第5話 会計に好意を抱かれてもなぁ...
先輩と別れて10分近く経つと
【ムーンマルクカフェ】
といった看板が視界に入る。
このカフェ店こそ俺のアルバイト先だ。
全国展開するチェーン店でインスタ映えなど流行の中心にあるといっても過言ではない店だ。
早速俺はスタッフ用入口からスタッフルームへと入り、仕事着に着替える。
いかにもお洒落な人が着そうなシャレた制服だ。
あまり俺には似合わないと思う・・・。
着替え終わり、早速仕事場へと赴く。
「おはようございます」
仕事の邪魔にならない程度の声で挨拶をして入る。
ちなみにこの仕事に限らずだか朝夜関係なく挨拶は「おはようございます」らしい。
「ま、政宗か。早速だがカウンターに入ってくれ」
こう言って俺に指示を出すのは大学2年生のバイトの先輩、宮野 彩さんだ。
今日も今日とて栗色のサイドテールが似合っている。
少し厳しいが仕事にも熱心で実は優しいいい人だ。
「了解しました」
俺はそう返事を返してカウンターへと入る。
俺が働いているこのカフェ店はセルフオーダーといって注文をカウンターでとり、お客様が自分の席まで買った品物を運ぶといった形式になっている。
そして基本俺はカウンターでお客様のオーダーをとり、会計をする仕事を任されている。
要するにレジ係だ。
手が空いていたりすると飲み物や食べ物の用意をしたりするが大体はレジ係だ。
どうも俺は会計に好かれているらしい。
なぜ俺がレジ係なのかと店長に聞いたことがある。
それに対して返ってきた答えが俺がカウンターに入り、オーダーを取ると売上が倍近くになるらしい。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
俺は学校でも見せない最上級の笑みを顔に貼り付け、女性客の方へと尋ねる。
貼り付けとは失礼だったかもしれない。
でも、俺は笑顔を作ることが苦手だ。
自然に笑うことは出来るが作ろうとすると話が変わってくる。
そのため、接客する時の笑顔は少しオーバーにするようにしている。
「〜〜〜ッ!!え、えーと、カフェオレのMを1つお願いします...」
「かしこまりました。ご注文は以上でこざいますか?」
「は、はい...」
「では、横の方でお待ちくださいませ」
その女性客の人は顔を赤めながらドリンクが出来上がるまでレジの横の方で待つ。
他のオーダーを取っている間もすごく視線を感じるが、無視をする。
なぜか俺が女性の接客をすると限ってみんな顔を赤らめる。
俺の周りには熱にでもさせるフィールドでもあるのではないだろうか?
みんな病院へ行こう。
「おい、政宗。きちんと仕事に集中しろ。女性の方に鼻の下を伸ばすな」
「伸ばしてなんかいないんですが...。すいません」
そして決まって女性客の接客をしていると決まって彩さんが注意をしてくる。
俺、鼻の下なんて伸ばしてなんかないよ?
ホントだよ?
多分...。
それから淡々ともうほんとに淡々と接客をしていく。
たまに電話番号が書かれた紙を渡されることもあるのだが変なツボとかイルカの絵とかを買わされそうで恐いので、すぐにゴミ箱へポイだ。
俺はそんな無駄な金を使うほど金持ちじゃないんだ!!
そして気づけばあっという間に8時だ。
さて、そろそろ帰ろうかな。
客足がちょうど少なくなったところでスタッフルームへと移動する。
「すいません。時間なので今日はここまででお願いします」
「あ、はーい!政宗くんありがとねー!」
オーナーに挨拶をし、スタッフルームの扉に手をかけようとした時、
「ちょ、ちょっと待ってくれ政宗。私も今日はここまでだがら一緒に帰らないか?」
「今からですか?」
「あ、あぁ。ダメか?」
「全然大丈夫ですよ。一緒に帰りましょう」
「そ、そうか!じゃあ着替えてくるから待っててくれ!」
そう言うと、走って女性用の更衣室へと入っていく。
なんか今日は一緒に帰ること多いな。
なんだ?
男と一緒だと安くなるものでもあるのか?
カップル限定みたいな。
俺はそんなアホな思考を張り巡らせ彩さんを待つことにする。
──────柿永 翔吾side──────
はぁ、今日も今日とて大変だった。
いつも通りに会長と政宗くんをくっつけるように手助けをした。
でも、会長は恥ずかしいのかプライドが邪魔をしているのか分からないがなにかと距離が縮まらない。
だから僕と山口さんで提案をした。
今頃会長は政宗くんとデートの約束をしていることだろう。
うまくいっているといいんだが。
「はぁ。僕もああいうピュアな恋愛がしてみたいなぁ」
会長のあんなザ・恋する乙女みたいな顔を毎日拝んでいるとこういう気持ちにだってなる。
僕は人並み程度にはモテる。
2桁程度の数なら告白されたことだってある。
ただどうも心がときめかない。
だから、彼女いない歴=年齢なのだ。
「あぁ、彼女ほしいなぁ」
この曇った心を癒すため、カフェにでも寄ることにしよう。
あまーいカフェオレでも飲んだら心が癒されることだろう。
コーヒーもいいかもしれない。
僕は目の前の有名カフェチェーン店へと入る。
その店は雰囲気がとても好きだった。
すごく和むというか落ち着くような感じがした。
居心地がいいとはまさにこのことだった。
「お客様、ご注文はお決まりですか?」
店員さんの声で現実に引き戻される。
次は僕だったか。
「あ、すいません。えーとコーヒーのMを...」
僕は不意に店員さんの顔を見る。
そのとき、身体中に雷が走った。
栗色のサイドテール。
パッチリとした大きな目。
整った鼻と口。
そしてホワホワという雰囲気がすごく似合う店員さんだった。
僕は思わず見とれてしまった。
ここまで美しい女性を見たことがなかった。
言葉が出なかった。
いや、声すらも出なかった。
「あ、あのお客様?ご注文はお決まりですか?」
「ハッ!!す、すいません!コーヒーのMを1つで!」
「かしこまりました。横の方でお待ちください」
僕は思考停止した状態でスライドする。
なんなんだあの女神は。
僕はいつから神界にいたのだろうか。
いや、ここが神界なんだ。
おぉー神よ。
「あのぉ、お客様。ご注文されていたコーヒーです」
「ハッ!すいません!ありがとうございます!」
僕は恥ずかしさでその場を全速力で後にする。
その時、彼女のネームプレートを目にする。
僕は気づいた。
これが一目惚れというものなのか。
初めてのことで驚いている。
恋というものはこんなにもうれしくてウキウキするのか。
「宮野 彩さんかぁ。また会いたいなぁ」
気がつけばコーヒーのことを忘れていた。
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アルバイトなんてしたことないからわからない!
そこは許してください!
アルバイトについて書くのむっず!!
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