XPσF

キクイチ

コンティニューでエラー

 死後の世界……天界。

 女神の前に1人の青年が立っている。


「リヒト。

 ようこそ天界へ。

 私は女神のアストレアといいます。

 不慮の事故に見舞われ命を落とした、あなたを、新たな人生へと誘います。

 しかしながら、元の世界にはもう戻れません。

 なので、別の世界に転移して、続きの人生を歩んでいただくことになります。

 生命の因果律に従い、導き出された転移先は、剣と魔法の世界カペラ。

 そこでヒューマンの冒険者として新たな人生を歩んでいただくことになります。

 特殊スキルと装備を充実させておきました。

 装備や日用品も潤沢に用意してあります。旅に困ることはないでしょう。

 安心して、残りの人生を歩んでください。

 これより転移を執行します」


 リヒトの周辺に魔法陣が広がる。


「それでは良い旅……ハ、ハ、ハックシュ」


 女神がくしゃみをすると、魔法陣が歪んだ、


 そして、リヒトは光に包まれ転移した……。



……



 古典的なファンタジー世界とはまったく毛色の違う、剣と魔法の世界カペラ。


 女ローグ、マリカは、冒険者任務を終え、帰路についていた。


 低等級冒険者のマリカは、まだ簡単な任務しかできず、バイトと兼業しながら生計を立てていた。

 

 等級、性別、身分などなど、差別の横行する社会だ。

 いずれも持ちあせてない彼女にとっては、辛い生活がづついていた。



 そんな時だった、自分の周囲が光に包まれたのだ。


 そして、何かにぶつかる感覚と共に気を失った。



 マリカは目を覚ます。


 そこには青年が倒れていた。

 その傍らには、いかにも高価そうな重装備と剣が落ちていた。


 転移者だ。


 マリカはそう直感した。


 強力なスキルや装備を与えられて、この世界へ転送されてくる、超エリートだ。


 彼らの装備は彼らにしか身に付けられない。

 他の者にとっては何の能力も発揮されない異常に重い枷だ。

 特殊な材質らしく、装着者の体型に合わせて自在に変形する優れものだ。

 しかし、他のものには価値がないため、売っても大した金にはならなかった。


 試しに剣を手にとってみる。


 想像以上に軽かった。

 しかも鞘から抜けた。

 近くの大きな岩に剣を当ててみると、剣の重さだけで、ストンと切り裂いた。


 これなら使える。

 

 そう思ったマリカは、装備も確認した。

 同様に軽く自分の体にフィットした。


 マリカは、ふと違和感を覚えた。


 股間に異物がある感じだった。


 

 青年はまだ気を失っていたので、気にせず、自分の股間を確信した。


 ……男性のアレがついていた。女性のそれは跡形もなく消えていた。


 驚きながら青年をみる。

 男性にしてはヒップが妙に大きい気がした。


 起こさないように、服を脱がして、青年の股間を確認した。

 男性のアレはなく、女性のソレがついていた。

 

 上半身も脱がして確認すると上半身は男性で下半身は女性のようだった。


 脱がした服を調べると、青年の冒険者カードが出てきた。

 

 そこには転移者特有のえげつないほど強力なスキルと初期ステータスが記されていた。

 名前はリヒト。性別は男性だった。


 リヒトの冒険者カードの本人確認機能を使用すると何故か起動してしまった。

 自分の冒険者カードを出し、本人確認機能を使用しても反応しなくなっていた。


 試しに、眠っている青年に自分のカードの本人確認機能を使用したら起動してしまった。


 マリカは、リヒトの特殊スキルを使用してみる。

 見事に発動した。


 マリカは喜んだ。

 チャンスが舞い込んだのだ。

 

 早速、マリカは裸になり、青年が来ていた服を着込んで、装備も全て装着した。


 青年にはマリカが来てきた下着や服を着せ、装備も装着してやった。

 何故か靴のサイズまでもがぴったりだった。


 身ぐるみ剥がして売り捌くこともできたが、最大限のお礼をしてあげたつもりだ。


 マリカは、このまま立ち去ろうとしてふと思った。


 冒険者ギルドにどう説明すべきだろうと。


 試しに、青年を担ぎ上げてみた。


 想像以上に軽く感じ、おどろいた。


 マリカはリヒトのステータスも引き継いでしまったらしい。


 どうせ元に戻る方法なんてないだろうとおもい、マリカはリヒトをかついで、冒険者ギルドに向かった。



……


 

 冒険者カードは絶対的な身分証だ。


 奪われても召喚してすぐに取り戻せるのだ。


 マリカが冒険者カードを召喚すると、リヒトのカードが召喚された。


 マリカはもはやリヒトなのだ。


 マリカは、冒険者ギルドに到着すると、マリカの任務報告を行うとともに、マリカとリヒトの現状について相談した。


 奥の部屋に通され、ギルド長まできて、状況確認を行った。


 その頃には、リヒトは目を覚まし、ギルドの受付係から説明を受け困惑していた。


 ギルド長は困惑しながら言う。


「転移者殿にはかわいそうだが、マリカ殿としか身元が証明できない以上、マリカ殿として生きてもらうしかないだろうな」


「じゃ、私はリヒトっていう男性として生きるってことですか?」


「そうだな、下半身は男性なのだし、胸はサラシでも撒いておけば何とかなるだろ?

 君はリヒトと言う名の男性冒険者としてしか身元を証明できないのだから。

 だが、こうなってしまった以上は、君が責任をもって〝マリカ〟殿の面倒を見てあげて欲しい」


「え? 私が面倒見るの?」


「君は〝彼女〟からそれ以上の法外な報酬を得ているだろ?」


「それはそうだけど……でも手持ちがないよ?」


「本当か? 転移者にはそれなりの路銀ろぎんが提供されるはずだが?

 異空間バッグは確認したのか?」


 マリカは自分の異空間バッグを確認する?


「すごっ!? なにこれ? 転移者て最初からこんなにお金持ちなの?」


「どうやら異空間バッグも交換されていたようだな。

 なら問題ないだろう?

 面倒を見てやってくれ。

 むりなら、金は返してやって欲しい」


「……面倒見るよ」


「よろしく頼む、〝リヒト〟殿。

 〝マリカ〟殿を見捨てた場合は、それ相応の報いを受けてもらう。

 追放だけでは済まないからな」


「わかってる。

 じゃ、行くよ〝マリカ〟」


 〝リヒト〟は、〝マリカ〟を促すように連れて冒険者ギルドを去った。



 リヒトは、マリカを伴って、準備中の高級酒場に入った。

 リヒトは、店主に話しかける。


「マーサ、ちょっといい?」


「あらマリカ、こんな時間にどうしたの?」


「いまはリヒトって名前に何かわったんだ。

 これからはそう呼んで?」


「そうなんだ、その子は?」


「この子は今日から私の代わりにマリカって名前の女の子になったの。

 お店で使い物になる?」


「かわいい顔してるわね?

 でも、胸はないのね……髪も短いし。

 これから育つの?

 んー……当面は裏方仕事かな」


「じゃ、仕込んであげて。

 私は仕事に行くから。

 マリカ、このお店で一人前になるまでは、冒険者の仕事はさせないからね?」


「……はい」


 マーサがリヒトに言う。

「もうお店でないの?」


「うん。男になったからね」


「あら……そうなの?

 そんな不思議なこともあるのね?」


「うん、しかも一気に銅等級になったよ。

 これで専業で冒険者ができる」


「おめでと、リヒトくん。

 任務頑張ってね。

 マリカのことは私に任せてね。

 銅等級か……よかったらお客としてきて頂戴?」


「ん。考えとく」


 リヒトはマリカをおいて去って行った。


 マーサはマリカを別の建物に案内した。

 宿屋に似た感じの建物だった。


 マーサは一室の扉を開け、言う。


「フィアナ、ちょっときてくれる?」


 部屋の奥から美人の女性が一人、やってきた。


「どうしたの?」


「この子、マリカっていうのだけどこれから預かることになったから、一人前に仕込んであげて?」


「マリカ? 名前被っちゃってるね?」


「そっちのマリカは、もうお店でないから。

 そのかわりにこの子を連れてきてくれたの」


「ふーん、わかった。よろしくマリカ」


「……よろしくおねがします」


 マーサは去ってゆく。


「へー、男みたいな声してるんだ。

 もうちょっと高めの声だしなよ?

 発声練習からしよっか?」


 マリカは発声練習をさせられた。


「今くらいの感じを維持できるようにしてね。

 毎日練習しなよ?」


「じゃ、部屋案内するね、この部屋で、私と同居だから」


 フィアナはマリカに部屋を案内する。


「ベッドはここ使って。私が上ね」


 フィアナはマリカのベッドに女性向けの衣類を並べてゆく。


「冒険者稼業は休業なのでしょ?

 とりあえず、これに着替えちゃって、さ、早く」


 急かされて、マリカは服を着替える。

 恥ずかしがっている暇はなかった。


「じゃ、掃除始めるから手伝って。

 今日は一緒にやってあげるけど、明日からは一人でやってね」


 フィアナと一緒に掃除をして回った。

 

「明日は朝、洗濯だよ。明日だけ一緒にやるから覚えてね。

 発声練習も忘れずに。そんな声じゃお店に出せないよ」


「はい……」



 マリカはフィアナから様々なことをレクチャーされた。

 お化粧の仕方や作法、男の喜ばせ方までもだ。

 そして、その日から毎晩、フィアナは股間にディルドを装着してマリカを抱いた。



 半月ほどすると、マリカの容貌はすっかり女性的に変化した。


 マーサとフィアナは驚いていた。

 一番驚いていたのはマリカ本人だ。


 この短期間で上半身が大幅に変化して、胸は大きく、体は華奢に、くびれができて、顔つきや声まで女性的になったのだ。

  

 久しぶりに顔を出したリヒトの容貌も変わり、すっかりイケメンになっていた。


「なんだマリカだったの?

 すっかり可愛くなったね。

 店の仕事は覚えた?」


「まだ裏方の仕事だけです……」

 

 マーサが言う。

「今日からお店に出すことにしたよ。

 リヒトくん、すっかり男前になったね?

 しかも、随分羽振りが良さそうじゃない?

 よかったらマリカの最初の客になってあげてよ」


「いいよ。

 少し余裕ができたから。

 それに男としての経験もそろそろ積まないとだしね。

 でもマリカにできるの?」


「練習は毎日させてるよ。

 筋がいいのよ、これが。

 向いてるよこの仕事に」


「なら楽しみだ。

 今夜の開店時間にまた来るよ」


「まってるよ。よろしくね」



 マリカは上客向けの寝室の掃除をさせられられた。

 自分が使用する寝室は自分が掃除するのがきまりだった。


 銅等級の上客リヒトをもてなす準備はすでに始まっていたのだ。


 急かさせるようにドレスをきて、お化粧をさせられる。

 専属の美容師が来て、女性たちの髪型を整えてゆく。


 マリカも髪を整えられ、妖艶な雰囲気に生まれ変わる。


 日が落ちると、女性たちは店の外で男を待つ。


 リヒトが姿を表すと、マーサが駆け寄り、マリカを呼び出す。

 マリカは、丁寧に挨拶して、リヒトに腕を絡ませ、店内に案内する。

 指定席にリヒトを案内して、早速、お酒を出す。

 

 リヒトは、マリカの腰に手を回し、そばに寄せ、真上からマリカの胸元を眺める。

 

 マリカは、恥ずかしさで赤面しつつ、もてなしを続ける。


「マリカ、こっちの生活には慣れた?」


「さすがに慣れました。

 皆さんもよくしてくれています」


「マーサさんが筋がいいって褒めてたよ」


「できれば、冒険者として身を立てられるようになりたいです」


「この仕事嫌?」


「その……いまはこの仕事しかできないので仕方なくやってます」


「男に何回抱かれた?」


「マーサさんの立ち合いで、2度」


「初々しいね、まだ数えられるんだ。

 そのうち何度抱かれたかなんて忘れちゃうものだからね」


「いつから冒険者をさせていただけるのですか?」


「マーサさんのところで育ててもらった分を返してからだね。

 半月頑張ってみなよ。

 そしたら、冒険者の手ほどきを隔週でしてあげる」


「隔週ですか?」


「うん、今のマリカじゃ大した稼ぎはあげられないからね。

 半分は今の仕事をしないと生計は立てられないよ」


「私のものになるはずだった路銀ろぎんを返していただけませんか?」


「だめ、あれは俺の。

 見捨てて逃げなかっただけでもありがたいと思いなよ。

 いまごろ盗賊かゴブリンあたりに連れ去られて回されてたと思うよ?

 冒険者ギルドに訴えても同じこと言われるだけだよ」


「……わかりました」


「じゃ、寝室案内して」


「はい……」


 マリカは寝室で、リヒトに何度も貫かれた。

 リヒトは晴々とした様子で、マリカに腕枕してあげた。


「男って最高。

 女として生き抜くのはほんと大変だったよ。

 権力者の御令嬢とかなら、別だろうけど。

 でも、あれは籠の鳥にようなものだしね。

 異界はもっと平等なの?」


「はい、男性社会ではありましたけど、徐々に平等化が進んでいました」


「うらやましいね。

 この世界は違うから、よく覚えておきなよ。

 生半可な気持ちじゃ、女性冒険者として名をあげることなんて不可能に近いからね?」


「わかりました」


「マリカのこと気に入った。

 今から、俺の女として振る舞っていいよ。

 俺についてくれば、それなりに等級も上がるから。

 でも、俺に従わないなら切るからね?」


「……わかりました、よろしくお願いします」


「さま付けしてね?」


「わかりました、リヒトさま」


「うん、いい気分。

 明日も指名してやるから安心しな」


「ありがとうございます」


「じゃ、もっと楽しませてよ」


 リヒトは夜が明けるまで、マリカを抱いた。



「いってらいしゃいませ、リヒトさま」


 早朝、マリカは店の前でリヒトを見送った。





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