第15話 進路

さて、とドンキホーテは話題を切り替える。


「少年の話もわかったが大事なのは次の話さエイダ昨日のことは覚えてるか?」


「昨日は確か…ドンキホーテ達が戦って私が夢の世界に行った。そのあとは覚えてない。」


エイダがそういうとドンキホーテはそうかと呟いた。そして次にドンキホーテが吐いた言葉はエイダに衝撃を与えるものだった


「昨日骸骨の兵士を倒したのは君なんだぜ、エイダ」


「どういうこと…?」


「そのままの意味さ恐らく神の使者としての力が覚醒したんじゃねぇかな。」


エイダは実感がなかった、あの恐ろしい怪物を倒したのが自分だ、などと。そんな力を今でも持ってるとは思えなかった。


「事実じゃエイダ、ワシも意識が朦朧としておったが確かにワシを回復させてくれたのはエイダお主なんじゃよ。」


「アレン先生を、私が?でも私、回復の魔法なんか使ったことがないよ」


それを聞くとドンキホーテは再び話し始めた。


「ならやはり勇者様がエイダに力を与えたのさ。危機を脱するためにな。」


そしてとドンキホーテは付け足す。


「恐らくエイダが狙われるのもその神の使者の力故だろうな。」


エイダはその事をうすうす感じていた。なぜ自分がこんな力を持っているのだろう。なぜ理不尽な目に会わなければならないのだろう。エイダはただ知りたかった母がなぜエイダの素性を隠し続けていたのか、なぜ敵は神の使者の力を狙っているのか。

(もし私のせいでアレン先生やドンキホーテが傷つくのだったら…)


「私知りたい、本当のことを!何もわからないまま襲われるのは嫌、私も戦う!だから戦う術を私に教えてください!お願いします!」


エイダの決意は固く誰にも揺るがさないものだった。

ドンキホーテとアレン先生は互いをみて微笑む。


「わかった。だがその前にそろそろ俺たちも準備をしなければならない。エイダ、そういえば全然荷物持ってないよな?」


エイダは思い出した。旅立ちの日から荷物はずっと実家に置きっぱなしだった。今更取りにも行けない。


「そうだった私、今何の準備もできてない。」


ドンキホーテは腕を組みながらいう


「そうだろ?着替えさえ持ってないだろ?ここの村である程度準備できるはずだから。行こうぜ。」


着替えという単語を耳にしたエイダは気づく今までの服があまりにも綺麗すぎたことに。


「あ、あのもしかして私の服がずっと綺麗だったのって洗濯したから……?」


ドンキホーテはその言葉に動揺した


「いや勝手に衣服を剥ぎ取るようなことはアレン先生も俺もやってない!これだよ妖精の洗浄粉!」


アレン先生が説明を付け足す


「これはな服を着たままでも、上からふりかけるだけで汚れが落ちるという優れものなんじゃ、お前さんの服にもふりかけさせてもらったぞ。最初に会った時は気づかんかったかもしれんが、服に血が付いていたからの」


「服に血が?」


エイダは驚いた服に血がつくほどの怪我などした覚えがないからだ。


「ああ、エイダ、君は殴られたんだぜ恐らくだがあの実家でな」


エイダは思い起こすしかし。殴られた記憶がない。怪我の記憶も、そこで勇者たるあの少年の言葉を思い出す。確かあの少年は1回目、無意識に自分を呼んだと言っていた。


「もしかしてその時に勇者様を?」


「ああそうかもな傷がなかったのは勇者様が塞いでくれたのかもな。ってそうだ早く行かなきゃな服屋によぅ。」


そう言ってドンキホーテはエイダを宿屋から村まで連れ出す。村は小規模ながらも活気があった。どうやらここは商人や冒険者が滞在しており、商品の流通などがそれなりにあるようだ。そのおかげかドンキホーテ達の目指す服屋にはそれなりの冒険者ようの服などが揃えられており、過酷な旅にも耐えうるそんな服が揃っていた。

「エイダとりあえずこれで買っておいてくれ。」


ドンキホーテはエイダに大量の金貨を渡す。

こんなに、と思わずエイダは口にしたが、店主からオススメされた丈夫で見た目の良い服を促されるがまま買ってしまった。

その服は、翡翠色を基調とした服であり、見た目は可愛らしかったが、冒険者が着るようのもので決して機能性にかけているわけではなかった。

他にも着替えようの服を買うとエイダは翡翠色の服をそこの店でそのまま着る。そしてドンキホーテ達と共に他の店に回った。ドンキホーテ達の買い物は主に飲むだけで傷が癒える回復用の飲み薬や、携帯食料などであった

一通りの買い物を終えるとエイダ達はロシナンテの待つ宿屋へと戻ってきた。


「みんな買いたいものは買えたな!」


「バッチリじゃ。」


「私も!」


よしと、いうとドンキホーテはテーブルの上に地図を広げた。


「俺たちはこれから商人を護衛する冒険者の一団に紛れて、エルメルという街に行く。」


エルメルと地図で書かれたところをドンキホーテは指差す。大きい街のようだ。


「そこで俺たちは、飛空挺に乗る。」

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