星空の手紙

「今週のスケジュールはもちろん、山吹やまぶきさんが夜勤多めね。」

「はい。」

看護師長に言われて鵜呑みにする。


…自分のもう一つの仕事に文句があるから、自分に週に五回も夜勤を入れるんでしょ?

なんでなの?


そんなこともいえず、今週も夜勤で出勤する。

「もう、看護師やめたいよ……」

その言葉の後、真夜中の雨に爆弾を晴瀬はるせはつぶやく。

「なんで、看護師になったんだ。」

その爆弾は雨に濡れながら消えていった。




***



「星が普段より綺麗に見える。」

小さな丘の上にある、大学病院。


その病院にて夜勤で来ていた看護師、山吹晴瀬は自分の椅子に座りながらちょっとした休憩を取っていて、ナースステーションから見える夜空を見てそっと呟いた。


冬だからなのだろう、普段より星の数がずっと多く見える。


そして同時に満ちかけている月がほぼほぼ南中しそうな勢いになっている。


「星空、ね。」

夜空を見ていると晴瀬は何を思ったのか、自分の机の引き出しを開けて、とある封筒を出した。


その封筒は深い青色にキラキラとしたホログラムがたくさんついていて、夜空をモチーフにしたようだ。


差出人は夜空の封筒の差出人は九条くじょう糸音しおんと書かれている。


「糸音……」

その名を呟きながら晴瀬は中の手紙を取り出した。




***




晴瀬へ。

久しぶり。

僕が中学に上がるタイミングで転校してから早三年。

もう高校生だね。


なあ、晴瀬。

僕、なんでずっと晴瀬に手紙を送らなかったと思う?

……忙しいとかって思うのかな。

確かに忙しかった。

でも、ね。病気になっちゃった。

白血病。晴瀬は知ってるよね。

だって親族にいるって言ってたもんね。

…まさか、僕がとはね。


本当は晴瀬に頼りたかった。

でもさ、頼っちゃったら、自分が崩れるって思ってさ。

遅くなって、本当ごめん。

これからはよろしく。遅くてもいいから返事を頂戴。

糸音より。




***




今、糸音は最後の治療から4年以上が過ぎ、再発も無く、無事に他の大学病院で薬剤師をしている。

……そうだ、そうだよ。




***




糸音と晴瀬は二人でユニットを組んでネットで音楽を発信している。


「つぎの質問ですっ!なんで二人は音楽活動を始めたんですか?だって!」


とある日、ネットで質問を貰いながら放送をしていた二人。


そして、選んだ質問を糸音が読み上げた。


「それは、ね。」

「糸音と僕って、小学校は一緒だったけど、中学になってから糸音が引っ越したって話は知ってるよね。その時に同じアーティストさんが好きでさ。遠くでも、一緒の物を共有できることって凄いなって思って二人でもしてみようってなったんだよね。」


「そうだねぇ。」

そう言いながら糸音はその当時を思い出していた。


「あ、次。二人は普段看護師と薬剤師をしているそうですが、なんでその職業になったんですか?だって。」

次は晴瀬が質問を選んだようだ。


「糸音からね。」


「はーい。」

「まあ、単純だよ。昔から化学が好きだったから。というか、なんで晴瀬が看護師になったのか、僕も知らないわ。なんで?」


「糸音が病で苦しんでいた時に、助けてくれたのが看護師さんだったでしょ?僕も、糸音を救いながら他の人も救いたいって思ったの!」


誰にも見られないのに晴瀬は満面の笑みで答えた。


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ちなみにこの二人の性別は読者の皆様が選んでくだされば嬉しいです。

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