016 おもいの

 …――エロ同人誌が悪いとは言わない。


 それは趣味の世界であるから、俺にはなんとも言えない。


 でもだな。でもなんだ。


 なんの話か。


 俺は宅配人。


 重たい荷物を毎日、運び続けている。特に今のような夏のこの時期はお中元というものがあり、滅茶苦茶忙しかったりする。そんな中、配達した信じられないお中元。いや、お中元と言ってもいいものなのだろうか。そうとしか思えないブツ。


 それこそが、件のエロ同人誌なわけだ。


 お中元が、エロ同人誌って受取人はどんなやつなんだよとか邪推もした。もちろんエロ同人誌を表現の自由だとかいって擁護する気もないし、逆に道徳観念を振りかざして糾弾する気もない。俺の知らない世界だし、読んだ事もないからな。


 しかしエロ同人誌がお中元はないわぁ。


 本当にあり得んだろう。


 お中元だよ?


 しかもだよ?


 お中元としてエロ同人誌を配達した先が、国宝を抱える有名なお寺だったわけだ。


 つまり住職にエロ同人誌を渡したのだ。


 しかも、かなりマニアックなものをだ。


 うむむと思ってしまう俺が間違っているのか、それも俺には分からないわけだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る