少女達の証言
錆びた十円玉
証言一:少女Lの臆病な傍観
何もすることも無く、ただただ暑い、夕日の綺麗な放課後のことだった。
「ねぇ、ねぇ。○○山に幽霊が出るって噂の村があるの知ってる?」
突然、少女Eにこんな事を言われた。勿論知っているわけでもないので「なにそれ、知らない」と言い返す。
「ま、知らなくても当然なんだけどね。○○山の何処かにその村があるらしくてさ、なんと言ってもその村では昔、事件があってその時、殺された人の霊が出るんだって!」
「そんなこと何で知っているの」と言えば、自慢げに話を始めた。
「ネットの都市伝説でやっていたのよ!だから、もうすぐ夏休みだし、行かない?肝試しってことで!」
何でだろうか幽霊とか、お化けとかは信じていないけど凄く興味がわいたから、「うん、行きたい」と返事した。すると、教室に残っていた少女Eの友達の男子三人が「俺達も行きたい」と言い出した。その中の一人が「少女Pを連れて行こう」と言い出した。少女Pは、少女Eをはじめとする人がいじめている女の子のことだ。お人好しで、かわいらしい女の子。運動はできないけど、勉強がとてもできる。しかし、どうやら少女Eたちは気に食わないらしく、ひ弱なためいじめられていた。
「だけど、アイツがいるじゃん。他校の奴だけど。あの女の事を庇う女、えぇっと、名前は忘れたけど、あの女、何かあったらすぐそいつにチクるじゃん」
「うざいよね」と少女Pの悪口を言っていく皆。ついには、「なら、その他校の女も一緒に連れてって、その村において行こうぜ」なんていい始める。止めなければいけないけど、言おう、言おうと思っても言ったらどうなるのか、少女Pのようになるのではないかと怖くて、口を南京錠が掛けられたように開かない。
私は、高校生になってから、誰にも打ち明けられていないことがある。私は小学生の頃、いじめられていたということだ。だから、分かる。いじめっ子の機嫌を損なわなければ、私はいじめられないで済む。ちょっとの我慢だもの。だけど、皆が悪口をいい続けるこの暑くて、何とも言えない空気から早く抜け出したかった。
「何をしているの?早く帰りなさい」
私を含む皆は生返事をして、帰りの支度を始めた。「α先生相変わらずキレー」と茶化す男子。この男子の言葉には共感を得られる。今年赴任してきた、ミステリアスな感じがして、とてもきれいな先生だ。だが、少女E曰く
「あの先生、絶対何かあるよ!六年前に起こった紅蘭女学院虐殺事件の時にそこで教師をしていたらしいよ。あの事件、未解決だし、謎が多いらしいから、何か知ってたりして」
周りはふざけて笑いあっているが、凄惨な事件だったということは当時のニュースからよくわかった。
「紅蘭女学院虐殺事件・・・六年前、紅蘭女学院で教師、生徒のほとんどが虐殺された事件。紅蘭女学院は、少し小高い丘にあり、事件当時は連絡手段も絶たれていたため、発見が遅れたらしい。生き残ったのは、一部の少数クラスの生徒と担当の先生だけ。校舎の中は、無残な状態で、体育館には火が点けられ、そこでも多数の生徒が亡くなったらしい。少数の犯行で多くの人を虐殺したのにも関わらず、証拠が残っておらず、未解決のままである。噂では事件を担当した警察官が退職するほどだったとか・・・」
「怖ぇ!」なんて言いながら茶化しているが、茶化していい事件じゃないような気がする。こんなに怖い事件なのによく笑い話に出来るものだ。私も当時、そのニュースを見ていたが、大体的に取り上げられていたような気がする。警察官がやめてしまうほどの事件・・・嫌な事件を思い出しちゃったなぁ。・・・周りを見れば、さっきとは別の話だったが、話に入ることができなかった。少しくらい浮いていたって、私の平穏のためにはしょうがない。でも、私もいじめっ子の仲間ってことだよね。いじめられるのは嫌だけど、辛いことだって知っているけど・・・そう、私は傍観者でそれ以上でも、それ以下でもない存在。私は、私は・・・
何とも言えない気持ちで家に帰り、日課である日記を書いた。勉強をしようとしてもなぜか焦燥感と言葉にできないほどの不安に襲われてしまい、集中する事ができなかった。何だかモヤモヤするし、気分が悪くて、早めにベッドに入った。
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