Go Go Shopping!(買い物へ行こう!)

 

 フレッドの不安をよそに、買い物に出かけたアルバートとエリーゼ。


「これなんかいいんじゃない?」


【うーん】


「これは?」


【派手すぎない?】


「そうかなー似合うと思うけどー。あ、でもフレッドはこっちの方が好きそう」


【なんでフレッド目線なの!?】


「またまた~♪」


 こんな浮ついた会話が続く店内。


服の趣味が決定的に違うためなかなか決まらないでいた。


 アルは天然で友達の地雷を踏み抜くのが得意だった。そのためなのか友達がいない。

 そんなアルにとって表裏のないエリーゼと友達になれたのは幸運だった。


 本当に数時間前に知り合った仲なのかというくらいエリーは打ち解けていた。


「アルはすらっとしてるからこういうシンプルなのでも映えるからいいよねぇ~」

 シンプルな白いシャツを手に取りながらいうエリーゼ。


【エリーゼは女の子っぽくてうらやましいよ】


 フリルのついたワンピースを手にとってため息をつくアルバート。


「私は見た目だけだよー。中身は男勝りというかケンカも強い方だったし。あ、フレッドは細身の子の方が好みだよ?」


【だから関係ない~!】


「ふふふ」


 ちょこちょこフレッドの好みの情報を入れてくるエリーゼ。本人のいないところで暴露大会になっていた。


 アルは自分の体型を気にしていた。


 結構な大食いだが出るとこは出ず、食べないと痩せていく。

エネルギー効率が悪いのだ。

ゆえに残念ながら胸はなかったが

「フレッドは貧乳好き」といういらない情報が加えられたため希望は繋がった。


【繋がったってなに?!】


・・・・


「そういえば2人はどうやって出会ったの?仕事関係?」


【実は……】


 これまでのいきさつを筆談で説明するのは骨が折れたがよく考えてみるとすごい出会い方だなと自分でも思った。


「なるほど…。いっぱい書いてくれてありがとう。でも、半分くらいしかわかんなかった。ごめん。」


【ごめん。話をまとめるの苦手だから…物語書くときもそうなんだけど…】


 大人が会話の返答に「なるほど」というときは、ほとんどわかってないときだ。例外はない。


 そんなこんなでアルは結局今持っている服に近いカーディガン、フォーマルなシャツとスキニーパンツの組み合わせとパジャマを買った。


 エリーは水色のワンピースをアルにプレゼントした。


【そんな、悪いよ~】


「いいのいいの!その代わりデートで着るんだよ!」


【だからぁ~もう~】


 エリーはこういうイジリが好きらしい。あきらかに楽しんでる。


 下着コーナーではやけに際どいものをエリーゼがすすめてくるのでさすがに外で待っていてもらった。


・・・・


 最初の買い物を終え、帰宅した2人をフレッドはやけに安心した顔でみた。


「どうしたの?なんかあった?」


「いや、別に。金は足りたか?」


「うん。フレッドのくれた方を使ったから」


【結局それで足りちゃったから…】


「いいんだよフレッドがくれるって言ったんだから!」


【うん。ごめんねフレッド?】


「ああ別にいいけど…仲良くなるの早いな」

「そうかな?」


 女性は仲良くなるのが早い。極秘で訓練でも受けるのだろうか。もしかして社交性がないと生きていけない世界が女社会なのかとフレッドは戦慄した。


「ま、まあいいか…。あ、アル、これありがとう。」


 フレッドはスクラップノートを返した。


【うん。どうだった?】


「解読には時間がかかりそうだった」


【あはは。やっぱり?自分ではまとまってるんだけどなぁ】


 その宝の地図のようなノートに書いてあった



 ある本について




 今日は聞かなかった。



 数日後、アルの転居届を出し、アルはフレッドの「家事手伝い」として家に住むことになった。


 家事以外の仕事は郵便物を出しに行ったり紙やインク、ペンなどの買い出しなど。


 その中で声が少しずつ出るようになってきた。ストレスが緩和されてきている証拠だった。



~半年後~


 声もかなり戻りつつあった。


「お、今日はソラマメのスープにソラマメ入りコロッケ、マメご飯…」


「…ソ…ラ…マメ…安…か…った…から」


「まあ…うまいけど。てかそんな声だったんだなアル。」


「…ぅ…ん…」


少し恥ずかしくなったアル。


エプロン姿がよく似合っている。


「なんで赤くなってんだよ。」


「ふーん…マメの混ぜご飯とは…和食できるんだな」


「この…ま…ぇ…図…書館で…読…ん…だ…の。」


「正直、俺からすると主食が米以外のメニューなんて思いつかないんだけどなー」


「パ…ン…とス…-プ…がぉぉい…かな…。」


「へえー。なあ…もしかして明日も?」


「おマメ…フ…ルコ…-…ス…。ふふ…」


「マジか。あはは」


「…ふふふ」


 あたたかな食卓だった。


 暗い影のあるお互いの人生にろうそくの灯がともったように


 あたたかなものがお互いを照らしていた。


 2つのろうそくの明かりでは互いの顔だけを照らすだけだが、でもそれで十分だった。今はその灯を消えないように、守る。

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