スランプの国はいつも曇り空
詩月みれん
更新直後
最新話をアップロードして高揚感に襲われたユキはスマホを放り出して家中を歩き回った。
今回のストーリーは思わぬ展開で、読者もびっくりしただろう。
今までブックマークもいいねも貰ったことがないが、読んでくれたことがある人は、おそらくいるはずだ。35PVもあるんだから、10人くらいは。
ブックマークには何かが足りなかったか、あるいはシャイで何も反応出来ない人なのだろうか。
そんな人が、初めてのいいねをくれたとしたら。そう想像すると落ち着かなかった。
ユキは家を十周したところでスマホを拾い上げ、それでもまだアクセスチェックはしないまま散歩に出かけた。
コンビニで、今回の話を書き上げた自分祝いにアイスもなかを買った。店員の「ありがとうございましたー」が、自分の作品に向けられているようにも思えた。
あまり浮かれすぎてもいけない。まだ一時間も経っていない。ユキはアイスの甘さに集中して家に向かった。
日差しが眩しいことが心地いい。いい汗が流れる。創作は運動になる。
家に戻ったユキはアイスの袋をゴミ箱に捨てようとした手にスマホを握っていたことに気づいた。
そういえばスマホの操作は支払いにしか使わなかった。今はどんな情報よりも、自分の創作に興味がある。
もっというと、……、評価。
ユキは自分の欲望が頭をもたげたことに気づいた。
いや、まだまだだ。評価は来てない。せいぜい…同じくらいの時間に投稿した人が、ライバルのチェックに少しやってきたのと、
最新作からランダムに読む人が来たくらい……。
35から40くらいにはなっているだろうか。いやいや、まだ2、3くらい……。
ユキはとうとう我慢出来なくなって、アクセスページを開いてしまった。
「あれ……」
35PV。
投稿前と同じだった。何も変わっていなかった。開かれすらしていない。
ユキは急に自分の存在すら無くなったような気がして、ベッドに倒れ込み、泣いた。
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