嫁の脳内夢

ジュニ

第1夢

ある日の朝




「安珠!起きなさい」

慌ただしい1日の始まりだ。

いつまでも寝坊助の次女の安珠、朝から掃除機をかける長女の希愛来、口いっぱいにおにぎりをほおばる末っ子の恒英、洗濯物を干す私の妻、百英。

いつもは朝ゆっくり寝ている百英が今日は朝から家事をしていた。

私は寝ながらその様子が耳に入ってきた。

「お母さん、掃除機止まった」

不思議そうな顔をして言う長女

「あんたがいつもたまったゴミ捨てないでなんでもかんでも吸うからよ!」

そう言うとゴミ袋を持ち外に出ていった。


そろそろ起きようか、私は起き上がった。

さて今日は休みなのだがゆっくりしよう、そう思った時

「ジュニ起きたの」

私の呼び名だ。私は俊貴。

運送会社に勤めるドライバーだ。


妻が

「希愛来を駅まで送ってくれたりしない?」

こんなに天気もいいのになぜ?そう思ったが

「いいよ、じゃもう出るぞ」

さっさと済ませたかった私は長女をせかした。

私はそそくさ玄関に行き準備をしていた。

「いってきま~す」

リビングから聞こえる声

長女が小走りで来た。

車に乗り込みいざ出発!その時、後ろのドアが突然開いた。何事かと思い後ろを振り返る

「私も送って!」

さっき起きたばかりなのにこういう時だけ準備が早い次女だった。

「わかった、はよ乗れ」

こうして長女を駅に下ろし、次女を学校まで送りやっと家に帰ってこれた。

「ただいま」家にはもう長男の姿はなかった。

とっくに学校に行ったようだ

「おかえり~休みなのにごめんね」

「いいよ、ゆっくり寝れたし」

「え?そう?そしたら夜ご飯も作ってもらおうかなぁ」

 なんでそうなる(笑)

「わかった、なんか作っとくよ」

そう言って冷蔵庫と冷凍庫をあさる私。

「このひき肉使っていいの?」

「なんでも好きしてくださ~い」

化粧をしながら妻は答える。

あとでググってみよう。そう思いながら部屋に戻る私。

そこからたわいもない話をしながら

「そろそろ行く?」

今日は妻を送り迎えをするのだ。

車に乗り

「今日何時?」

「5時半!1分も待てないからね!」

遅れるなと念押しされる私

妻は待つのが大嫌いだ。それと歩くのも。

「わかったよ、ごはん作って待ってるから」

「ありがとう、行ってくるね」

そう言って妻を送り届けた。

家に帰りつき

「さぁ今日は何にしよう」

最大の問題夜ご飯のメニューだ。

「メンチカツでも作ってみるか」

料理は少々できるのでこった料理に挑戦してみる。

慣れない包丁で玉ねぎを切る。

ひき肉と玉ねぎをこね合わせてあとはあげるだけ、

「おっともう昼前」

慣れないことをすると時間がたつのが早い。

お昼は妻とランチに行く。

また車を走らせ妻の会社の下で待つ。

「くるうしゅうない」

そう言いながらニヤニヤしながら乗り込んでくる妻。

とてもユニークで一緒にいて楽しい人だ。

そこからすぐ近くの定食屋でランチをして妻はまた職場に戻った。

家に帰り私は作りかけのメンチカツを揚げに入った。

いったいいくつ揚げたのだろ、20個はありそう。

メンチカツを揚げ終え一息つく、

「ピンポーン」突然のインターホン

モニターを見ると息子だ。

「ガチャ」

「ただいま~!」

「おかえり、はやいね」

「今日短縮授業だった」

なるほど、どうりで早いわけだ

「今日夜ご飯なに?」

「今日はメンチカツ」

「よっしゃぁ」

さすが育ち盛りさっき給食食べただろうに食っても腹が減るみたいだ。


おっとそろそろ妻を迎えに行かなければ!

「お母さんを迎えに行ってくるね」

「僕も行く!」

二人で妻を迎えに出た。

妻の会社の下で待つ二人、妻が出てきた。

「たっだいま~」

「おかえり!」後ろからびっくりさせる長男のこえが車中に響いた。それに驚く妻

「あら~迎えにきてくれたの?」

「今日はやく学校終わったよ」

そうたわいもないいつもの会話をしながら家に帰り私は夜ご飯の準備にとりかかった。

「ピンポーン」

「ただいま」次女のお帰りだ

するとすぐさま

「ピンポーン」今度は長女のお帰りだ

夜ご飯の準備を進める私

「みんな持っていって」

みんなで夕食だ

「いただきまーす」

私の初めてのメンチカツは好評だ

私はさっさと食べ終わり明日の弁当の準備にとりかかる

妻、長女、私の分の弁当を作り終えた。

そして風呂を済ませ長男とのゲームの時間だ。

そして長男は就寝。

ここでもう一人家族がいる

うさぎのラブだ。

うさぎなのになぜかものすごくでかい。

長女と次女がふたりでうさぎの部屋を掃除している。

そして終わったのか二人はそそくさ階段を上り自分の部屋に戻った。

やっと妻とふたりの時間だ。

ふたりでたわいもない話をしながらドラマをみながら晩酌。

今日も1日が終わった。

これが私の家族。

こんな家族にこれからおこる出来事を書いていこうと思います。



「ピピピッピピピッピピピッ」

目覚ましだ。

固まった背中をほぐしながら起き上がる私。

まだ誰も起きていない。

そそくさと着替える

水筒の準備をしていると長男が寝ぼけながら降りてきた

そして寝ている妻に頭を撫でながら

「いってくるね」

「ヴん?いってらっしゃい」

寝ぼけながら答える妻。

いつもの光景だ。

車を走らせ会社へ

会社につくと伝票を見る、いちばん憂鬱な時だ

そしていまから荷物の積込だ

荷物を積み終えていざ出発。

配達先までは高速で約20分くらいの道のりだ

通勤ラッシュと重なり大渋滞。

そんなのも毎日のことでもうなれている。

なんだかんだで朝は倍の時間をかけて配達先に到着する。

1件2件とどんどん配達を済ませていく。

そしてお昼休憩。

愛妻弁当を食べひとときの休息

そしてまた仕事に戻る。

今日も仕事を済ませ家に帰る

「ただいま」

「ジュニ!」

妻が呼ぶ

そう言うと妻の手のひらには黒いキジトラ柄の子猫が元気よく鳴いていた。

「どうしたの?」と尋ねる私

「恒英が拾ってきた」と妻が答える

家の近くにいたらしい

実を言うと前にも同じ種類の猫を長男が拾ってきたことがある

その猫は拾ってきて数日したら突然亡くなっていた

そうゆうこともありまた帰ってきたような気がしてその猫を飼うことになった。

名前は(みぃ)と名付けミルクをあげトイレをさせ

昼は妻が家に戻り面倒を見ていた。


そして月日がたち

ボランティア団体が犬や猫の譲渡会をしてるのを知り見に行くことにした。

たくさんの猫たちがいた

みぃは俺の肩に乗り全く降りようともせず周りを見渡していた。

「いま飼ってる猫の相方を探しに来ました」

たくさんの子猫たちのなかで1匹だけずば抜けて美人猫がいた

この猫を迎えることにすぐ決まった

家に帰り柵なしで対面

最初は威嚇していたが子猫同士だからかいつの間にかケンカにも見えるようなじゃれあいで2匹は遊んでいた。

仲良くなったようでよかった。

そして名前は(ちぃ)となった。


こうして新たに家族が2匹増え生活が始まった。


今までペットなんか飼わないと言っていた妻が2匹にべた惚れだ。

毎日抱っこして連れてきて一緒に寝るのが恒例になった。

家族の愛情を一新に受け育った2匹。

そして猫にも反抗期があるのかわからないが妻が抱っこして連れてきても怒るようになりたまにしかこなくなった。

寂しくなってまた新しい家族を増やそうか迷いながらまた譲渡会に向かっていた。

譲渡会には相変わらずたくさんの子猫達がいた。

その中の妻が気に入った茶トラの子猫を譲ってもらうことになりまた新しい家族を迎えた。

オスだったので(こたろう)という名前になった。

この子は大変だった。

先住猫のみぃに威嚇されてばかり

ちぃは興味津々ですぐ仲良くなった印象がある。

だがある日みぃと一緒に寝ているこたろう君、安心した妻と私であった。

9人家族となった私達。これからまた日々が訪れる。


月日がたち仕事中の私。

この日はものすごく暑い日だった。

「飲み物が足りないジュースを買おう」そして自販機の前に止まった。


妻に突然の電話

「はい?」妻が不審がりながら出る

「県警の坂下です。松下百英さんのお電話で間違いないでしょうか?」

旦那になにかあったのかと焦る私。

「実は旦那様が事故に巻き込まれまして」

真っ白になった

「中村病院に搬送してますのでお待ちしております。」

返事をしたかどうかも覚えていない。

気づいたら車を走らせていた。

病院につくと一目散に走る

入口に警察の方が待っていた。

「松下さんですね、こちらです」

と小走りで病室に向かう二人

その光景は地獄だった

見たこともない器具がたくさんついていた

先生や看護師さんも慌ただしく動いている。

そしていてもたってもいられず旦那の手を強く強く握る

「ジュニ!なんで…起きなさいよ…」

いったいどのくらいの間、手を握っていただろうか

警察の方から説明があった。

飲み物を買い終えトラックに乗ろうとした瞬間よそ見をしていたトラックが旦那のトラックにあたりその弾みで旦那はトラックの下敷きになったそうだ。

怒りを通り越し悔しさと後悔しかなかった。

もっとたくさん飲み物を持たせればよかった

旦那は一命を取りとめたが目を開けることはなかった。

私は仕事を終え旦那のいる病院へと向かった。

「ジュニ、ただいま~、ケーキ買ってきたけど食べる?」

甘いものが大好きな旦那

だが何も答えてはくれない

「大好きなケーキだよ?はやく起きてよ…私の遊び相手がいないじゃない…」

「コンコン」

突然ノックの音がなった。

私は急いで涙を拭き

「どうぞ」

あの時トラックを運転していた男が母親と菓子折りを持って立っていた

「その節は本当に申し訳ございませんでした」男の母親が深々と頭を下げてきた

それにつられるかのように男も頭を下げる

まだ20前半くらいの男だった。

私は怒りを必死に抑え

「今後こんなに人を悲しませることをしないで下さい」必死に怒りをこらえて出した言葉だった。

その日から面会拒絶2度と顔も見たくなかった。

「そしたらジュニ、また明日、今度はみんな連れてくるからね、おやすみ」

そう言うと病室を後にした。


「お母さん?ジュニはどう?」

姉弟3人揃って次女が聞いてきた。

「大丈夫よ。薬でずっと寝てるだけ」子供たちには心配をかけたくなかった。

「明日みんなでお見舞いいきましょ」

「やった!パパとゲームする!」

長男の何気ない言葉に久しぶりに笑えた気がした。


「みんな準備できた?希愛来着替え持った?」

みんなでお見舞いだ。

病室を教えると一目散に走り出す長男

「パパ~!」

勢いよくドアを開けた。

「パパ寝てるの?」

「そうよ、まだ薬で寝てるの」

残念そうにする長男

心配そうに少し離れて見ている長女と次女。

花を入れ替え昨日のケーキのお皿と入れ替えケーキを枕元に置く妻

「じゃぁそろそろ帰るからまたね」

その瞬間扉が開いた

「奥さん」先生だった

「まだいらっしゃいました。お話があるのですがよろしいですか?」

「はい」そういうと子供たちを病室に残し先生の部屋へと歩いて行く。

「奥さんどうぞこちらに」

椅子に座るとレントゲン写真が貼られた。

「こちらは旦那様の頭の写真です。これが大脳、こっちが小脳……」

難しい説明が始まった

そこで唐突口を開いた

「結局のところ旦那はどうなるんですか!?」

「はい…いいですか…奥さん……脳の一部分にものすごく強い衝撃がかかっていまいました。そのため旦那様が目を覚ますことは極めて低いと思われます。」

心臓が止まったのか時間が止まったのかと思うほどなにも声も出ず固まっていた。そして1粒の涙がこぼれた。


その帰り道なにもしゃべれなかった、声も出なかった。

「お母さん、お母さん」

何回呼ばれていたのだろうか

「……ん?」

「大丈夫?なにかあった?」

「どうして?」

「さっきからおかしいから…」

息子は寝ていた。

遅かれ早かれ娘達には話そう決めていた。

「こうちゃんには絶対言ったらダメよ?ジュニもう目を覚まさないかもしれないみたい…」

驚きで声も出ない

「でもいつかは目を覚ますかも…しれな…いから…」

涙が溢れだした

こらえてたものがせんが外れたように溢れる

長女が重たい口をひらいた

「お母さん、私達も一緒に手伝いするからがんばろ…」

「…ありがとうね……」

こうして先の見えない未来へと歩いて行くこととなった。



「プルルル」 

私の電話がなった

「もしもし?」

次女からだった。

「お母さん、今日はやく帰ってきたから家のことしとくからそのままジュニの所行ってきて大丈夫だよ!」

「わかった、ありがとう。そしたらよろしくね」

電話を切るとその足で病院へと向かった。

病室のドアを開けると1匹の野良猫が迷い混んでいた。

「あら、かわいこちゃんどこからきたの?」

そう言ってその猫を抱き上げる。

人なれしているのかおびえる素振りは全くない

すると看護師さん2人が慌てて入ってきた

「ここにいた!すみません…」

そう言うとその猫を抱きかかえて

「最近病院の中に入ってくるんですよ」

「そうなんですね、じゃぁね」

その猫は看護師さん達が連れていってしまった。

「ジュニ…相変わらず猫にも好かれるのね」

それからたわいもない話をかけ

「また来るから、いい子にしててね」

そう言うと病室を後にした。


「ただいま」家についた。

「ママ!安珠が猫連れてきた!」

「え?」

その猫はまだ目も開いてるのかわからない産まれたばかりの子猫だった。

「お母さん少し大きくなるまで面倒見たらダメ?」

ものすごく悩んだ、これ以上飼える余裕もない、だけど赤ちゃんを外に放置するのも…

「そしたら少しの間だけね!」

「やったありがとう!」

子供たちが久しぶりに笑った気がした

子供たちの笑顔がみれたからこれはこれでよかったのだろう。

そしてまた家族が増え、生活が始まった。

そしていつものように病室に入る

「ジュニ、ただいま、今日はね、安珠が子猫を拾ってきて飼うことになったのよ。もう本当猫屋敷だわ」そう言って語りかける。

それからというもの病室に行くと猫の近況報告ばかりしていた。

「今日はあの子壁で爪とぎして壁はボロボロよ」

何気ない話だったが楽しかった。

「それとあの子オスなんだけど名前なににしようかしらね」

そう月日が流れ野良に返すこともできず飼うことになっていた。

名前はトラ。毛並みがトラみたいでトラと名ずけた。

トラは不思議な猫だった先住猫たちとは最初は仲が悪かったが受け入れられたようでケンカはなくなったのだが一切先住猫たちとは一緒にいなかった。

寝るときは毎日欠かさず私のベッドで待っていた。

ようやく私になつく猫が!と思い実は私が野良に返さなかった。

トラは私がごはんを作るとき洗濯をする時どこでも近くで見ていた。

なんてかわいい子なんだと。

時になにを盗み食いしたのか口になにかをひっつけているかわいこちゃんだった。




「ももえ…聞こえる?」ジュニの声だ

「ももえこんな大変な思いさせてごめんね」

「全然大丈夫、ずっと待ってるよ」

「ありがとうね、でも絶対無理しないでね」

そう言うとジュニの声が聞こえなくなった

慌てて目を開ける私の前には

トラがこっちを見つめていた。

私は思わず抱きしめた

「ジュニ……」

「ミャァァ」

「トラ…?……ジュニ?まさかね…」

夢を見たのだろうと…

でも久しぶりにジュニの声を聞けてものすごく嬉しかった。

「私も頑張らないと!」



そして半年が過ぎ1年が過ぎ旦那が寝てから2年がたとうとしていた。

長女は高校生次女は中学生長男は小学3年になっていた。

月日が流れるのがはやく猫達もすくすく大きくなっていく。

そしてある日のことだった。

病院から電話がきたのだ。

「松下さんですか?先ほど旦那様に条件反射が見られました、急いで病院にこられますか?」

指が少し動いたらしいのだ私は仕事を早退しすぐに病院へと向かった。

そして病室に入ると先生が手招きをして「手を強く握ってみて下さい」

そう言われ思いをこめて強く握った

その瞬間

手がピクッと

「ジュニ!ジュニ!」

必死に呼んだ。

「奥さんこれはいい兆候です。これからも頑張っていきましょう。」

そう言うと病室を出ていき

私はずっと何時間も手を握っていた。

「必ず起きてね、また明日来るから」

そう言うと家に戻った。

「ただいま」トラが玄関で待っていた。

頭を撫でるとリビングへ

「パーン、パーン」

「お母さんお誕生日おめでとう」

なにが起きたかわからなかったが今日は私の誕生日だった、すっかり忘れていた。

「ありがとう」

こんな中でも私を笑顔にしてくれる子供たち

涙がこぼれてきた。

「お母さん座って、写真撮ろう」

そう言うと子供たちは私の左手隣を不自然に間を空けて写真を撮った。

「くっつかないの?」思わず私は言葉をもらした。

すると長女と次女がスマホでなにかをしている。


「見て」長女がスマホを見せる

言葉にならなかった

そのスマホの画面には

ジュニが写っていた

不自然に空いていた私の隣にはジュニがいた。

「お母さんこれすごいでしょ」誇らしげに言う長女。

合成機能で作ったみたいだ。

「あんたたち……」

涙が止まらなかった

「ありがとう…最高のプレゼントだわ…」

その様子をずっと見ているトラ、思わず抱きしめた。

「私は幸せ者よ…」

すごく幸せな日を過ごすことができた。

子供達に感謝でいっぱい。


そして翌日まだ誰も起きていなかった。

掃除を始めようとした時机の下に1枚の紙が落ちていた。

そこには

アプリの使い方の紙が落ちていた。

そして長女が降りてきた。

「希愛来!この紙使わないの?」

「あっ!それ昨日の写真のアプリのやつ」

そう言うとその紙を取った。

その紙に書いていた字には見覚えがあった。

すると長男も降りてきた。

長男はその紙を見ると

「それ昨日トラが遊んでたやつだ」

猫が紙で遊ぶのは不思議ではなかったがなにか感じる所があった。

それよりも今日はみんなでお見舞いに行く日だはやく家事を済ませて行かなければ。

「みんな準備できた?もう出るよ!」

「みぃ!いってくるね、トラもいってくるね」

猫たちのお見送りを受けて病院へ。

そして病院へ向かっている途中

突然左からなにかが飛び出してきた!

思わず急ブレーキ!

「なに??」子供たちがびっくりしている。

その瞬間目の前で

「ガシャーン!!」足場が倒れてきた。

私は青ざめた…もしあのまま進んでいたら…

その瞬間飛び出してきた物体を探した

周りを見渡していると見覚えのある猫の後ろ姿だった

「トラ!」

「大丈夫ですか!?」工事現場の人が走ってきた。

どんどん人が集まってくる。人混みにまぎれトラらしき猫はいなくなってしまった。

そして警察がきて消防がきて事情聴取が始まった。

私達は無事だと伝え病院へと向かった。

息子が病室に走る。

「あっ!」息子が叫んだ。

私は急いで息子の元へ

病室から猫が飛び出してきた

そして出口の方へ走っていってしまった。

「ママ猫いたね、トラみたいだったね」

「そうね」

そういえば前にも猫がいたような…

そう思いながらも花を入れ替えた。

前にいた猫の色や柄はなにも思い出せなかったがふいに…もしかすると…

「ママ~!ドーナツ食べていい?」

「いいよ、パパにも置いておいて」

ドーナツを食べると娘2人は勉強を始めた。

私は旦那の腕や足のマッサージをしなが語りかけていた。

「そろそろ帰ろうか」

「パパまたね!」

そして帰り道、私は考えていた

あの猫って……


そしてまた何日か過ぎた。

相変わらずトラは私から離れようとせずずっと一緒にいてくれる。

「トラ、あなたはジュニなの?」

トラは私の顔を見上げる。でもまた目をつぶり寝てしまった。

「そうよね、バカね…」

なにか期待をしていた気持ちを抑え夕食の準備を始めた。

「プルルルル」

電話が鳴った。

「はい」病院からだった

「中村病院の山下です。松下さんですか?」

「はい…」

「至急病院にきてもらえませんでしょうか!」

とても焦った声だった。

嫌な予感がよぎった。

急いで病院へ走る

なにかあったのではないか、病院につくと急いで病室に入る

ガラッ!

扉を開けると先生と看護師が旦那を囲んでいる。

急いで旦那の元へ…

「奥さん、名前を呼んで上げて下さい。」

「ジュニ!ジュニ…ジュ……」

旦那の目から1粒の涙が流れた。

「ジュニッ!!」

そして重たいまぶたを開くようにゆっくりとまぶたが開いた。

そして旦那がなにかを言っている

「なに?」耳を傾けると

「も…も…え…」力ない言葉だったがはっきりと聞こえた。

「やっと呼んでくれた…」涙が止まらなかった…

そして先生が検査を始める。

「大丈夫でしょう、奇跡です。よく頑張りました。」

と言い私に深くお辞儀をして先生は病室を後にした。

そして徐々に元気になっていく旦那、「子供達連れてくるから待っててね」

そして急いで家に向かった。

子供達を乗せて病院へと急ぐ

そして病室に入ると

旦那は起き上がっていた。

「パパ~~!」

飛び付く息子

安心して泣き出す娘を抱き寄せながら旦那の元へ

「ごめんね、百英」

「ほんとよ!どんだけ心配かけるの!」と言いながらも旦那を抱きしめた。

そして先生に呼ばれ退院の時期も決まり病室に帰る時だった

あの時の猫が病室のドアの前で座っていた。

小走りになってその猫の方へと向かう、するとこっちに気づいた猫は逃げようと体制を変えた

「トラ!!」思わず出た名前だった

すると猫はこちらを振り向き

「ミャァァ」トラだった

「あなたは…」

そう言いかけるとトラはゆっくりと窓の外から出ていってしまった。

後を追いかけるもその姿はもうなかった。


その夜、

「お母さん!トラがいない!」

一瞬びっくりしたが

「いいのよ、帰ったのよ」

それ以上はなにも言わなかった。



そしていよいよ旦那の退院の時がきた。

「お迎えにあがりましたよ」

「ありがとう!」

ずいぶんと元気になった姿を見て安心する私。

そこに看護師さんがきた。

私はおもむろに

「あのー……あの…猫ってまだいます?」

「あの猫ならずっと見ないですね」

「そうですか…」ちょっと寂しげな声で答える。

「でもあのねこちゃん不思議ですよね」看護師さんが言った。

「あのねこちゃん旦那様が入院した日に旦那様のお腹の上に乗ってて、奥さん達が帰ったあとに必ずいましたよ」

よく考えてみた。

そういえばあの時のケーキ…

「看護師さん!ケーキとかドーナツって…」

「あー食べかけだったみたいなので処分してましたすいません…」

そしたらあれを食べていたのは!


「松下さん退院おめでとうございます!」

先生と看護師さん達がお見送りにきてくれた。

「大変お世話になりました」

深くお辞儀をしてその帰り道旦那が口を開いた

「なんかさ珍しく夢見ててさ……俺猫になっててエサ臭くて食えなくてそしたらケーキとかドーナツとか食えるようになってさ…」

「なにその夢…」

「それでさ百英が乗ってる車見つけてびっくりさせようとしたら大惨事になってさ、ヤバいと思って逃げてさ…」

そこで私の中で全てが繋がった。


「ありがとうジュニ…」

「えっ?なに?」

「なんでもないわ!」

そう言いながら私達は普通が幸せと思える日々に戻って行った。



「お母さん!朝だよ!」

慌てて起きる妻だった。

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