現実でハーレムを作るなんてありえないはずいなのに。

坂本 狼

第1話 夢じゃないのか

中学生になった頃からラノベや漫画に興味を持ち出した。

でも俺はそんなラノベや恋愛漫画に出てくる主人公が嫌いだった。

どんだけクズでも、

どんだけブスでも、

主人公という理由だけでモテてしまう。

そんな主人公は決まってハーレムを作る。

そして決まって負けヒロインができる。

俺はそんな話が嫌いだった。

それでも俺は、いや、男なら誰しも思うだろう


主人公になりたいと、


でもそんなのは夢のまた夢、現実ではありえないのだ。

だからこそそれを体験している主人公が大っ嫌いだ。


こんな事を考えている俺も今日から高校生になる。

ラノベや漫画なら朝の登校中に金髪美少女とぶつかったり、

可愛い幼なじみと一緒に登校したりするのだろう。

でもそれは物語に過ぎない。


そう、俺には関係ない。


朝6時に起きて、

朝飯を食い、

歯磨きをし、

制服に着替えた。


家に親はいない。

俺が小さい頃に母さんが死んで、

親父は一年中、仕事と言って帰ってこない。

そのおかげで生活に不憫はないから親父には感謝している。


簡単にいえば一人暮らしだ。

7時半、俺は家を出た。

玄関のドアを開けた瞬間に春の暖かい風が吹き込んでくる。

天気のが良く心地のいい朝だ。


学校までは歩いて20分くらいだ。

自転車で登校しても良いのだが、歩くのが好きだった。

家を出て五分くらい歩いた時だった。


「すいません、学校に遅れちゃうので、」


角を曲がった所で女性の声がした。

ここで漫画なら金髪美少女がヤンキーに絡まれているのだろう。

そして喧嘩が弱い主人公が身を呈して守りボコボコにされる。

そしてその美少女が主人公に惚れるんだ。

でも俺も一つだけ主人公のような特技がある。

それは喧嘩が強い。

ただ何かやっていたとか、筋トレしていたとか、

そういうのは無くて、ただ何故か喧嘩が強い。

中学の時、不良にカツアゲされそうになって喧嘩になり

相手3人に怪我をおわしてしまったこともある。

これは喧嘩が強いのか、容赦がないのかは分からないが

とりあえず強い。

あっ、あと背が高い、、多分、、190cmぐらいある。


俺が道の角を曲がるとそこには黒髪ショートのメガネ女子がいた。


(ああ、ナンパじゃなく、カツアゲか)


俺は何となく主人公を気取ってみた。


「やめとけよ、その子嫌がってるよ。」


「あぁ?、、、え、」


「聞こえなかった?その子怖がってるよ。」


「あ、はい、すいません。」


今回みたいに俺を見て逃げ出すやつは良いのだが、

たまにこちらに絡んでくるめんどくさい輩もいる。


「あ、あの、ありがとうございます。その制服、桜山高校ですよね?」


メガネ女子が俯いて言った。

いかにも陰キャらしい。俺も人のことは言えないのだが、


「え?あ、はい。どういたしまして、今日から桜山です。」


メガネ女子の顔は俯いてよく見えないが顔を赤くしているのはわかった。


「も、もし良ければ、な、名前!教えてくれませんか?」


この子なりにだいぶ勇気を出したのだろう。

声が震えている。


「霧山 蓮斗(きりやま れんと)です。」


「あ、ありがとうございます。わ、私、南丘 芽瑠(みなおか める)です。」


おどおど具合に少しイラついてきた。


「じゃあ自分そろそろ行くんで。」


俺はそう言って歩き出した。

後ろで芽瑠がおどおどと慌てているのが見えた。


(何してんだ?)


芽瑠はこちらをチラチラ見ながら何かを言おうとしている。

俺は何となく気になったので声をかけた。


「あのー、一緒に学校行きません?」


芽瑠はハッと顔をあげ言った。


「いいんですか!?」


誰がダメだと言ったのか、そもそも同じ学校なら同じ道を通っても

おかしくないだろうに。

俺は芽瑠と登校することにした。


「あの、さっきなんか言おうとしてませんでした?」


俺が聞くと芽瑠はビクッと驚いた。


「い、いえ、なんでもないです。」


「そうですか、芽瑠さんって何年なんすか?」


「わ、私も蓮斗くんと同じ新入生だよ。」


「そうなんだ。」


同い年なら敬語を使う気もない。

むしろ相手もそっちの方が気楽だろう。

しばらく沈黙が続いた。

それからまた10分ほどたった頃だ。

芽瑠のスカートのポケットから生徒手帳が落ちた。


「ん?生徒手帳落ちたよ。」


俺はそれを拾って芽瑠に渡した。

その時俺にかなりの衝撃が脳内を襲った。


「え?まじかよ。」


今まで俯いてて気付かなかったが、

芽瑠はかなりの美少女だった。


「ど、どうかしたの?」


芽瑠は不思議そうに俺の顔を見ている。


「い、いやなんでもない。」


これは夢だ夢に決まってる。

たまたま助けたメガネ女子が実は美少女なんてありえない。

しかもそんな美少女が今俺の隣にいるなんて。

そんなラノベ展開有り得るはずがない。

そうこれは夢だ夢に決まってる。


俺はそっと自分の頬をつねった。


夢じゃないのか。


俺にいきなり緊張が走った。

それから会話が無いまま学校に着いた。


「それじゃあこれで、」


俺は早足で教室に向かった。

1年B組

俺のクラスだ。

教室に入り黒板に書かれた座席に座った。

ふと隣から方をつつかれた。


俺が振り向くとそこには芽瑠が座っていた。


「え?なんでいんの?」


俺は一瞬固まった。


「私もB組なんだ、蓮斗くん、これからよろしくね!」


やけに嬉しそうな芽瑠の顔を見て俺はまた頬をつねった。


やっぱり


夢じゃないのか。

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現実でハーレムを作るなんてありえないはずいなのに。 坂本 狼 @Kinrou02

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