幕間

第219話 SSランク冒険者

「SSランク冒険者って、どこで何をしているんですかね?」

「……急にどうした?」


 唐突なイバラの疑問。

 煉もいきなりのことで答えに戸惑っている。


「ふと気になったんですよ。レンさんももうすぐSランクになるじゃないですか。意外とSランクの方々は街で見かけたりするのですが、SSランクの方って最近の情報とか全くないじゃないですか。だから、どうしてるのかなって」

「言われてみれば、そうだな」


 イバラの言葉に同意し、煉は少し考えこんだ。

 SSランクは一握りの冒険者にしか与えられないランクである。

 それぞれが歴史に名を遺す偉業を成し遂げた、世界最高峰の冒険者。

 その数、たったの五人。

 その五人と同等の力を持つと言われている存在が、「龍王」「魔王」「獣王」の三皇だ。

 SSランクとSランクでは天と地ほどの差があると言われている。

 そのSSランクの五人は、滅多なことでは姿を見せない。


「とは言え、あのおっさんとは会ったことあるしな。意外とそこらにいるかもしれないぞ」

「『大剣豪』ゲンシロウさんですか? 私は眠っていたので、実際に会ったわけではないのですけれど……」

「そうだっけか。まあ、会ったところで特に何かあるわけじゃない。あれはただの遊び人だ」


 煉の脳裏に苦い思い出が蘇り、不機嫌そうに顔を歪める。

 その顔を見てイバラは何かを察した。


「……詳しい話は聞かないでおきますね。あと、私が知っているのは『破滅の魔女』ですね。名前は――」

「リンネ、だろ。先に言っておくが、SSランクの五人は全員異常者だ。思考からして普通の人間と一緒にしてはいけない」

「どういうことですか?」

「例えば、魔女はただ自分の好奇心を満たすためだけに亜神を召喚した。神がいるのなら見てみたいという理由だけでだ。自分で召喚した亜神を自分で討伐した。一般的にあまり知られてはいないけどな」


 知らなかった驚愕の事実に、イバラは口を開けて固まった。

 何も知らない人たちからすれば、「破滅の魔女」は突然現れた亜神を討伐した英雄でる。

 その功績を称え、ギルドは魔女に対してSSランクを与えたのということだ。


「そしてその時に付けられた二つ名が――『神滅の魔女』。神を信奉する連中からすれば不愉快極まりない名だから、これもあまり一般的に知られてはいない。それと、魔女だけは唯一居場所が判明しているんだ」

「どこにいるのですか?」

「最果ての楽園アヴァロン。魔女とハイエルフ以外誰も知らない世界樹の聖地。そこで引きこもっているらしい」

「それって、御伽噺の……」

「実在するらしい。俺の目的が終わったら探してみるか?」

「わぁ! 楽しみです!」


 イバラが嬉しそうに飛び跳ねる。

 すると、ソラも尻尾をブンブン振り回しイバラの周囲を駆け回りだした。


「ちなみに、SSランク冒険者は皆二つ名に”神”を冠するんだ。おっさんも本来は『神殺しの大剣豪』らしい。他には『神拳』と『破壊神』。どちらも居場所は把握できていない」


「神拳」は拳一つで伝説の神獣を討伐。

「破壊神」は両手に巨大な槌と斧を持ち、一国を滅ぼした最上位悪魔を無傷で討伐。

 本に書き記すことができるほどの偉業を成し遂げている。

 ただ、その人格には問題があるらしく、ギルドも頭を悩ませているそうだ。


「あれ? 確か、SSランク冒険者は五人、でしたよね。もう一人は?」

「ああ、もう一人はな――」


 そこで言葉を切ると、煉は何かを懐かしむような笑みを浮かべた。


「もうこの世にはいない。『赫怒の炎魔』サタン。俺の前任者で、”憤怒”の魔人だった男だ」







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