……っ!? ちょっと待て……ピンク……」
「あら? なにかしら?」
「お、お前、その魔力は……」
「ふふふ」
同じく貞操帯を外したディーちゃん。
「もう、私のことをピンクビッチなんて呼ばせないんだから、ちゃんと見なさいよね」
「は、ははははははは! ああ、いいぜ! 来いよ、どんどんテメエらのことを見せて―――」
ディーちゃんが封じられたものを解放しようと――――
「それまでだ!」
「「「「ッッ!!??」」」」
そのとき、突如私たちの前の空間が歪み……あ……
「ディヴィアス……」
魔導士のローブに身を包み、ピンク色の長めの髪を後ろで結んだ長身。
帝都で行われる美形コンテストでは常に上位をキープし、国内外問わずに人気とその実力で名を轟かせる人類の英雄の一人。
「あ……ぱ……パパ……」
ディーちゃんのお父さん。
そしてその隣には、ディーちゃんが大人になったらこうなるんだろうな~、似てるな~、でもおっぱいとおしりはやっぱり大人でボインで……っていつも思ってた、私たちも昔からよく知っている……
「ディヴィアスちゃん……」
「マ……ママ……」
ディヴィアスちゃんのお母さんまで。
神妙な顔をして二人が急にアネストちゃんの家の庭に空間転移で現れて……
「パパ……ママ……どうして……」
「お前たちに施した封印は、解除された瞬間に私たちにも伝わるようになっていてね……『サンライト』……シャイニちゃんやアネストちゃんの御両親はどうしても外せない用で駆け付けられずに、私たちだけ飛んできたが……ディヴィアス……」
そして、ディーちゃんのお父さんは……
「お前は一体何を……何をしようとした!」
「ッ!?」
パンと乾いた音が響いて、ディーちゃんのほっぺが赤くなっていた……
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