独りよがり

七星奈星

第1話

ストレス発散の方法。

僕のそれは夜に自転車で知らない街へ行くこと。


人間関係の悩みや、自分の能力のなさへの

怒りを真っ暗な知らない街に行くことで生まれる恐怖でどこかへ追いやることができるからだ。


僕はこうしていつものように自転車で行ったことのない街へ出かけていた。


大体、家を東西南北のどこかに進み帰り道のわかる隣の駅くらいまで走って、どこかでコンビニに寄っていつもは買わないような菓子とジュースというちょっとした贅沢をして、近くの公園で食べて帰る。


それが僕のストレス発散方法の詳細。


今日はコンビニでチーズ味のポテチとバター醤油味のポテトスナックそしてエナジードリンク。


エナジードリンクは悶々とした今の気持ちが消えてくれるだろうなという謎の根拠で買ってしまった。普通の缶のジュース2本分くらいの値段がするのに…


それは置いといて僕はそれらを持って公園に行く。


ベンチがないと僕は立って人の目を気にしながらこそこそと、慌てて食べるが今日のこの公園にはベンチがある。


僕はそこに座り1人で晩餐を始めた。


人通りの少ない辺鄙な公園だなといつもと違いベンチでリラックスしてゆったりと菓子を貪っていると目の前に反射板のような目立つ真っ白な猫が僕の前を横切ろうとしていた。


僕は声変わりを終えた声帯で精一杯高い声で「にゃあ」と言うと猫はこちらを向いた。


その時初めて猫の右半身を見ると、こちら側は黄土色の綺麗な色をしていた。


僕はにゃあと猫を呼んだあとどうしようかとは決めていなかったのでただまだ猫の気を引けるような声は出せるのだなということだけ確認して再び晩餐に集中し始めた。


しかし猫はずっとこちらを見ている。


シカトを続けていると、猫はにゃあにゃあと鳴きはじめたのだ。


それでも挫けまいとシカトを続けると猫はさらに大きな声でにゃあにゃあにゃあにゃあととギアを上げてきたので僕は仕方なく猫の方を見て何を言っているのか考えてみた。


多分、多分お腹がすいているのだ。


僕は自分の持ってるポテチを猫の前に投げてみた。


しかし、猫は食いつかない。


次にバター醤油味のポテトスナックを。


しかし、またこれにも食いつかない。


これ以上猫にあげるものは無いのでまた無視をしようとしたが猫はさらにギアを上げて来たので僕はお金だけを持って急いで先程の公園でチュールを買ってきた。


今度はさすがに猫は食いついた。

近くで見ると綺麗な毛並みでほんとうにかわいい。


それから僕はその猫のことを夏海と呼ぶようになった。


「聞いてくれよ。俺親に彼女が出来たこと言わなかったの。でも彼女できたら二人で遊んだりご飯食べたりするからお金かかるじゃん?それでも行けるところまで行ったのよ。でもとうとう限界が来てあんまり彼女と遊べなくなったわけ。そしたらすぐ振られたんだ。女の子ってお金持ちの男が好きなのかなぁ?ていうかまだ中学生だぜ?

そんなお金のこと気にするもんなのかなぁ」


夏海は知らん顔で僕の手元のチュールにかぶりついている。


「夏海ぃ。復縁したいって言ったらしてくれるかなあ?」


夏海はほとんど無くなったチュールを地べたに落として足で器用に中身を絞り出して出てきたものを舐めている。


「俺、夏海になんか悪いことしたかなあ」


夏海はチュールを食べ尽くしたのか茂みの中に帰っていった。


僕はひとりぼっちになってまた自分の何が悪かったのか考えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

独りよがり 七星奈星 @miyamotominesota

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ