異界での2日間⑧~橋を渡り切れ!~
橋に足を踏み入れた俺は百メートルもない小屋までの距離を全力疾走する。
無数の光の玉は俺が周囲に展開させた捕食する雷を打ち砕き、加速度的に魔力を消費させてくる。
それでも俺は足を止めず、魔力が減っていくのを視界の片隅で確認する。
(このままだと微妙に足りない!)
橋の中盤を過ぎた辺りで俺の魔力は半分の1万を切り、見る見る減っていく。
小屋まで残りコンマ数秒で着くのに、何もしなければ魔力が足りなくなって光の弾の餌食になる。
魔力が尽きる前に、アイテムボックスに残っている収集品をポイントに変換する。
小屋に近づけば近づく程光の弾の量が増し、何としても俺のことを阻もうとする意志を感じてしまう。
(必ず走り切ってやる!)
何とか魔力回復薬(大)が2つ買えるポイントを確保できたため、間髪入れずに使用した。
小屋に着く直前に光の弾が壁のごとく発射されたので、突き破るように跳躍する。
光の壁を貫いた俺は勢いを殺せず、そのまま小屋の扉を破って中へ飛び込んでしまった。
「いっつ……着いたのか?」
小屋の中に入ってもミッションを達成したという知らせが出てこないため、さらに何かあるのか不安になってくる。
立ち上がって小屋の中を見回すと、中央に腰ほどの高さのある机があった。
机の上に何かが置いてあるように見えたため、近づいて確認することにした。
【水の試練達成】
水の試練10を達成しました
全ての試練を突破したため試練を終了します
小屋に入ってから時間が経ってから、ミッションを達成した画面が現れる。
しかも、本と俺を遮るように境界へ帰るための境界線が生まれたため、さらに机の上に置いてあるものへ興味が湧く。
(よほど近づけたくないものなのか?)
境界線を迂回して机の上に置いてある本の表紙を見て、俺は取ろうとした手が止まった。
(なんでこの【文字】が……)
その本にはじいちゃんが教えてくれた文字が銀色に刻印されていた。
あまりの衝撃に思考も止まり、その文字から目が離せなくなった。
ゆっくりと辞書のように厚い本を手に取り、銀色に輝く文字を読み取る。
【回復薬精製指南書】
内容に目を通すために両手で持って表紙をめくった瞬間、本全体から白い光があふれた。
「わっ!?」
光が俺の体に吸い込まれ、何もなかったかのように分厚い本が手元に残っていた。
少し待っていたものの新しい画面がでることもなく、首を傾げながら本を読み始める。
「あれ? なにも書かれていない?」
あれだけ苦労して入った小屋の中で手に入れた本なので何かあると思っていたが、光る以外は何も起こらない。
じいちゃんに教えてもらった文字で書かれていたため、試練の書と同等以上のことを期待していたので思わずため息が漏れる。
「もう何もないみたいだし……出るか……」
もうこの小屋の中には何も置かれておらず、帰るための境界線まで現れているので、この場所でこれ以上何かが起こることはないだろう。
肩透かしを食らったような気分になりながら異界へ戻るために境界へ足を踏み入れる。
すると、俺の前を大量の画面が嵐のように通過していく。
【水の試練突破】
水の試練を突破しました
功績に応じて報酬を授与します
《水の試練1突破》:回復薬(小)半額
《水の試練2突破》:回復薬(中)半額
《水の試練3突破》:回復薬(大)半額
《水の試練4突破》:回復薬(小)8割引
《水の試練5突破》:回復薬(中)8割引
《水の試練6突破》:回復薬(特)解放
《水の試練7突破》:回復薬(小)無料
《水の試練8突破》:回復薬(中)無料
《水の試練9突破》:回復薬(大)8割引
《水の試練10突破》:回復薬(特)半額
【水の試練全試練突破】
試練をすべて突破しました
【A級境界解放】を授与します
【シークレットミッション達成】
回復薬精製指南書を熟知しました
《草凪澄人》専用回復薬を2個授与します
無事に異界へ脱出したものの、流れてくる情報の量に頭が追いつかず、何が起こったのか理解をするためにボーっとしてしまった。
(ログを見て情報を整理しよう……)
画面を開いて、流れていった画面の情報が記録されているログを見ながら頭を整理させる。
(回復薬が安くなっているのか?)
まず目に入ってきたのは、回復薬が安くなっているような表記だったので、確認をするためにアイテムショップを開く。
○回復アイテム
・体力回復薬(小):無料
・魔力回復薬(小):無料
・体力回復薬(中):無料
・魔力回復薬(中):無料
・体力回復薬(大):1,000P
・魔力回復薬(大):1,000P
・体力回復薬(特):10,000P
・魔力回復薬(特):10,000P
(2種類の回復薬が使い放題になった……限定とかも書かれていないし、水の試練はすごいな……)
水の試練で獲得した報酬がアイテムショップに反映され、大半の回復薬が安くなり、新しい(特)のものが購入できるようになっていた。
新しく解放された回復薬は1つで5万も回復するようなので、積極的に使うことはないだろう。
(とりあえず、(小)と(中)を30個ずつアイテムボックスへ備蓄しておくか)
誰かに渡す分としてアイテムボックスへ回復薬を溜め込みつつ、この試練をもっと早くやっておくべきだと考えてしまった。
(5万ポイントも必要だけど、最初から購入できるようになっていたのはこういう理由だったのか……)
ただ、あのころの俺が水の鍵を使ったとしても10まで試練をクリアできるとは思えないため、このタイミングで良かったと頭を切り替えてから次の報酬を確認する。
(次は境界解放権と……俺専用の回復薬? なんだそれ?)
俺はわかりやすい境界解放権はすんなり受け入れられた。
しかし、もう一方の報酬である自分専用の回復薬については、説明文を読んでも理解するのに時間がかかりそうだと思ってしまった。
【草凪澄人専用回復薬】
指定したモノを溜め込んでおける回復薬
本人以外へ使うことができない
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次の投稿は5月7日に行う予定です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます