013 健康に向かって走れ

 …――俺は、持病がなく健康なのが自慢。


 ただし、


 妻に、持病などないと力説すると、決まって眉をしかめ、訝しむ。


 超健康体の俺が羨ましいのかとも思える。


 しかし、


 羨ましいのかと聞くと口を尖らせて違うわ、と不満を露わにする。


 なんだろうとは思うが気にしたら負けだ。


 兎に角、


 俺は、がん検診などの検診は必ず受ける。タバコは吸わない。酒も飲まない。暴飲暴食もしない。夜は早く寝て朝早く起きる。起きたらラジオ体操。そのあとジョギング。そして、言うまでもないが、ストレスフリーな生活を心がけている。


 せっかくの健康生活が、ストレスに冒されてしまったら、すわ本末転倒だからな。


 このように俺は健康には人一倍、気をつけているわけだ。うむっ。


 その甲斐あって、常に健康体そのものだ。


 無論、遺伝性の病気も気にしていて、過去に病気をした先祖はいないか細やかに調べあげた。結果、我が一族は、皆、超健康体の集まりだという事も分った。健康という一点において、もはや、どこにも死角はないだろう。そこまでしたのだ。


 俺には持病はないッ、と強く断言できる。


 それでも怪訝そうな妻。


 なぜだ?


 こんなにも健康なのに。


 そんな俺の趣味は競馬。


 ストレスフリーを心がけている俺は、今度、ボーナスが出たら、全額、お馬さんに突っ込むつもりだ。しかし、妻は言う。家計が苦しいと。知った事か。ストレスフリー優先だ。俺が稼いだカネだし、俺の好きに使う。文句は言わせない。ヒヒィン。


 妻は、また不満げに言う。口を尖らせて。


「それ、もはや病気だから。持病だからね」


 と……。

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