第82話 駆けつけ一杯
◎本日の成果◎
討伐黒霊
血染めの屍教団員×1体(感染LV2、魔法・炎弾LV2)
討伐大黒霊
混沌招く融合体LV2(強酸LV4、吸収LV4、招集LV3、融合LV4)
大黒霊を討伐した事により、所持霊刻印が成長
剣術LV2⇒剣術LV3
耐性・感染LV3⇒耐性・感染LV4
統率・屍LV2⇒統率・屍LV3
格納・屍LV3⇒格納・屍LV4
大黒霊を討伐した事により、霊刻印の所持上限が成長
霊刻印数4⇒霊刻印数5
大黒霊を討伐した事により、魔具のアイテム収納上限が成長
アイテム枠5⇒アイテム枠7
大黒霊を討伐した事により、魔具の解放形状自由化が解禁
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魔剣ダリウス
耐久値:55/55(+7)
威力 :46(+3)
頑強 :66(+6)[+18]
魔力 :39(+4)
魔防 :38(+5)[+4]
速度 :44(+2)[+3]
幸運 :39(+4)[+3]
霊刻印
◇剣術LV3
◇耐性・感染LV4
◇統率・屍LV3
◇格納・屍LV4
◇無
探索者装備
体 :紺青の皮鎧
腕 :円盤の盾
足 :紺青の洋袴
靴 :紺青の履物
装飾 :
装飾 :司教の首飾
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「ワシ、エボリューション!」
成長するなりそう叫んだのは、もちろんダリウスだ。剣の刃が太くなり、長さも伸びたダリウスの姿は、剣としてもかなり大きいものになったように思える。確かにダリウスが歓喜するほどに立派で、見栄えのするフォルムになったが、正直なところ、これをちゃんと俺が扱えるのかが心配です。でけぇよ、でかくなるなって言っただろ!? ……あ、何か新しい機能が解放されてる。これって、前の形状に戻せるって事かな?
「相棒、安心せよ。ほれ、『剣術』も成長しとるし、大丈夫だいじょーぶ! のう、早速試し斬りに行かん? 多分切味とかぱないぞい? マジでマジで、だから戻さないで……!」
全然安心できねぇ、そして必死だ…… だ、だけど、二度目の大黒霊討伐、その成果は確かなものとなった。ダリウスの能力が満遍なく成長、刻んでいた霊刻印はまた一段階ランクアップし、アイテム収納上限と霊刻印上限が一つ増えた。これ以上ない探索結果だと言えるだろう。
「素晴らしいですね。探索者として誉れある成果かと」
「お、おう? どうした、ゼラ? 別にダリウスの冗談に付き合わなくても良いんだぞ? それとも何か? 今日はシリアスな日か?」
「ベクトが何を言っているのか分かりかねます。私はいつも真面目に職務を全うしていますのに……」
「全うしているかは凄く疑問だけど、今は流そうか。あー、ゼラが最初の頃の口調になると、ちょっと調子が狂うんだよ。何も知らなかったあの頃ならまだしも、酒豪で酒狂いな面を目にした今だと、なぁ?」
「……ベクト、精神的にも成長しましたね。失礼かどうかは兎も角として」
「まあ、事実じゃしのう。ほれ、ならば案内人よ。駆けつけ一杯じゃ!」
「望むところ!」
そう言ってゼラは、どこかに隠し持っていた酒瓶を直に口につけ、呆れるほどの速さで飲み干してしまった。止めろって、小さい子も居るんだって。つうか駆けつけ一杯って、普通俺がやる側じゃない? 何で迎える側のゼラがやるの?
「―――ぷはぁ! ふい~、ではベクトの要望にもあった事ですし、このノリでいくと致しましょう」
「ああ、うん、だから飲めとは言ってないんだけどな?」
「話を戻しますが、今回の成果は素晴らしいものです」
あ、無視されるのですね。よし、それでこそゼラさんや。
「二体目の大黒霊を倒した偉業もそうですが、何よりもベクトの成長速度は凄まじいものです。恐らく、歴代の探索者の中でも最速を競うほどかと」
「えっ、そんなに? ……というか、ゼラってそんな事も分かるのか?」
「もちろん、私は黒檻の案内者ですから。案内者は他の案内者と繋がっており、各記録を共有しています。言うなれば、そう…… 案内者ネットワークを閲覧できるのです!」
酒瓶を掲げ、高らかに宣言するゼラ。良い感じに酒が回っているらしい。
「神秘的な力と思いきや、おもっくそ電子的な感じになっちゃったよ…… しかし、なるほどな。そのネットワークとやらを利用して、俺の探索速度を他の記録と照らし合わせたと、そういう事か」
「ほう、便利なもんじゃのう。大黒霊との戦いで相棒が言っておった、デンパトウとやらと同じ力かの?」
「電波塔ですか? ええ、似たようなものかと」
「へえ。それならさ、ゼラが他の探索者んとこの案内人――― 例えば、オルカの案内人と話したりもできるのか?」
「あ、いえ、私が参照できるのは、あくまでデータベースにある記録だけですので、会話や文章での情報のやり取りはできません。調べられる情報にも色々と制限がありまして、大黒霊の居場所や宝箱の有無などは分かりません。知る事ができる事といえば、今現在に黒檻で活動している探索者の総数など、そういった記録的な情報のみですね」
「「へー」」
まあ、そんなうまい話がある訳ないか。でも、探索者の総数ってのはちょっと興味あるかも? 試しにゼラに聞いてみる。ゼラは「少々お待ちを」と言って、少し上の方を向き両目を瞑った。その手に酒瓶がなければ、とても絵になる姿である。
「出ました。最新の記録によれば、現在黒檻には一万二百十七名の探索者が居ます」
……はい?
「ちょ、ちょっと待ってくれ。一万? 一万人って、黒檻にはそんなに探索者が居るのか?」
「いえいえ、黒檻の規模を考えれば、これでも少ないくらいですよ。現にベクトも、これまでの探索のうち、二人の探索者としか出会っていない訳ですし」
「それはそうだけど……」
広い広いとは聞いていたけど、黒檻はマジでとんでもなく広大であるらしい。俺が探索している城塞都市くらいの規模なら、他にも一杯あるんじゃないか、これ……?
「ちなみにこの一分間に三十八名が亡くなり、新たに二十五名の探索者が外界より招待されているようですね」
「一分間で変動し過ぎじゃない!?」
「新人探索者の死も含めた人数ですから。その時によって増減の差はありますが、このくらいの人数なら特に珍しい事でもないですね。一分間でも多い時ですと、百人は優に超えますし」
「………」
命の軽さに唖然としてしまう。だが、しかし、そうだな。今までの探索を振り返ってみるに、俺も運で助かった場面が結構ある。言ってしまえば少し間違いが起こっていれば、俺もその死亡者に含まれていても、何らおかしくなかったんだ。
「えと、ちなみにだけど…… 一番長く生き長らえている探索者が、今までどれくらい黒檻で活動しているか、とかも分かる?」
「分かりますが、その情報はあまり当てにならないと思いますよ?」
「ん? 何でだ?」
「最初にお話ししましたが、探索者の中には黒の空間での探索を諦め、白の空間に閉じ籠っている方もいらっしゃいます。そういった方は長い時の中で精神に異常をきたす場合が多く、そのまま魂の抜け殻になってしまう事もあるのです。こうなると案内人の立場としては最悪ですね。探索者は死ぬ事もなく、白の空間で永遠と生きているだけの状態になるのですから。もう暇で暇で、案内人の方が死んでしまう勢いです!」
「お、おおう……?」
「まあ、そんな時の為にスリープモードがあるのですが――― って、ああ、すみません。話が脱線してしまいましたね。兎も角、中にはそういった方もいらっしゃいますので、生存期間は参考にならないのです」
「なるほどな。ところでゼラさん? 今、変な事口走りませんでした? スリープモードがどうこうとか」
「……ベクト、駆けつけ一杯」
「飲まんわ!」
タイミングが遅いし、露骨に話をずらしてるし!
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