第14話:開墾
皇都に近い方、といってもとんでもない辺境ですが、そこから三つの孤立した島のような断崖絶壁の地を四つの縄梯子で渡りました。
そして辿り着いたのは、果ての分からないという乾燥した荒地です。
手に取った土の質は、それほど悪くはありません。
皇都側から水を牛揚水器で送り、地下用水路を造れば、乾燥に強いスイカ、ブドウ、ナツメヤシ、乾燥小麦、トウモロコシなら栽培できるかもしれない。
でも確実なのは牧草を育てての畜産よね。
「隊長、この地に地下用水路を掘る事はできそうですか?」
「はっ、土質を調べましたが、可能な所と不可能な所があります。
ただ七日間馬車を駆けさせて先まで調査させましたが、そこまでは連続した地下用水路を掘る事は可能です」
馬車で七日は相当な距離ですね。
その間を全て農地にできるのなら、収穫量はかなりの量になります。
問題は牛揚水器と溜池、地下用水路を建設維持するだけの利益がでるかです。
最初はいいのです、皇室の悲願だそうですから、莫大な費用を出してくれます。
でも、改修や維持に大きな費用がかかるようだと、皇国の財政が悪くなっていると、放棄されてしまうのでしょう。
そもそもこの開墾で財政が傾くかもしれません。
「隊長、私達が帰った後も、ここには警備隊と研究隊が残るのですね?」
「はっ、国土は広いに越した事はありません。
果ての方から何時侵略者が攻めてくるか分かりません。
農耕が可能なのか調査も必要ですから、二千騎規模の部隊が残ります」
そうなると、二千人が使用した後の汚水や排泄物がでますから、地下用水路での農耕ではなく、普通に農作業をしてみるのもいいでしょう。
もちろん彼らも何もやる事がないと士気が維持できないでしょうから、地下用水路と溜池の建設もしてもらう事になります。
「隊長、この役目は皇室の悲願で、代々の皇帝陛下が成し遂げようとして、それでもできなかった事と聞いています。
私が独断で始めた事ではありますが、成功したら皇太子殿下の命でやった事にしますから、身命を賭して役目に励んでください」
「はっ、ユリア太妃殿下の皇室への忠誠心を見習い、率先垂範で役目に励みます」
目配りや挙措を見る限り、この隊長はなかなかの人物のようですね。
この隊長が鍛え上げた配下なら、手を抜くことなく役目に励んでくれるでしょう。
まだ目算でしかありませんが、耕作自体は成功すると思います。
問題はどれだけ経費を削減して、利益を上げられるかですね。
それにはここに来るまでの島地をどう活用するかにもかかっています。
もう一度島地をよく検分しましょう。
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