第12話 将来
「いや、何でそこでキョトン顔してんだよ! お前ら聖なる勇者たちの娘なんだろ!? 将来は聖なる女勇者たちみたいな感じで、魔王軍と戦うんじゃないのか!?」
あぁ、なるほど、そういえばセカイくんはしょっぱなから魔王軍を倒すとか宣言してた意識高い系だったよ。
って、さっきは私たちを勇者の娘とか関係なしに接触してくれるってことで好感度上がってたのに、ガッツリ勇者の娘として見てるじゃん!
「え、ええ、その通りです……ええ、その通りですとも。私たちは将来勇者の娘として恥じぬ騎士となりて、この身を人類に捧げる所存です」
ここで、最初は戸惑ったみたいだけどすぐにキリっとした顔で頷くアネストちゃん。
まぁ、そうだよね。アネストちゃんだけは昔からこういう感じだから。
でも、本当の夢は……
「ん~……私は……いいかな~って」
「私もパス」
意識高いセカイくんには申し訳ないけど、私は全然そんな気はなかった。
それは、ディーちゃんも同じ。
「……え?」
そんな私とディーちゃんの言葉にポカーンとした様子のセカイくん。
なんだろう……せっかく私たちを勇者の娘としてでなく……って思ってたのに、なんかちょっと悲しいな。
私が将来の夢とか、ちょっと中途半端な結果を出すと、皆こんな感じだもんね……
「え~っと……いやいやいやいや……ん? お前ら、勇者の娘で……勇者になるためにこの学校にいるんじゃないのか?」
「いや~、私はさ……う~ん、お父さんの言いつけで仕方なく?」
「私は世間体のため。将来は違う道に進みたいもの」
ポカンとした顔のセカイくんは、ショックを受けてるのかな?
「ど、どうなって……話が違……ちょっと待て、俺の計画は……」
ん? 何かブツブツ言ってるけど、計画?
彼の中では、魔王軍と戦うための将来設計みたいなのがあったのかな?
でも、それで私たちがこんなんだから、それがダメになっちゃったとか……
「お、お前らは……その……い、今のこの世界の現状に何も思わないのか! へ、平和のために戦おうとかぁ……」
おおっと、物凄い動揺しているよ。
いやいや、そんなこと言われても……
「ええ、分かってるわ。だからこそ、パパたちとか兵の人たちが頑張ってくれるけど、私たちまでやる必要ないでしょ?」
「な、なに?」
そんなセカイくんに対して、ムスッとした表情で返すディーちゃん。
「戦争しているからって、世界の全人類が兵隊になるの? ケーキ屋、雑貨屋、レストラン、洋服屋、大工、色々な職業があって、それに進んでいる人もいるでしょ? なんでたまたま勇者の家系に生まれただけで、私たちだけは勇者の仕事限定にならないといけないのよ。死んだら終わりなのよ?」
「いや、そ、それはそうだけど……」
「だいたい、魔族と戦争してるからって、私自身は魔族に何か恨みがあるわけでもないわ。それとも、見ず知らずの人が殺された恨みを抱いて魔族と戦えとでも言いたいの?」
ディーちゃんはちょっと強い口調だけど、そうなんだよね。
私もそうだから……
「うん、そうだよ……たとえばさ……こ~、恵まれない人たちに~みたいに募金をするとかそういうのがあって、ちょこっとお小遣いを募金することはあるけど、自分のお金全部とか募金しないでしょ?」
「ま、まぁ……な……」
「でも、戦争に参加して人類のために戦えって、募金でお小遣い全部とかそういうレベルじゃないでしょ? 生涯に渡ってお金で買えない命をずっと懸けて戦うって……やだよそんなの……やりたいこといっぱいあるのに」
こんな私たちを世界はガッカリするよね。大人の人たちは失望するよね。
お父さんたちは残念に思うよね。
でも、私たちは嫌なんだもん……だから……
「自分の人生なんだから自分の好きなように生きた……ん? セカイくん?」
と、気づいたらセカイくんが物凄い肩落として俯いて……そんなにガッカリさせちゃったかな?
「……いや、ものすごい俺自身にブーメラン刺さったというか……うん……好きなように生きたい……ご、ごもっともすぎて反論できねえ……つーか、俺も昔はそうだったし……でも、これはまいったな……」
あれ? 私たちに対してガッカリするかな? って思ったけど、物凄い気まずそうな顔をしているや。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます