第4話 白鳥の湖 第2幕終演後 舞台袖及び楽屋
明子は身体の軽さに興奮している。若返った。他の団員たちも気づいていると思うのだが話したりしている暇がない。白鳥たちは各国の衣裳に着替えて3幕の準備をしなければならない。
久美は口をポカン開けボーとしている。明子が来ると我に返り彼女の後をついて楽屋に向かう。この劇場は楽屋までの距離があり不便だ。そのため他の女性団員は4幕の白鳥の衣裳を袖に置いてスタンバイしなければならない。3幕と4幕の間に休憩を入れてないのだ。
袖でバレリーナたちはファンデーション1枚になり毎回着替えている。
いつの間にか詩織の姿は舞台袖から消えていた。
久美は明子の着替えを手伝いながら涙を流しながら驚いている。もう終わりだと感じたところから奇跡がおきたのだ。腕とか背中にファンデーションをぬりなおしながら必要ないんじゃないかと思うほどすべすべだ。
明子はまた、泣いている。この子は年を重ねても同じで微笑ましい。思わずハグして
「ありがとう」
と耳元で囁く。
久美はしゃくりあげる。
明子は支度が終わりシューズカバーをしたまま楽屋で少し跳びはねてみる。
軽い。
自分も3幕が楽しみになっている。ここ数年フエッテが20回越えたことがない。床の柔らかい稽古場だと回りきれたりすることもあるのだがよくて18回でプレパレーションをしピケアンデダンをしている。今は軽く32回、いけるきがする。
3幕もほとんどがクリゴロービッチ版に近い。道化を男性友人にしたり、オディールを加えたアントレがあったりだ。でも振付がそのままで演出が2幕は変わっていた。どうなるのかそんなことはどうでもいいい。今この身体になり自由に踊れることが幸せだ。
いよいよ3幕。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます