第5話 初代魔王、降臨!
「…え?」
どういうことなの?!
先程まで悲しい気持ちに浸っていたが、突然の出来事によって、そんなことを考える余裕はなくなっていた。
それというのも、今まで一度だって喋った事の無かった自分の使い魔が急に喋り出したこと、それはリリにとって、十分、驚くべき事だったのだ。
しかし、そんな様子のリリに構う事なく、白蛇は言葉を紡ぎ出す。
「礼を言おう。我をここから出してくれた者よ。」
「あ、あなたは誰なんですの?!」
上擦った声で、
白蛇はゆっくりと、こちらに振り向き、リリに説明する。
「我はゴーマ・ヴァイス・ミュラー。
「ほ、祠から出したって言われても……何が何だか、さっぱりわかりませんわ…。」
本当に、一体何者なんですの?
白蛇からは、とてつもない王者の風格を感じる。
しかし……
「と、魔王っぽく振る舞うのはここまでだ。」
白蛇は急にフランクな喋り方になった。
「き、急になんなのですの?」
リリはさらに、目の前の人物の事が分からなくなって来た。
リリは思わず、
代わりに、心の中で盛大にため息をつく。
はぁ……次から次に変な事ばかり起こる………呪われてるのかしら?
お払いにでも行こうか、………あったらの話だけど。
「一応権威とか、初代魔王なんだと分からせるために、毎回演技するのは疲れるものだな。」
「え、演技なんですの?!」
さっきまでのが全部演技だなんて、本当に同一人物なの?
これ以上考えたら、本当に訳が分からなくなりそうだと感じたリリは、取り敢えず、事のあらましを語ってもらうことにした。
「と、とにかく、もっとしっかりと説明してくださいまし!」
「大丈夫だ。ちゃんと全部説明する。」
白蛇はその長い体を丸めて、それから一つ、あくびをすると、細かく説明してくれた。
「まず最初に、君の使い魔の体と意識をのっとらせてもらった。」
「の、のっとる……。」
それって、今では失われた魔法じゃない?
なぜそんな魔法が使えるのか、リリは大体予想がついて来たが、なんだか信じたく無かった。
もしかして……
「で、我が誰かって言うと、初代魔王です。」
「やっぱりそうなのですわね?!」
こんなにふわふわした声のやつが、あの初代魔王だなんて!……ちょっと信じたくないのだけど‥。
現実逃避をしたい気持ちに駆られながら、リリはふと、付けていた腕時計を見る。
時刻はP.M.15:19
学校が終わった時間から、大体1時間近くたっていた。
「後、我はある存在によって封じ込められていたんだ。」
目の前の初代魔王の話は続く。
そして、初代魔王は、リリにこんなことを頼んできた。
「単刀直入にいうと、我が元の体を取り戻すのと、世界征服の手伝いをしてほしい。」
「せ、世界征服?!」
た、確かに魔王たる者、魔族を守る為にも人間界に進出するけど……。
「い、いくらなんでも、世界征服はどうなんですの?ほ、ほら!元凶を叩くとかでいいのではなくて?!」
「うーむ…それが出来たら一番なんだが…生憎敵は天使でね。」
「て、天使があなたを封印したんですの?」
天使は気に入った人間に加護を授け、世界のバランスを管理する者。
とは言っても、天使にだって感情はあるし、天界にはわがままな天使が多いと聞いているけれど……。
天使が初代魔王を封印するなんて………。
「条約に反するだなんて、いくら天使たちと言えど、信じられませんわ。」
私たち魔族と天使の間には、ある一つの条約がある。
『天使は魔族の魂を封印したり、
昔、初代魔王と初代天使長が決めたものだ。
条約に反すると、厳しい罰が与えられることになっている。
だからこそ、魔族は人間界に進出した時、人間たちを助けに来た天使に、誤って呪いをかけたりしないよう、最新の注意を払っている、
だというのに……
「それが事実なんだ。天使長のやつ、我が死んだと同時にその条約破って、我のこと封印したんだ。」
「そ、そんな…。」
「封印されてる間に頑張って情報収集したんだけど……天使たち、近い内に、魔族を滅ぼそうとしてるみたいだから。」
「酷すぎますわ!」
あまりにも酷い。一体私たち魔族が何をしたというの?
魔障が迫っているから…私たちだって生きていたいから、人間と闘っているだけなのに…。
「だから、君たちのためにも、我が天使長とお話する為にも、リリ、次期魔王である君に協力してもらいたい。」
「で、でも、
魔力も低い、家系魔法も使えない、オマケにユニーク魔法だって……。
出来損ないのリリなんかより、この魔王学園で、力の強い者を探したほうがいいに決まってる。
「その代わりと言っちゃなんだけど。」
初代魔王は、リリに話しかける。
それは、リリがもっとも必要としているものだった。
「君は父親を見返したいんだろ?だったら、我が力を分けてあげよう。その代わり、絶対に魔王になって、我に協力してくれ。」
初代魔王、ゴーマ・ヴァイス・ミュラーの言葉に、力を欲していたリリはつられてしまい、初代魔王に協力することにしたのだ。
「契約成立だな。今後、我のことはゴマちゃんと呼ぶがいい。」
「ご、ゴマちゃん?」
そんなに軽く、名前で呼んで大丈夫なの?
初代魔王のノリの軽さに、ちょっと心配になったリリであった。
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