第20話 黒洞



悲しみが体から溶けて消えていけば良いのに


でも、その悲しみと一緒に


流れていってしまう何かがあって


それを抱えながら生きなくては


僕は僕じゃなくなる




この手から手放したいものがあって


それを持ち続けているから苦しいのに


どうしても手放せない


それは僕を形成する一部で


失えば僕は僕でなくなる



でも僕は僕でなくなる事を


何より望んでいて


悲しみも苦しみも全部取り除いて欲しくて


今日も手を伸ばしていた



何も聞こえない空と


うるさすぎる世界が


ごちゃ混ぜになって


頭の中で火花を散らしてる



爛然とした光の中に黒洞が浮かんで


伸ばしたその手が吸い込まれていけば


僕は救われるのにと


必要のない覚悟をしてみた





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