追放された魔王の下剋上

Renard

第1話  魔王の娘、無能の烙印を押され追放される



「そ、そんな…!お父様!わたくしをお捨てになるのですか?!」


「お前の様な軟弱者では、魔王になるどころか、一端の魔族にも劣るわ!」



久しぶりにお父様から呼び出され、私は王の間に来ていた。


一体どうしたのだろうかと思っていたら、突然、お父様は私を罵倒した。


何を言われたのかわからず、私が再度尋ねると……



『家系魔法も継げぬ、魔力も低い、……おまけに、蛇などと言う下等な使い魔を召喚したお前に、次期魔王など夢のまた夢だ!!』



と言われてしまった。



「しかし…!わたくしだって頑張っているのです!たりない魔力を補う為、少量の魔力で大規模な魔法を使える様に……!」


「努力がなんだ、頑張っているからと言ってどうなのだ?!実際に成果が出なければ、それはただの言い訳にしか過ぎぬ!!!」



低い声が王の間に響き渡る。


全身を震わせるほどの声の圧に、私は尻込みしてしまう。


しかし、それ以上に、お父様が私を認めてくれないことに対して、私は腹が立っていた。



「ですが!わたくしとて魔王の娘!もう少し時間をかけさえすればきっと……!」


「ええい!黙れ黙れ!」



豪華な椅子の肘掛に、片方の拳を叩きつけ、お父様は更に大きな声で私を怒鳴りつける。



「その言い訳を何度使った?!いいや、それよりも……本当に努力しているのか?!」



お父様は続けて言い放つ



「我が血を引いていながら、お前はろくに魔法も使えぬ。それに……。」



額を抑え、お父様は長いため息を吐き出す。



「自身で作ったと言う、そのユニーク魔法……<慈悲の心>だと?!」



<慈悲の心>、それは私が4歳の頃から作り出したユニーク魔法。


魔王一族は、家系魔法とは別に、己のみが使う事の出来るユニーク魔法を作り出さなければならない。


ご先祖様たちは昔から、それはもう素晴らしい魔法を作り出してきた。


しかし、私のユニーク魔法は……。



「 ”慈悲の心を与える” 事が出来る魔法など、持っていても意味などないでは無いか?!しかも……効果時間も短く、力の強い物にはろくに効きもしない。」


「ですがお父様!それはわたくしが4歳の頃から作り上げた物で!」


「魔族に慈悲など不要!我らは自らの身を守る為にも、魔族が滅亡しない為にも、人間を支配しなければならない。……無論、逆らうものは殺すことになるのだ。」



そんな事は分かっている。私たちは生きる為に人間界へ進出するのだ。



「しかしどうだ……そのような能力、仮に家臣たちに使ってみよ。あっという間に形勢逆転、我らが皆殺しにされてしまう!」



ついにお父様は、私に背を向けた。


それが、もう私のことを見限ったのだと分かるまでに、時間は要らなかった。



「もう良い……貴様には失望した。……しかし。」



お父様は、いったん言葉を切り上げた後、冷たい色を宿した瞳で告げる。



「ここでお前を殺してしまえば、これまで築き上げたイメージが崩れてしまう……。」



なんと、目の前のお父様は、自らの娘を護りたいのではなく、自身の名声に傷が入る事に悩んでいるのだ!



「仕方があるまい……貴様を予定通り、魔王学園サタナスへと送る事にしよう。」



転送魔法陣が私の足元に浮かび上がると同時に、お父様は語る。



「精々優秀な魔王候補を見つけて帰ってこい。そうすれば、お前を雑用係として位は使ってやろう。」



こうして、私はお父様から見捨てられ、厄介払いされるかの如く、魔王学校へと追いやられた。



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