第17話:亡国

 今の私は、厳重に守られた宝物と同じでした。

 ほんのわずかでも身体を動かしたら、侍女が飛んでやってきます。

 いえ、それは嘘で、常に間近の侍女がいて監視しています。

 侍女達は看病だというでしょうが、私には監視以外の何物でもありません。

 まあ、最初のように、アナベルに一睡もせずに付き添われるよりはマシです。

 アナベルが寝なければ私も寝ないと言って、ようやく寝かせるのに成功しましたが、もう二度とあのような状況にはしたくないです。


「セラン皇太子殿下のようすは分かりましたか?」


 私は少しでも雰囲気を変えたくて、セラン皇太子殿下の現状を確認しました。

 あれ以来、昼も夜も一時間ごとに伝令が送られ、殿下のようすを伝えてくれますから、こちらから聞いても負担にはならないでしょう。

 むしろ役目に張りが出るかもしれません。

 まあ、私も心配なのは間違いありません。

 いえ、もう強がるのは止めます、私は殿下に恋しているのです。

 何故殿下が私の事などを愛してくださっているのかは分かりませんが、殿下に愛していただいて、どうしようもなく殿下を愛してしました。


「はい、刺客を放ったのが、プラット王家のアーサー王太子だと判明しましたので、報復のために王都に攻め寄せたのは、眠られる前に当番がお話させていただいたと聞いております。

 プラット王家が誠意のない弁明の使者を送ってきましたので、そのまま王都の城門を破壊し、王城の城門も破壊し、王宮を占拠したそうでございます」


 何とも愚かな事をしたモノです。

 大陸で一、二を争う強国の皇太子に刺客を送るなど、狂気の沙汰です。

 しかも一度、普通なら絶対に許されないような無礼をしでかしているのです。

 まともな考えができる国王なら、アーサーを廃嫡にするか、処刑しています。

 それを王太子の座に止めておくなんて、愚か極まりないです。

 実子がアーサーしかいなくても、傍系の男子がいるのです。

 皇国に侵攻の口実を与える時点で、亡国の愚王と言えるでしょう。


 せめて、アーサーが刺客を放ったと言う理由で侵攻を受けた時に、事実かどうかは別にして、前回の無礼があるのですから、アーサーの首を刎ねて詫びるべきです。

 間違いのない事実だとは思いますが、もし嘘偽りの難癖だったとしても、前回国内外の王侯貴族の前で殿下に斬りつけているのです。

 だれも殿下の言葉を疑いはしません。


 それを、我が子可愛さにグズグズとしているから、国を滅ぼすことになるのです。

 それにしても、セラン皇太子殿下はアーサーとプラット王国をどうする心算でしょうか?

 それに、何の思い入れもありませんが、実家のエンドラ公爵家はどうなるのでしょうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る