SCAR

夕凪 鱗

プロローグ

 どうして、こんなことになったのだろう?

国会議事堂が見える。


何がいけなかったんだろう?

特殊部隊が銃を構えているのが見える。


ただ、失った家族や友人の命が尊くて…

何の武器も持たない一般人たちがいる。


同じ哀しみを、もう誰にも背負わせたくなかっただけなのに…

特殊部隊の隊長の合図で、銃は一般人に向け発砲される。


ただ、それだけなのに…

武器を持たない一般人たちは、放たれた銃弾に血まみれになりながら倒れていく。


そんな想いを持つことさえ許されないのか?

一面、一般人の死体で溢れ血の海になる。


この国では人の命は、こんなにも軽いのか?


死体の海の中に、アクアマリンのペンダントをした若い女性の死体がある。

その見開かれた瞳から零れた涙は、頬を伝っていた。

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