第18話

「……あれ?なんで君がここに……あ、いや、なんでもない。そっか、勇者因子の正常にーーーーいや、どちらかと言うと正常ではないけどちゃんと機能してくれてよかった」


 ……誰?


「初めてやったけどちゃんと成功してくれて良かった。これで魔王を倒す第1歩目だね。後で褒めてくれてもいいんだよ?」


 褒める?いや、そもそもアンタ誰?てか俺の目なんで開かないの?


「彼女にもよろしくね。わざわざ引っ張ってきちゃったんだから。そのために君の勇者因子だけ特別製にして惚れやすくさせてるんだから……大事にしなよ?なんなら二人まとめて囲ってもいいからさ」


 囲む?彼女?一体マジで何の話をしているんだ?


「まぁなんならボクでもいいんだけどーーーー時間か。それじゃあ頑張ってね、ボクの愛しの勇者様」


 え?おいちょっと待て!お前ほんとに誰だよ!!


「んっ………」


 さらさら、と頭を撫でられる感触に気がついて起きたのを感じた。なんかさっきまで変な夢…夢?夢なのかあれ………まぁなんか変なものを見ていた気がするが、全くもって思い出せん。


 パチリ、と目を開ける。まず、目を開けて視界に入ってきたのはエリーの豊満なお胸さん。そして、そしてこちらを愛おしげに見つめるエリーの顔がーーーーー


「……………ぁ」


 とくん、と優しく心臓が跳ねる音が聞こえた。そうだな……確かキス……したんだっけ。


「お目覚めですか?智様」


「……あぁ、うん。おはよう、エリー」


「はい、貴方の愛しのエリーですよ」


 ニコリと笑う姿にまたとくん、と心臓が跳ねた。そして、膝枕されていることに気づくと、さらに顔が熱くなった。


「………愛しのエリーって」


 照れを隠すようにプイッ、と顔を横に背ける。……でもなぁ……なんかあながち間違いにも思えないんだよなぁ。


 エリーのことを考えると胸がドキドキするし、体も熱くなる。とりあえず膝枕はまだ堪能しておこう。


「シトラスは?」


「シトラス様なら智様の上で寝てますよ?」


「うえ?」


「うみゅ……ご主人……のじゃ……」


 エリーに言われて顔を下へ向けると、そこには俺の胸の上ですやすやと眠っているシトラスが。


 ……まじ?全然気づかなかったんだけど…ってかシトラスってこんな軽かったっけ?全然重さを感じないんだけど。


「智様」


 エリーに呼ばれたのでチラッと顔を戻すとーーーー


「智様……」


「っ!!」


 目と鼻の先には、うるうると瞳を潤しているエリーの顔があり、その顔を見ると、どうしようとなく俺の心臓は跳ねてしまう。


「私は……智様の事はお慕いしております……でも…智様は、私のことをどう思っておりますか?」


「お……れ…は」


 考える……いや、本当は考えなくても分かりきってはいるんだ。俺は、一昨日会ったばかりのエリーに完全に惹かれてしまっている。


 エリーはとても可愛くて、綺麗で、優しくて。まだ外面的な所しか見れてはいないけど、内面的な事は勇者因子を通して俺に伝わってくる。



「……俺も、エリーの事はとても好ましい……ううん、好き……だと思う」


「!智様……」


「でも……」


 俺は、ちらりと下にいるシトラスのことを見る。


 こんなどうしようもない俺は、どうやらシトラスの事まで好きになってしまっている見たいだ。


「………ごめんな、仕えている主がこんな屑野郎で。俺はエリーだけじゃなくてシトラスの事もーーーーー」


「それなら安心して下さい」


「好きにーーーーーえ?」


 頭を撫でていた手がスっ、と俺の口を覆い、喋らないでくださいと言われているように口を塞がれた。


「この世界では一夫多妻制、又は多夫一妻制が推奨ーーー特に、王族や貴族、高名な冒険者様にはこの制度が義務化されております」


「………?」


 それの何が大丈夫なのだろうか。


「智様達勇者様方にも、もちろんそれが適応されますーーーーつまり智様達は複数のお嫁さんやお婿さんと結婚することができるのです」


「………っ!!」


 は!?まじ!?


「はい。マジです。なのでーーーー智様、これからは私たち2人揃って可愛がってくださいね」


「のじゃ………ご主人……好き、なのじゃ……」


「…………………………」


 口に手を当てられたまま、ポカーンとしてしまう。クスっ、と笑ったエリーは当てていた手をどかすと、優しく俺の口にキスを落とした。





 一方、その頃男の娘潤は………。


「……智の部屋……どこだっけ?」


 キョロキョロ、ともうすぐ訓練が始まるので智と一緒に行こうと王宮内を歩く潤。


「………うふふ、潤様ぁ♡」


「…………っっっっ!!!」


 背後より現れたのはあの時、エリーによって懺悔室へと連れていかれたメイド(変態)だった。


「やっと……やっと見つけましたよ潤様ぁ♡さ、早く私と愛の巣へーーー」


「ひいいぃ!!智ーーー!!!」


「あ、お待ちになってください、潤様ぁ♡」


 全力で魔の手から逃げている潤はだった。


「も、もう!異世界なんて嫌だぁぁぁぁぁ!!!」


 その後、たまたま通りがかった五条亘の勇者メイドによって救出されるのであった。

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