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 いつからぼくは道化を演じることを覚えたのだろう。


 道化を演じてもいいことなど何もないというのに。

 そのときは、確かに笑いを生む。

 知り合ったばかりの人間と一気に距離を詰めることができ、親しくなれる。

 居場所ができたと思える。


 だが、後から必ず気づかされることになる。

 笑わせていたのではなく、笑われていたのだと。

 親しくなったと思っていたのは自分だけで、相手は自分を鬱陶しく思っていたことを。

 そこは自分の居場所でもなんでもなかったということを。


 人との距離感をつかめない。

 空気が読めない。

 自分が迷惑がられていることを気づけない。

 気持ち悪い。


 自分がそういう人間だと認識されていただけであったということを。


 遅くても1ヶ月、早い場合は2週間で、相手の言動から、自分が下に見られていることに気づくことになる。


 相手によって、それが意識してのことなのか、無意識でのことなのかという違いこそあるが、自分を馬鹿にしていると思われる言動が目につくようになる。


 そして、それから数日も立たないうちに、必ず決定打のようなものが来る。


 それを目にしたとき、耳にしたとき、暗い井戸の底に引きずり込まれ、


 ああ、また、ここに落ちてきてしまったのか。


 そう思う。


 橋本洋文(はしもと ひろふみ)の人生は、それの繰り返しだった。



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