第2話 乱導 竜という男
胸元の開いた赤いドレスを着た美女が俺に問うた。
辺境の地で、金儲けに命を掛けられるのか?と。
「やる、阿漕な商売だろうと、遠い星に追放されようとも。俺は俺の国を取り戻し、復讐するためなら、闇の商人だろうと、死の商人だってなってやる!俺は仮想通貨で兆利人を目指す!!」
うん?またあの夢か。何を粋がっていたのか俺は?だが、不思議で綺麗な女人だったな、確か、アン?とか言ってたな。まあ復讐は兎も角、あの人の為だったら何でもやれそうだ。
俺は、乱導 竜、家族はいない。両親は、数年前に交通事故で亡くなった。その保険金と父が遊びで持っていた仮想通貨を売買した利益で生活している。
容姿は、女の子にキャー、キャー言われるほどでもない。まあ、普通だろう。
にゃー、どこからともなく黒い猫が現れて、朝食を食っている俺の膝に飛び乗った。ふっ、そう言えば家族がいたな。ネコ、体毛全体がほぼ真黒だが何故かれっきとしたシャム猫だ。
「ネコ、食うか?」
俺は、サンドイッチをネコの前に出してやったが見向きもしないで膝の上で丸くなって目を閉じた。
「まあ、自立するのはいいことだよな。ネコ、お前外で何喰ってんだ?うん、ビーストコイン(BST)が下がってるな、五BSTくらい買っておくか」
俺は、スマフォを操作すると日本円で約五百万円の買い注文を出した。すぐ約定出来たようで、取引口座の日本円が減った代わりに、五BSTが増えた。
良い商いができた感じがする。早くビーストコイン上がってくれよ!
ビーストコインというのは、仮想通貨(海外では暗号通貨と呼ぶのが一般的)と呼ばれるコンピュータ上の通貨(お金)の大元になっているものだ。十年くらい前にS.Nと呼ばれる人が開発したと言われている。
まあ、簡単に言えば現金の不便さ(重いとか、偽造されるとか、劣化する、運用するのにコストが高い)を無くした通貨だ。
最初は、胡散臭い、詐欺とか言われていたが、お好み焼き1枚を1万BSTで購入したのをきっかけに使われだして、今では世界中で使われている。SFの読者への説明としては、「あのクレジットだよ」で済んでしまうのを長々と説明して疲れた。
なんか、腹減ったな?お? いつの間にか、昼飯時か。面倒だしコンビニでも行って来るか。
「お弁当、温めますか?」
「いや、いいです」
「九百円になります」
「はい」
ふ、コンビニのお姉さんに惚れられるイベントはまだか?
「おい、金を出せ!は、早くしろ!!」
「なんだ、昼間にコンビニ強盗って?碌に金なんかある訳無いだろ。止めとけ」
顔にストッキングを被せた男が、銃を持って威嚇している。
コンビニのお姉さんは涙目で救いを俺に求めてきた。
き、来た!これが、イベントフラグって奴か?俺の時代が、すぐそこに。
「そんな、モデルガンで強盗できるほど、世の中甘くないぞ!」
俺はカッコ付けて、強盗から銃を奪おうとして、もみ合いになり・・・ バーン!
な、何で、そこだけ本物なんだ。至近距離で撃たれた為耳鳴りがしたが、すぐに気にならなくなった。
「被疑者は確保しました。害者は、乱導 竜、17才、男性です。弁当を買いに来て、強盗に出くわしたようです。どうも害者は、外側がプラスチック製の銃だったのでモデルガンと誤認していたようですね。ええ特に、被疑者との関係はありません。近くのマンションに住んでいたようです」
「・・・・・・了解」
警察無線から、感情の無い声のやりとりが響いていた。
俺は、コンビニ強盗に射殺された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます