呪われし姫は聖騎士と共に奪われた未来を取り戻す~七つの聖剣が導く先の未来を創る物語~

天羽睦月

第1章 終わる世界

第1話 平和の終わり

 光歴九十年、第一次世界大戦が終わった。世界中の国々を巻き込んだ世界大戦は戦争を仕掛けた国が降伏をしたことにより終わりを迎えた。その国は北方大陸という大陸に存在し、北方大陸は資源に乏しい大陸であるために資源を求めて世界各国に戦争を仕掛けていたのであった。


 しかし、国内部による反乱が起きたために戦争を続けることが困難になり、渋々降伏をするしかなかったのである。


 北方大陸と国々と戦った神聖王国は中央大陸という場所に存在をしている。中央大陸は資源豊かであり、世界各国と交流をしている国々が多い大陸である。中央大陸と北方大陸は隣接しており、常に中央大陸は侵略の危険に晒されていた。

 

 そのため神聖王国はこれからの世界情勢を考え、中央大陸の国々と協議をした結果、中央大陸を一括に統べる国として、巨大な中央大陸の唯一の国として存在感を示すこととなった。


 北方大陸と世界との戦争が終わってから十年後の光歴百年、平和を謳歌していた新米騎士団員の主人公、篁伊織は十六歳になったばかりの少年である。


 伊織は耳と眉毛にかかる長さの短髪であり、弱い癖毛が髪型を自然と整えていた。身長は高い方であり、百七十五センチである。目鼻立ちがしっかりしているその顔は騎士団員としての使命に燃えている。


 新米騎士団員の伊織は現在、騎士団からの連絡により王宮に急いで向かっていた。国に敵国の侵入者が入ったとの知らせを受け、他の騎士が見つけられないと聞いてもしやと思い王宮に走っている。


「もしかして王宮に侵入者が入ったのでは? もしいたら王様たちが危ない! 早く行かないと!」


 伊織は白銀の甲冑を着ながら勢いよく町を走っている。神聖王国の王宮は首都である神都にあり、その中心に存在をしている。伊織は現在、神都の中央商店街を走っていた。


「もう少し! もう少しで着く!」


 伊織が中央商店街を走っていると、伊織の姿を見た商店街の人たちがまた走ってると笑っていた。


「今度は何をしでかしたんだー?」

「お前また怒られるのか? もっとおとなしくしとけよ!」


 商店街の人たちから笑い声と共に話しかけられた伊織は、何もしてないわと声を上げて返答をする。


「今急いでいるんだ! 今日はもう店を閉めて家に籠ってて!」


 伊織が走りながら商店街の人たちに言う。すると、商店街の人たちは何かあったのかと察した。町中に騎士団員が走り周り何かを探していることや、伊織が血相を変えて走っている姿を見て、この国に何かがあったのかと不安になっていた。


「あいつがあんなに血相を変えて走ってるんだ! きっと何かが起こる!」


 そう商店街の初老の男性が叫ぶと、商店街の店主たち全員が同意をして店を早めに閉めた。伊織はその商店街の人たちの行動を見ていないので、どうしたかなと心配をしていた。


「もうすぐ王宮だ! 早く到着しないと!」


 伊織は息を荒げながらさらに走る速度を上げた。伊織の着ている鎧は、重さ五キロ前後であるので、それを着て走っているので相当な疲労が襲ってくる。だがそれでも伊織はその重さの鎧を着ていても止まることなく王宮に向けて走り続ける。


「見えた! 王宮の入り口だ! え!? 入り口の前にいる警備の騎士がいない!?」


 王宮の入り口は鉄の五メートルの両開きの扉で閉められている。だが、伊織の目の前には警備をしている騎士がおらず、鉄の扉は半開きの状態であった。


 神聖王国の王宮は五階建てであり、国の建国時に象徴として存在感を出すためにとして一階部分を活用をしていた。二階から上が王宮として使用をしている。王宮は一目で見ると綺麗なお城と言える。


 頂上部分は国中を見渡せる展望台の機能をしており、王族は四階の執務室や三階の自室などで生活をしている。二階部分は執事やメイドなどのお世話係のための部屋が多数用意されている。


「扉が開いているのはおかしい……何か起きているのかもしれないな……」


 伊織は左の腰に付けている支給品の長剣を抜いて、その長剣を右手に持ち王宮内を走って行く。一階部分を伊織が探索し終えると、二階に繋がる階段の前に到着した。階段の前に騎士団員が二人血を流して倒れていた。一人の騎士団員は首筋を斬られており、既に事切れていた。もう一人の騎士団員は腹部を刺されているようで、呻き声を上げていた。


「だ、大丈夫ですか!? 俺も騎士団員です!」


 伊織はうつ伏せで倒れている若い男性騎士団員に駆け寄ると、若い男性騎士団員は、伊織の左腕を掴んだ。


「君も……騎士団員なのか……頼む、侵入者が上に……頼む……」

「分かりました! 俺が必ず助け……」


 伊織が言葉を言い終える前に、若い男性騎士団員は事切れてしまう。伊織は託された思いを無下にはしないと剣を掴む手に力を込めて、二階に上がっていく。二階には使用人たちの部屋が多くあり、廊下を見渡すと全ての部屋の扉が開かれていた。


「ここも通過した後か……すぐ三階に行こう!」


 伊織が右横にある三階への階段を上がろうとした瞬間、上階でないかが割れる音がした。


「な、なんだ!? 上で誰か戦っているのか!?」


 伊織は駆け出して階段を上る。三階では王族たちの自室がある階層なので、もしかしたらと伊織は感じていた。階段を上がり終え、三階の廊下を見渡すと、黒いフードを被り、黒いマントで身体を覆っている二人組に白銀の鎧を着て青白い長剣で戦っている茶色い髪色をした長髪の女性が一人で戦っていた。


「もしかして、夕凪団長補佐!?」


 伊織が名前を叫んだ女性は、二十歳でありながら騎士団長補佐にまで実力で上り詰めた女性として、国中で美人としても有名な女性である。茶色い髪色をした長髪をし、前髪は右の眉毛の上から分けられている。鋭い目つきをしているが、二重の目元とすっきりしている鼻筋、それに細い顎が人目を引く美人と言われている所以である。


 伊織は夕凪団長補佐を見ると、黒いフードを被っている二人組と戦っていた。夕凪団長補佐は長剣を駆使して二人組の侵入者と戦っていた。黒いフードの二人は、短剣と長剣と用いているので夕凪団長補佐は苦戦を強いられていた。


「小賢しい真似をして! これでもくらいなさい!」


 夕凪団長補佐は剣に炎の纏わせて黒いフードの二人組に振るっていく。黒いフードの二人は炎を纏わせた剣で連続で斬りかかってくる夕凪団長補佐に押されつつあった。


「こんな場所にまさか騎士団補佐がいるとはな……お前は先に第二王女を探せ!」


 年老いている声をしている男性と若い女性の声の二人組だと、二人が喋ったことで判明をした。夕凪団長補佐は階段側に立っていた伊織を見つけると、その女を捕まえてと叫んだ。


「お、俺ですか!? 分かりました!」


 伊織は剣を持つ手に力を籠めると、向かってくる黒いフードを被った女性に剣を上から下に振るった。しかし黒いフードの女性は伊織の攻撃を軽く身を捻ってかわしていく。


「そんな! 俺の攻撃が!」


 伊織が驚いていると、黒いフードの女性は弱すぎると呟いて伊織の腹部に掌底を当てた。掌底を受けた伊織は鎧を着ているのだが直に受けたようなダメージを感じていた。


「がふッ!? ぐぁぁ……」


 伊織は肺から空気を強制的に吐き出さされてしまい、苦しいと感じていた。


「鎧を着ているのに……」


 片膝を地面について苦しんでいると、黒いフードの女性は伊織の顔に膝蹴りをしようとした。


「これで終わりよ!」

「それでも俺は!」


 伊織は顔に迫る黒いフードの女性の右膝を両手で防ぐことが出来た。伊織はそのまま背後に吹き飛ぶと、長剣が黒いフードの女性の側にあることに気が付いた。


「掌底を受けた時に剣が!」


 そう伊織が叫ぶと、黒いフードの女性が伊織の長剣を掴むとその長剣で伊織に斬りかかってくる。


「ほら! ほら! 避けないと死んじゃうよ!」

「俺の剣を使うな!」


 伊織は何度か鎧を斬りつけられるも、傷を負うことはなかった。


「わざと外しているのか!?」

「分かっちゃった!? 感は鋭いんだね!」

「舐めるのもそれまでだ!」


 伊織は鎧の右腕で剣を防ぐと、黒いフードの女性の腹部に蹴りを入れようとする。だが伊織のその蹴りも読まれてしまい、黒いフードの女性は左に避けると共に伊織の背中に蹴りを入れた。


「がはッ! 背中に蹴りを……」


 伊織と黒いフードの女性の戦いを見ていた初老の声の黒いフードの男性は、黒いフードの女性に対していい加減にしろと叫ぶ。

その声を聞いた黒いフードの女性は分かったわよと言い、伊織に二度蹴りを浴びせてその場を離れた。


「その女を追いかけて! 王様たちをあなたが救うのよ!」


 伊織に叫んだ夕凪団長補佐は、初老の声の黒いフードの男性と尚も戦っている。夕凪団長補佐に言われた伊織は、態勢を整えて黒いフードの女性を追いかける。黒いフードの女性は真っすぐ走り、廊下の奥にある部屋に入ろうとしていた。伊織は黒いフードの女性に右腕に装着してた篭手を外して女性に投げつけた。


「痛い!? 篭手なんて投げないでよ!」

「うるさい! これ以上動くな!」

「そんな言葉は聞けないね!」


 黒いフードの女性はそう伊織に言うと、部屋の扉を開けた。すると、黒いフードの女性の目には一人の女性が映った。


「あんたが第二王女様? 一緒に来てもらうよ」


 黒いフードの女性の目に映った第二王女は、薄いピンク色の髪をした二重の目元が麗しい小顔の美少女であった。その第二王女は白いワンピースを着ており、身長は百六十センチ程度である。


「あなたは誰? もしかして侵入者?」


 第二王女は黒いフードの女性を見て眼を細めると、黒いフードの女性は大笑いをし始めた。


「お可愛いお人形の第二王女様が敵意を当ててるよ! お人形はお人形らしくおとなしく飾られてなよ!」


 黒いフードの女性が第二王女の腹部を殴って気絶させようとした瞬間、伊織が羽交い絞めにした。


「やらせない! 俺が守るんだ!」

「ちょっちょっと! いきなり抱きしめるなんて、変態!」

「変態って何だよ! お前は侵入者で、敵だろうに!」

「それでも私は女よ!? それなのに羽交い絞めは酷いわ!」


 黒いフードの女性は勢いよく身体を動かして、伊織の羽交い絞めを外すことに成功した。

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