第87話 ジェットコースター

ガタンガタン……徐々に高度を上げていくジェットコースター。順番待ちをした後で、琥珀の隣をゲットしたはいいけど、琥珀はこの時点でかなり不安そうな顔をしていた。


まあ、ジェットコースターって、この最初のゆっくりした時間がある意味怖かったりするよね。徐々に高くなる感覚とその後に訪れるであろう落下の速度とかのキャップがまたなんともゾクッとするものだ。


俺も琥珀も高所恐怖症ではないが、誰だって高いところから落ちる感覚はなかなか恐怖するものだろう。それを楽しめる人がこういうアトラクションを気にいる人なのだろう。


「あっくん、高いね……」

「大丈夫だよ。ほら」


優しく琥珀と手を繋ぐ。すると、少し安心したような表情を浮かべる琥珀。気休めでもこういうのは必要だろう。そうして、遂にジェットコースターは最高到達点に達して……一気に落下し始めた。


右に、左に、大きく旋回、楽しげな悲鳴をあげる両親や他の人達だが、俺はといえば、琥珀の反応を見ていた。


「ふにぁ!」


「はぅぅぅ〜!」


目まぐるしく表情を変える琥珀は必死に俺と手を繋ぎながら、可愛らしい悲鳴をあげていた。不謹慎にも俺は内心悶えていた。いやぁ、なんか一々行動が可愛いから見てて凄く癒される。


ジェットコースターを楽しむよりも、そのジェットコースターでこうして可愛い反応をする琥珀を見てるのが何より楽しかった。何度か目を瞑って、でも浮遊感で怖くなって俺の方を見て少し安心して、またジェットコースターの速度で可愛い反応をする。


そんな繰り返しだった。なるほど、琥珀がいるだけでジェットコースターもこんなに楽しいものになるのか。やはり琥珀は偉大だな。


前の時に乗った時は、そこまで面白くは感じなかった。友人が楽しんでいても、何がいいのか分からずにとりあえず乗っていたが……本当に好きな人だからこそ、楽しいのかもしれない。


こういう楽しみ方をする人も多分一定数はいると思うんだ。主に少しSっ気が強い人とか。いや、俺はSじゃないと思うよ?琥珀に痛いこととかしたくないし。ただ、こうして可愛い反応をする琥珀を永遠に見ていたい気持ちもなくはない。


まあ、本当に嫌がるなら俺は琥珀にこんなことを強制したりはしないさ。何事も経験。俺が側にいるうちならやりたい事はやらせてあげたいし、それを見守るのも彼氏の役目だ。


とりあえず、ジェットコースター終わったらフラフラになるであろう琥珀を後で癒してあげないとね。彼氏の特権だし。

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