動画日記 40010102

「あー、4001年1月2日。天気は曇り。

 予想では雨の心配はない。


 一時温暖化が進んだ世界も、文明が滅び自然に還ったあとじゃ全て元通りだ。

 おかげで中々寒い日々が続いている。 

 引き籠もりには関係ないけどな。毎日お部屋でぬくぬくだ。


 でっと……今日はそうだな……俺の仲間を紹介しよう。

 人間だろうがアンドロイドだろうが、本当の意味で独りで生きることはできないからね。

 俺の人生、……人生? まいいや、とにかくこいつらのおかげって訳。


 じゃあ、早速。

 まずはスィン、返事してくれ」


『はい、マスター』


「彼女はスィン。声が女性だから彼女って呼んだけど人工知能だ。SINでスィン。

 何かの略語なんだろうけど、記録が残ってないから由来は知らない。

 本体は地下深くに眠っているから紹介は出来ない。今回は声だけで。


 簡単に言うとこの施設の統括AIで、今は俺の世話係も兼任している。

 彼女の的確なマネージメントのおかげでこの施設は成り立っている。


 さて、次は……マガミ達は外かな?」


『はい、マスター。呼び寄せますか?』


「仕事中ならいい。画像回せるか?」


『はい。トリィからの画像を転送します」


「頼む。ワイプはこの辺りに、そう、この位の大きさで。OK。

 でと、まず今画像が出てるこの可愛いワンチャンがマガミだ。

 元になっているのは狼だけど、まあいいでしょう。


 画像で見るとメタリックなリュックサックを背負った可愛い奴だが、実際は体長2メートルの巨体だったりする。

 で、このリュックには2丁の熱線銃とそれを操る2本のアームが収まってる。

 

 マガミ、聞こえるか? アームを出してみてくれ」


『わふ』


「ありがとう、マガミ。

 見ての通り、要はこいつもアンドロイドなわけ。

 Wシリーズっていう狼型戦闘アンドロイド。近くの基地から頂いて来た。


 本来は対テロリスト戦なんかを想定して設計されたらしいけど、今ではこの周囲の害獣駆除が彼等の役目だ。

 機動性と火力に優れる最高のハンターだ。


 コイツ等もやっぱり俺みたいに前世が覚醒してはいるみたいなんだけど……元が犬だからね。

 本体に搭載されているCPUからの命令と自分の本能や考えを犬の知能が区別でできていないらしい。その為、行動の優先権はCPUが持っているおかげで、言うことにはちゃんと従う躾け要らずの名犬だ。


 Wシリーズは他にもいて、ていうか50体もいるんだけど、名前があるのはマガミだけ。

 当初ダブル01から50までの番号呼びをしてたんだけど、味気なくてね。

 結局俺が命令するのって01……この隊長だけだし、じゃあ隊長にくらい名前つけようかなって。


 まあ、そんな感じで、次はマサルかな。トリィ頼む」


『ピー』


「さて、次はマサルだ。少し遠くに行ってるかな?


 ……

 

 あ、いたね。

 このおっきなゴリラ君がマサル。

 Gシリーズっていう労働アンドロイド。

 パワーに優れ、人間同様手先も器用。

 マサル、手を振ってくれ」


『ウホ』

 

「ありがとう。

 マサルも50体いるGシリーズのリーダーだ。

 今は外壁と防衛設備の建設に取り組んでいる。


 ここら辺の害獣共はマガミ達がある程度片付けたけど、後から後から入ってくるからキリがない。

 動物達は凶暴化してから繁殖力も増したからなぁー……やれやれ。

 このシェルターにも防壁や防衛設備はあるけど一応ね。

 寝てる間に我が家の軒先でドンパチとか普通にイヤだろ?


 ちなみに彼等の食事用に一部の害獣は追い出さないように調整している。

 元は猪の……お、トリィいいぞ。

 今映像に映っているコイツ。デカいし牙がまあ凶悪。

 昔図鑑でみたマンモスって奴を思い出すね。牙だって歯だろうに、本来の役目の噛むって行為には、一切役に立ってなさそうだ。


 このシェルターが現状食い物に不自由しているわけじゃないんだが。

 ある程度獣がいて植物を食べてくれないと、生え放題で困るんだ。植物も変異しているから余計にね。

 なのでどうせならってことで、森の調整役に繁殖させて、ついでにマガミ達の食料として役に立って貰ってる。


 って話がずれたな。

 で、最後がトリィ」


『ピー』


「この鷲がトリィだ。映像はE02に切り替えたのか? 気が利くな。

 偵察と空戦のプロフェッショナルだ。出身はマガミと同じだ。

 早い時期に基地を漁って良かったよ。今じゃ無傷の格納された機体なんて絶対見つからないね。

 EシリーズはWシリーズと比べれば火力には劣るけど、熱線銃を翼の根元に備えてる。

 お、ちゃんと見せてくれてるな。ありがとう。

 いくら化け物化したとはいえ、空飛ぶ者達にとって遠距離攻撃ってのは脅威だ。

 羽を焼かれたら落ちておしまいだからな。


 WシリーズやGシリーズにも映像を送る機能はあるけど、カメラマンはもっぱらこのトリィ達に任せている。


 ありがとう、トリィ」


『ピー』


「これで紹介は終わり。

 昨日孤独が辛くないようなことを言ったきがするけど、辛くないのはコイツ等がいてくれるおかげかもな。

 コイツ等のおかげで何の不自由もなく生きている。

 空も陸にも驚異はない。

 まあ、油断してると猪に突かれるかも知れないが、それでも他の場所に比べれば楽園だろう。


 さて,今日はこんな所かな。


 日記というんだから今日起きたことなんかも話すべきか?


 えーと、……何か変わったことか……

 思いつかない。普段と変わらない生活だったしな。

 寝て、起きて、シャワー浴びて、食って、で今動画撮ってて、この後は……食って、風呂入って、寝るのか。

 一応時間があれば射撃訓練とかやるべきかな。

 流石に健康的な生活とは言えない気がする。アンドロイドは病気にならんけども。


 あ、そうだ。

 そもそも今の生活がどんな感じかを、まずは紹介すべきだったか?


 よし、明日はそれで行こう、うん。

 というわけで今日はこれで。


 じゃ、また」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る