草凪澄人の日常⑧~ジェイソン・ホワイトの治療完了~
澄人がジェイソン・ホワイトへ能力を付与させました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「本当にありが……」
「礼はいいです。もう十分受け取っていますから」
再び頭を下げようとする相手に掌を突き出し、これ以上のお礼は不要だということを伝える。
それでも感謝を言おうとするローレンさんへ、空欄の紙を見せる。
「今からこれを書くので、大統領に渡していただけますか?」
「分かりました」
俺はスマホでアメリカの1年間の国家予算を調べ、キリの良い数字を紙に書く。
きちんとドルだということを明記してからローレンさんへ渡した。
「大統領がちゃんと叶えてくれるんですよね? お願いします」
「…………必ず届けます」
俺の書いた金額を眺めたローレンさんは、苦笑いを浮かべながらもしっかりと返事をしてくれた。
◆◆◆
ローレンさんたちが出て行った後、窓の外を見ながら眉をひそめる。
(思い出だけで人の蘇生ができた……俺の両親は生きているのか? それだったら……)
ヘレンさんの思い出だけで、ソニアさんの両親を含めた四人を蘇生することができた。
後から聞いた話だが、四人が亡くなった境界突入が同じということで、ヘレンさんは全員を思い出していたらしい。
そんな応用も効く神の祝福でも蘇生できないということは、生きている以外の理由は考えられなかった。
(ただ、ワープができないんだよな……それはどういうことだ?)
生きているのならその人の所へワープができないのはおかしい。
何か制限がかけられているとしか思えなかった。
(ワープで行けない地点ってことだろう? どこになるんだ?)
今まで意のままにワープの地点を決めることができていたため、制限なんてものはないと思い込んでいた。
しかし、俺にはある一つの場所が浮かんでいた。
(……神域……そこにはワープできない)
守護者に話が聞きたいと思い、彼女に会うためにワープを実行したが、発動しなかった。
つまり今の俺は神の領域へ入ることはできないということだ。
(今、クサナギさんが持っている勾玉【陰】があれば道が開かれる。準備をするか)
自分がするべきことを定め、異界ミッションの画面を開く。
【異界ミッション8】
異界を復興させなさい
復興度によって報酬が変化します
現在(97%/100%)
※このミッションは任意で終了できます
(もう少しで終わるな。あと数日といったところか?)
街の再建に必要な赤い結界はもうすべて張ってある。
あとは街を守る外壁や個人の家など、建物の再建が終われば復興が終わるということだ。
異界ミッションの画面を見ていると、どうしても【ミュルミドネス】の姿がちらついてくる。
(どうやってこの内容に干渉できたんだ? なにがなんでも阻止しようとしていたな……)
アイテムボックス内にある、ミュルミドネスを倒した時に入手した【時の回廊への鍵】を眺めた。
この鍵を俺に与えたくなくて、異界を森で包み込んだミュルミドネスの真意は謎のままだ。
(もう、使ってみるしかないけど、今やることを終えてからだな……)
鍵を使うのはいつでもできるため、今はほかのことを優先的に進めようと思う。
「ふー……一人だと考え事ばかりだな……」
病室のベッドで休めと言われ、寝ているだけだと考え事が頭から離れない。
本当の意味で休まるのはいつになるんだとうと自称しながらぼやく。
「まだ夕方か……明日まで検査入院だっけ……長いな……」
はぁっとため息をつきながら窓から外を見る。
ふと、手元にあるスマホを手に取ろうとしたら、何件もメッセージが来ていることに気付いた。
特に聖奈からきているものが多いため、タップして開いてみた。
【もうすぐ始まるから見てね!!】
【宣伝のために頑張るよ!】
【異界に機械を持ち込むチェックをしているよ!】□
【今日テレビの取材が来るんだって! しかも生放送!】
(異界にテレビカメラが入ってる……放送の試験をしているのか)
メッセージには写真が添付してあり、異界へカメラなどの機材が使えるのか確認が行われている光景だとわかる。
他にも翔や輝正くんからもメッセージが届いていたから目を通していく。
(これは……見なかったら小言を言われそうだな……)
病室で考え事をしているだけでは暇なので、聖奈が頑張るというテレビで時間を潰そと思う。
テレビのスイッチを入れて待っていると、しばらくして番組が始まった。
「今日は全世界が大注目している草根高校に来ております」
「お、草根高校の校門だ。本当に校内を案内するんだ」
テレビには緊急特番と銘打ったタイトルが出ており、レポーターの男性が喋りながら校門に入る様子が流れる。
夕方のニュースなどによく出てくる男性アナウンサーで、元ハンターという肩書が小さく映し出されていた。
「あ、天草先輩だ」
案内係として部長の天草先輩が恥ずかしそうに先導している。
(こういう時は照れるんだな……普段みたいに堂々とすればいいのに……)
なぜか部室にいる時のように自信たっぷりな態度を取っていないことを不思議に思いつつ番組を眺めた。
二人はどんどん進み、異界ゲートの前でレポーターが大きな声で驚きの声を上げる。
「あっ!? これが異界へ突入するゲートですか!?」
「はい。ここから私たちが異界へ突入しております」
本来なら、秘密保持のために異界ゲートの場所を公表するなんてことは有り得ない。
ただ、今の草根高校は勾玉【陽】による結界で守られているので、草薙の剣で攻撃されない限り安全だ。
そのため、師匠やじいちゃんが映すことを許可したのだと思われる。
異界ゲートへ入ろうとする部員たちを見て、再びレポーターが声を上げた。
「すごい数の生徒たちですね! 全員がミステリー研究部の部員さんですか?」
「そうです。私たちは約四十名で活動しております」
異界ゲートの前で並ぶ聖奈たちを見ながら、興味深そうに口を開く。
「研修会や競技会で他を寄せ付けず、【
リポーターが次々に質問を行い、困ったように聖奈が答えていた。
質問の内容は、どうしてミス研に入ったのかというものや、一番楽しい時間はどんなときかといった普通のものだった。
そして、なぜそんなに強さが身に付いたか、どういったトレーニングをしているかなどの質問になったとき、聖奈の表情が変わった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は未定です。
更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまは、ぜひ物語の【フォロー】をよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます