六十 妖怪の正体は神様!? 天狗

 おやおやこれって神様解説じゃないんですか? いつから妖怪解説になったんですか?  なんて声が聞こえてきそうですが、今回は天狗のお話です。


 何故今回、天狗のお話をするかと言うと、修験道と天狗の繋がりが深く、これから様々な天狗が出てきます。

 一般的には妖怪と思われていますが、今回は修験道においての天狗を見ていきましょう!


【そもそも天狗ってなに?】

 河童、鬼についで天狗は名の知れ渡っている妖怪で、調子にのって威張っている人を「天狗になる」、誇らしい様を「鼻が高い」と言ったり、言葉としても使われています。

 また、『天狗が如く』という精力剤もあるので、とても身近な存在と言えます。


 さて、天狗に関する民間伝承は多くのこされており、天狗が人を拐っていく神隠しのお話。

 天狗が人間に贈り物を渡したお話。

 誰もいない山奥から天狗が談笑する声が聞こえてきたというお話。

 また仏法を守護する天狗もいれば、逆に仏法を邪魔する天狗もいます。


 有名な民話集『遠野物語』では天狗のエピソードが多く語られています。その反面、西尾○新氏の『化○語』には天狗は出てきませんね。自慢の長い鼻をひ○ぎさんによって、ホチキスで閉じられそうになり、逃げたのかもしれませんねw


 このように天狗には、良い天狗もいれば、悪い天狗もいるんですね。


 天狗のルーツは日本神話でも語られており、以前にもお話しましたが、猿田彦神さるたひこのかみがルーツであるという説や、須佐之男神すさのおのかみが吐き出した負の感情から生まれた天逆毎あまのざこという妖怪がルーツになっているものなど、様々な説があります。


 そのなかでも最も有力視されているのが、中国が起源とされる説です。


 流れ星は願い事が叶う幸運の象徴ですが、古代中国では不吉の象徴でした。

 その中でも地表近くまで落下してきて、特別明るい流れ星を『火球』といい、隕石といっても過言ではありません。

 この火球は空中で爆発して大きな音をだします。コントで金タライが落ちてきて頭に当たった時より、音が響くそうですw

 

 中国ではこの現象を「てんいぬが吠えた」と呼んでおり、天狗という妖怪が誕生したというものです。

 なので中国では顔が赤く、鼻が長い、私たちがよく知っている姿ではなく、犬や猫に似た動物の姿で描かれています。


 その後、日本に天狗が伝わるのですが、中国の天狗の姿は浸透せず、私たちがよく知っている姿になっていくのです。


【神様としての天狗】

 天狗と言えば山に出没し、逆に海や川などの水辺に現れたという話はありません。

 このように、山と繋がりが深く、山の神の化身といわれていました。


 古代日本人は自然崇拝をしてきました。これが、発展して神道になっていくのです。古代日本人は自然の中に神秘性を見いだしてきた訳です。


 現代は、交通機関充実し、ロープウェイで繋がっているので、だれでも簡単に登頂できるようになったので、冬になるとスキーに来た若者同士でゲレンデが溶けるくらいの熱い恋ができます。


 しかし、古代日本人とって山は鬱蒼うっそうと木々が生い茂っているので暗く、死霊の怨念が籠っていると信じていたので、恐ろしい場所でした。

 一方で山は水や動物などの獲物、木の実などを与えてくれる豊穣の源でもあったのです。

 このように山というのは、恐ろしい妖怪的なところ、豊かさを与えてくれる神様ような良い面がある、二面性を古代日本人は見いだしたのです。


 そんな山に入って修行をする修験道の山伏によって、現代まで伝わる天狗の姿は形成されていきました。

 そして山伏の布教活動によって天狗信仰はも広がっていきます。なので、天狗は山伏と同じ格好をしている訳です。決してコスプレではありませんw

 また、超人的な体力で山中を駆け巡る山伏が、麓の人々には天狗に見えたのかもしれません。

 こうして、修験道の発展と共に天狗を祭る社寺が増えていき、平安時代に全国に広がっていったと言われています。


 天狗と言っても、実は天狗には階級があります。一番偉い大天狗からはじまり、中天狗、小天狗とだんだん位が下がっていきます。

 まるで現代の会社組織みたいですが、人間に悪さをするのは位が低い天狗だと考えられます。


 天狗の組織の中でも大天狗と呼ばれる天狗が、修験道の神様として信仰の対象となっており、太郎坊や三尺坊など、名前がついている天狗もいます。

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