第175話 やきう民
うちのクラスは割と順調に勝ち進む。流石に運動能力やアホさに全振りしてる民が多いだけあって順調だが、いつも問題ばかり起こすクラスでもあるので勝ち進む度に先生方は複雑な表情をしていた。俺は関係ないので。
「ふ……また勝っちまったぜ」
野球もどうやら勝ってきたらしい。川藤がムカつくポーズでドヤってた。
「勝ったら試合する数増えて、目的果たせなくなるんじゃないの?」
「そうだった!よし、次こそ負けよう」
それでいいのか。煩悩に負けてるぞ。
「暁斗も二年相手に勝ったんだろ?相変わらずやるなー」
「そっちは三年だっけ?」
「おう!まあ、言うて出涸らしチームだから雑魚だったが」
たまにある雑に切り捨てられた生徒たちのあれを出涸らしと呼ぶんじゃないよ。まあ、でも素人相手なら負けないか。
「んじゃ。俺は琥珀の元に」
「いやいやいや。ここは俺の次の試合見てけって。ていうか本気で投げたいから受けてくれよー」
「やだよ。川藤の球痛いし」
野球部だけあって、昔からボールは速かったけど更に速くなってそうなのでキャッチャーはしたくない。そう、こんなんでもこいつ投手なんだよ。ピッチャーね。
「クラスだとお前くらいしか俺の本気のボール受けられないから頼むよー」
「嫌だってば。ていうか曽根くんじゃダメなの?」
同じ野球部のメンバーを生贄にする。
「あー、ダメダメ。曽根は彼女持ちだからダメ」
そんな理由で拒否するなよ。
「俺もそうだっての」
「死ねリア充!でも本気で投げたいからキャッチャーやってくれ!」
「断る」
つうか、最近変化球練習してるとか聞いたし絶対無理に使おうとしてくるからむしろ俺が入ると普通に負けそう。それに俺は琥珀との時間を過ごしたいのでキャッチャーは無理無理。
「一球だけ!練習でだけ頼むって!」
「報酬は?」
「……焼肉弁当でどうでしょうか?」
「ふむ。デザートにプリンが付くなら検討しよう」
「鬼畜生め!」
そう言いつつも承諾してしまったので一球だけ川藤の本気のボールを受けることに。キャッチャーミットなんて久しぶりだな。そう思いながらキャッチボールを少ししてから低く構える。
「いくぜ」
そう言うと相変わらずのフォームから繰り出される豪速球。バシン!と響くほどの音がミットから響く。また速くなってやがるよ。手が痛い。
「加減しろよ」
「暁斗なら余裕だろ?もう1回やろうぜ!」
「報酬が増えてくけどそれでいいなら」
「どうかゼリーの上乗せでもう一球」
そう言ってもう一球だけ受ける。痛いってのたく。でもこれなら余程ヘボしなければクラスマッチで負けないだろう。そう思ってたら次の試合で変化球を狙いまくって打たれまくってあっさりと2組のチームに負けたらしい。俺が受けた意味よ。そんな事よりも琥珀とイチャイチャしたかったからどうでもいいけど。
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