010 北風と太陽
…――TVは阿呆。心底、そう思う。どうすればいいのだと逆に聞きたくもなる。
俺は静かにTVを切る。
ようやく静かになって、ため息を一つ。
今は夏真っ盛り。蝉は発狂しているのか大合唱で、外に出れば陽射しが暑く肌を焦がす。とにもかくにも暑い。暑すぎてエアコンのある部屋から出られない。むしろエアコンの中で扇風機にあたりたい気分にもかられる。それほどまでに暑いのだ。
そんな中、スマホの呼び出し音が、けたたましく鳴り響く。
せっかくTVを切って静かになったのに……、五月蝿いぞ。
ソレすらも暑く感じる。
「元気? 部屋? あんまりエアコンにあたらない方がいいわよ。TVでやってた」
付き合っている彼女だ。このクソ暑い中、また一段と鬱陶しい事を言ってくれる。TVは阿呆だと言ってるだろうが。ああ、そうか、言ってないか。ともかく俺だって、それくらいは理解している。いわゆる冷房病ってヤツだろうが。知ってる。
TVで五月蝿いくらいに連日喧伝しているからな。うむっ。
俺は耳を両手でふさぎ、がぶりを振る。
スマホの通話をスピーカーにして、だ。
口やかましくアレコレと彼女が煩わしいので、聞くフリをして窓から外を眺める。真っ青な空に真っ白な入道雲が浮かんでいる。真夏だ。間違いなく真夏。風流な、それですら、げんなりするほどの暑さを感じてしまうのは、やはり真夏のせいだ。
おもむろにエアコンの設定温度を一度下げてみるが、まったく焼け石に水のよう。
なんなんだよ。本当に。
暑いぜ。
暑すぎる。ちくしょう。
「……だからエアコンのある部屋で不健康な生活を送るより、いい天気なんだからプールにでも行って肌を焼かない? 日光浴よ。きっと気持ちがいいわよ。ねぇ?」
「悪いけど遠慮しておく」
「なんでよ。せっかくの日本晴れなのに」
TVをつける。阿呆が役に立つときだ。
電話口の彼女にも聞こえるよう、一気に音量を上げてやる。
…――とても暑い日が続くので、エアコンがある部屋で熱中症を予防して下さい。
まあ、そういう事だな。
冷房病と熱中症、そのどちらがいいかという話でしかない。
うむっ。
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