第148話 毎度お馴染みの展開
「――――ぐへっ!」
「――――ぶっ!」
「――――がっ!」
「…………これは毎回ないとダメなのか?」
煉は顔を顰め、ため息を零した。
煉たちがいる場所は、冒険者ギルドイザナミ支部。
港にほど近く、海に面した小高い丘に建てられ華やかな街並みを一望できる。
そんなとても気分の高まるギルドで、いつものごとく煉は冒険者に絡まれていた。
三人の容姿から、冒険者になりたての新米だと侮り煉の拳によって撃退される。
絡んできた三人の冒険者は並んでギルドの床に頭から突き刺さっている状態。
そんな彼らを放置し、煉は何事もなかったかのようにギルド内を闊歩する。
周囲で見ていた冒険者たちは、一瞬の出来事に何が起きたか理解できず戦慄していた。
「私たちが侮られるのは仕方ないとしても、レンさんはすぐに手を出さないでくださいよ。結局騒動を大きくしているのはレンさん自身なんですからね!」
「そうは言ってもなぁ……。馬鹿に絡まれたらとりあえず殴るだろ。話しても通じなさそうだし」
「レンも大概だからな。毎度毎度ギルドで揉め事起こすってなかなかないぞ……」
「俺のせいじゃねぇし。てか、今回は絡まれたの俺だけじゃないからな!」
と、煉は必死に主張するが、二人にジト目で見られ大人しくなる。
イバラの言う通り、騒動を大きくしているのは煉自身である。
そして、いつも通りの流れで行くと……。
「――――ギルド内での諍いは規約違反だ! 特にここ、イザナミ支部での騒動は私がいる限り断じて許さんぞ!」
そうしてギルドカウンターの奥、受付嬢たちの間を抜けて出てきたのは――。
「えっ?」
「あら……?」
「ち、ちっさ……」
小柄なイバラよりも少し背が小さく、それとは反対に態度の大きい尖った耳が特徴的な少年のような男だった。
「誰だ! 今、私を見て小さいと言ったのはっ!!」
「え、ごめん。気にしてた?」
あっけらかんとした態度で答えたのは煉だ。
悪気もなくただ思ったことを口にしてしまったのだが、それが逆に男の逆鱗に触れた。
イバラとアイトはとばっちりを受けないように少し後ろへ下がった。
「なんだ貴様! その生意気な態度は! 叩き直してやる!!」
男が煉に向かって手を翳す。
煉は悪寒を感じ、自分の体を魔力で覆った。
次の瞬間、煉の頭上に巨大なハンマーが出現した。
一目見ただけでとてつもない重量感を感じさせるハンマーは、勢いを増し煉の頭をめがけて振り下ろされる。
振り下ろされたハンマーの風圧で煉は思わず膝をつきそうになるが、何とか踏みとどまった。
そして巨大なハンマーは煉に接近し、視認できないほどの炎の被膜により溶けて消えた。
「ちっ! どんなもんかと思ったが、やっぱり生意気な小僧だな! まあいい。歓迎してやるぞ、『炎魔』」
「……わかっててやったのか? 殺す気満々じゃねぇか」
「当ったり前だ! Aランク冒険者がこれくらいどうにかできないでどうする」
Aランクという言葉に、周囲の冒険者たちがざわつく。
自分たちよりも幼い少年が高ランク冒険者で、しかも今勢いのある『炎魔』だとは思ってもみなかったのだ。
騒がしくなる冒険者たちを一喝し、静かにした小さな男が名乗る。
「私は、冒険者ギルドイザナミ支部ギルドマスター、クレイン・ノルス。見ての通り、エルフだ。一応言っておくが、貴様よりも何倍も長生きしている。存分に敬え!」
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